ルネサス懇、人的施策を語り合う。

− 会社の存在意義とは −

【会社の存在意義とは】

A) 企業が高い生産性を維持するためには、ダイナミズムが必要です。しかし巨大企業のダイナミズムは
 時に、ちっぽけな人間のつましい生活もささやかな幸福も、枯葉の様に吹き飛ばしますね。それは果たし
 て仕方のない事なのでしょうか。それとも企業のダイナミズムに着いて来れない人間の方が悪いのでしょ
 うか。
  こういうときには、企業の存在意義について、原点に立ち返って思い出してみることでしょう。私が常々
 言っていることですが、企業と言うのは、松下幸之助の言葉を借りるまでもなく社会の公器です。そして
 その最大の存在意義は、本業にこそあるのです。ルネサスで言えば、何よりも社会に必要とされる良質
 な半導体製品を安価に提供する事にあります。企業の存在目的が金儲けだなんて、ドラッカーだって言っ
 ていませんからね。

D) 利益を上げるのは、本業を継続させるのに必要だからですね。業績の良い時もあれば悪い時もあるか
 ら、そうした変動を吸収するだけの内部留保は必要でしょう。だけど、すっかり成長を終えて、安定期から
 衰退期に移行している企業であれば、損益ゼロ、つまり1銭の得もなければ損もない状態で、ずっと継続
 して行けることが理想的なのだと言えるでしょうか。

B) 会社と言う存在は、資本主義国だけに存在するのではなくって、社会主義国にもありますよね。結局、
 会社と言うのは、ひとりの人間では出来ないような大きな仕事や高度で複雑な仕事を、集団で役割を分
 担しながら成し遂げるために必要なコミュニティーだって事に気付きました。つまり資本主義とか社会主義
 とかの社会体制に拠らない、人間の生産活動における本源的な存在なのですよね。単に利益を生み出
 すのが目的の機関じゃなくて。

C) ルネサスエレクトロニクス社の企業理念も立派だと思いますよ。「ルネサス エレクトロニクスは、夢のあ
 る未来をつくる企業を目指し、叡智を結集した新技術により、地球と共生して人々が豊かに暮らせる社会
 の実現に貢献します。」です。つまり良質な半導体を世に送り出して、夢のある未来をつくります。人々が
 豊かに暮らせる社会の実現に貢献します。いい理念じゃないですか。

B) だけど物には両面がありますよね。企業理念の中に、「地球と共生」すると言う言葉がありますよね。
 半導体の場合、製造段階でも使用段階でも、電力は使うし、薬品や水も大量に使うから、ものすごく環境
 負荷が大きいと言われます。部品のリサイクル率も高いとは思えません。だから地球と共生と言いながら、
 実は地球環境に多大な変化を引き起こしている違いないし、地球環境を変化させることで、人類に迷惑を
 かけながら企業活動を存続しているに違いないと思うのです。
  だから大事なことが多分2つあって、そのひとつは、そうやって負の影響を与えている以上、私たちの造
 った半導体製品は、かけている迷惑以上に世の中の役に立たないといけないという事です。そしてもうひ
 とつは、上がった利益は世の中に還元されて行かなくてはならないと言う事です。

D) なるほど。私は3年前に一眼レフのカメラを買いましたけど、実はほとんど使わないまま、本棚の隅に置
 かれています。半年くらい触っていないから、電池が切れているかも知れません。昨年買ったハイビジョン
 ビデオカメラも、やっぱりあまり使っていません。それらの中には、ひょっとしたらルネサスの半導体も入っ
 ているかも知れないけど、役に立てられて無いという事ですね。今さらだけど、我ながら罪深いなあ。

A) じゃあ、帰宅したらカメラのホコリをふいて、是非使ってあげてください。

D) ははは、そうしますよ。それと、使わないものは買ってはいけないということですね。例えばですが、「
 これこれの環境負荷をかけるものは、これ以下の値段で売ってはいけない」とか、そういう法律を作って
 規制できないものでしょうかね。無理かなあ。だけど、単にたくさん造って単にたくさん売れれば良いって
 ものではないですよね。無駄に造らないような、無駄に売らないような仕組みって、どうやったら作れるの
 でしょうか。