ルネサス懇、人的施策を語り合う。

− ルネサス発展の形 −

【ルネサス発展の形】

B) ルネサスの経営陣が成長戦略を描く背景には、現在の人員が企業規模に比べて多いという感覚が
 あって、そのミスマッチの解決のためには企業規模に合わせて人数を減らすよりも、人数に合った企業
 規模へと拡大するのだと言う思いもあるのではないでしょうか。雇用を守るためにも、企業規模を大きくし
 ないといけないのだと。

A) さあ、どうでしょうか。経営陣が本当にそう思っているのかどうかは、想像するしかありませんね。では
 聞きますが、もし4万8千人もの雇用が守られるとしたら、それはどんな形でしょうか。

C) 4万8千人の大半は国内雇用です。産業の空洞化を抑えないと国内雇用は守れません。そうおっしゃ
 りたいのでしょう。だから最初の話に戻ってしまいますけど、今ルネサスは、国内雇用を減らす代わりに、
 海外の雇用を増やそうとしていますね。これがルネサスの成長発展の形だとしたら、ルネサスが目標どお
 り成長しても、国内の雇用は大量に失われます。

D) 海外売上比率を60%にするのが当面の目標です。将来的にはもっと増やしたいでしょう。世界市場で
 戦っていくのだから、当然のことです。そして、世界で売るからこそ、世界中で雇用するのも、有る意味当
 然です。海外売上比率が60%なら、日本人は社員の4割になるのが自然ではないでしょうか。造った半
 導体を消費する国の雇用を出来るだけ増やすことは、国際的なモラルに合致するのではないかと私は思
 います。

B) つまり国内の雇用を減らして海外の雇用を増やすのは正しいと。正しいことをした結果、国内の雇用は
 減っていくということでしょうか。何だかやり切れませんね。

C) 例えば、海外への生産移転によって国内工場が閉鎖になれば、数百人から千人規模の雇用が失わ
 れるし、地域の経済に与える影響も甚大ですね。だから、私達はこれまで、産業の空洞化をどうやったら
 止められるのかと、ずっと悩み続けて来ました。
  ですが、私は最近、そんなに出て行きたければ、どうぞ勝手に出て行けばいいのではないかとも思うよ
 うになりました。日本の財政赤字が莫大な金額ですよね。地方自治体の赤字分も合わせると、1千兆円を
 超えていて、赤ん坊から高齢者まで、全国民一人当たりざっと1千万円の借金ですよ。私の家庭は妻と子
 供2人で4人家族だから、ざっと4000万円の負担ですよ。こんなにものすごい赤字を抱えて、まだ法人税
 を減税しろと言っていますよね。

D) その気持ちは分かりますね。この20年で失業率が随分上がったし、消費税率が上がって、更に上げよ
 うという動きがあります。若者はずっと就職難で、今年に至っては「超氷河期」とか言われています。にもか
 かわらず、法人税率はずっと下がり続けているし、更に下げようと議論がされています。まあ、ルネサスは
 儲かってないから、法人税もあまり沢山は払っていないでしょうけど。もし私がワーキングプアだったら、こ
 れ以上日本が暮らしにくくなる前に、早く出て行けと思うかも知れませんね。

B) 素朴な疑問ですが、どうして国によって法人税率が異なるのでしょうか。さっきの生産要素価格均等化
 の話と絡めれば、もしかして法人税率も均等化して行くのでしょうか。

C) さあ、どうでしょうか。可能性としては、あり得なくは無いと言ったところでしょうか。いま、これだけ企業
 の活動がグローバルに展開していながら、その企業のあり方を規制する独占禁止法などの法律や税制の
 国際的基準に関する整備が、不十分ではないのかと言う気がしています。法人税については、どこの国
 だって、自国に企業を誘致することで、国民の雇用の機会と、国家の税収の源を得たいと思うのではない
 でしょうか。だから、その意味で、法人税には切り下げ競争が生まれる余地があると思います。
  もし仮に、ある産業が世界中どこの国で生産しても、原材料の入手、労働力の質、生産設備の導入、流
 通などの生産に関わる要素に関して、およそ地の利と言える面が無いのであれば、最後は法人税の出来
 るだけ安いところに立地と言う発想になるかも知れませんね。考えれば考えるほど嫌な話ですけど。