ルネサス懇、人的施策を語り合う。

− 半導体産業の過去と未来 −

【半導体産業の過去と未来】

A) 先日、週刊ダイヤモンドの記事の中で、「50年後もその先も存続できる会社の”礎石”を築きたい」
 と赤尾社長が述べておられました。50年というところが良いですね。なぜなら、日本の電機産業が半
 導体を事業として手がけてから現在までが約50年です。今をひとつの節目と考え、これから更に半世
 紀と捉えておられるのでしょう。

C) 50年後と言いますと、現在会社に勤めている人はみんな居ませんね。私達の持っている技術や知
 識やノウハウや、製品や顧客やブランドや、資産や設備や不動産など、すべての財産を次の世代に引
 き継いで行ける事が前提になります。いい話ですよね。

D) 50年後の世界を見据えるには、少なくとも50年の歴史を遡って、如何にして現在の姿が構築されて
 きたのかについて、おさらいした方が良いと思います。敗戦直後の日本は、航空機を持つことを許されま
 せんでした。強力な軍事力に発展する可能性があったからです。しかし船舶を持つことは許されました。
 その後、日本の造船業は飛躍的な成長を遂げて、世界第一位の造船大国になりましたが、航空機産業
 は伸びませんでした。
  半導体は、AT&Tベル研究所でトランジスタの動作が発見されたのが1940年代の後半だったと思い
 ます。つまり戦後のテクノロジーなんですよね。おかげで戦後処理で取り上げられるようなことが無かっ
 たのでしょう。だけど80年代に坂村さんが提唱したTRONは、パソコンのレベルでは普及しませんでした
 ね。これにはアメリカの圧力があったと聞きます。いま、半導体におけるスタンダードは、先端プロセスに
 しろ、MPUにしろ、依然としてアメリカが持っていますよね。果たして日本が、本当に基本的な領域でス
 タンダードを握れる可能性があったのかどうか、真の意味で一番になれるシナリオが有り得たのかどうか
 なんて事を、最近疑問に思ったりします。結局、80年代の日本の繁栄も、現在の韓国や台湾の台頭も、
 黎明期から成長期にある資本主義の強さと、後発であるが故のしがらみの無さと、半導体産業が装置産
 業であると言う特質とが合わさってもたらされたと言う面では、同じではないかと思うのです。
  いずれにしても、この50年の歴史について、多くの専門家に語ってもらいたいですね。製本して従業員
 に配ったらどうでしょう。執筆者は中島元社長でも良いと思うし、世界の第一線でつい最近まで活躍され
 ていた方、例えば実装技術の春日さんとか、故障解析の二川さんとか、他にも大勢いらっしゃるのではな
 いかと思います。

B) 日本の半導体がこれまで歩んできた道をおさらいしながら、これからの半世紀を見据えると言うことで
 すね。私もそんな本があれば読んでみたいと思います。
  私たちの半導体産業の可能性を感じながら、一方で環境や労働や人権に与える負の影響の現実から
 も目をそらさず、プラスとマイナスの両面から未来を考えて行きたいと思います。