ルネサス懇、人的施策を語り合う。

− 造る人、食べる人 −

【造る人、食べる人】

A) むかしのラーメンのコマーシャルで、「私作る人、僕食べる人」というキャッチフレーズがありました。
 このCMは、男女差別的だと批難を浴びて打ち切りになったらしいです。この「私作る人、僕食べる人」
 という言葉は、なかなかに差別の本質をよく表していると思います。差別の表現形の一形態は、まさに
 「作る人、造る人」と「食べる人、消費する人」の分離だと私は考えています。例をあげると、熱帯の国の
 プランテーションで働く農民は、あまりにも賃金が安くて、自分の作った高価な換金作物は買えないとい
 った事があります。

C) トヨタ自動車などは、レクサスを造っている工場労働者に表示を付けさせていると聞きました。世界一
 の車であるレクサスを造っているのだとの自負や誇りや責任感を持たせるためとか。だけど、そういう労
 働者は、みんなレクサスを買えるだけの賃金を貰っているのでしょうか。貰ってなければ、これもまた「
 造る人」と「食べる人」の分離ですね。

B) その話は他人事では無いですね。若い人の中には長時間残業者が大勢います。独身者で、もしかし
 たらこの人は、会社とコンビニと寮を巡るだけの生活になっちゃってるんじゃないのかと疑いたくなる人も
 居ます。私は家族がいますけど、共働きだから、やっぱり時間に余裕がないですね。だから、テレビもあ
 まり観ていないですし、車も近所のスーパーに週1回の買出しに行くのに使うくらい。カメラで撮るのは子
 供の写真ばかりという具合です。ゲームは基本的に好きですけど、1本のソフトをクリアするのに5年くら
 いかかるので、最近は新しいソフトを買いませんね。

D) つまりルネサスの主力製品である自動車用途やテレビや、カメラやゲーム機向けの半導体は、あなた
 のライフスタイルでは殆ど役に立っていないという事ですね。

B) 私の場合、プランテーションの農民と違うのは、お金が無いのではなくて時間が無いから使えない点
 ですが。

A) お金が無いのも時間が無いのも、根っこにあるものは同じですよ。労働者を出来るだけ安い賃金で出
 来るだけ長時間働かせたいと考えるのが資本側の欲求ですからね。その結果、あなたも「食べずに造る
 人」の仲間入りをしていると言う訳です。

B) 私達の企業理念には、私達の造った半導体の組み込まれた製品が使われることで、世界中の人が豊
 かで幸福な生活を送れるようにとの願いが込められているのだと思います。もし私たち社員が、ルネサス
 製品を組み込んだ製品を買ったり、使ったりする機会から遠ざけられるような事になれば、極論すると私
 達自身は、企業理念で言うところの「世界中の人」には入っていないことになりそうです。寂しいですね。

D) 工場で働いている派遣労働者が聞いたら、何を今さらと思うかも知れませんよ。

B) ええ、それは分かっています。結局のところ、私達の半導体製品は、環境面で多大な負荷をかけてい
 るだけではなくて、労働者にもいろいろな負担をかけて造られているのですよね。だからまとめると、そう
 やって世の中に負担をかけて造った半導体である以上、その「負の影響」以上に、世の中の役に立たな
 くてはいけないし、そのためにはちゃんと使われないといけないし、使うためには、購入できるだけの収入
 と、使用できる時間が必要なのだと。こんなところでしょうか。