ルネサス懇、人件費削減施策を語り合う。

− 非正規雇用者はどうなるか −

【非正規雇用者はどうなるか】

A) 低所得者のカット率を抑えるべきだとの意見で一致しましたね。こうした考え方の背景にあるのは、
 より弱い立場にある人への配慮が重用だとの価値観だと思います。そこで、その価値観の延長線上
 で、もう一度見て頂きたいのは、費用削減の内訳です。私たちの賃金一時金カットを行う以前から、現
 在すでに行われている費用削減の中には、アウトソースや期間労働者の削減が計上されていますね。
 今さらお話するまでもなく、これらの労働者は、契約が打ち切られることで、雇用の継続さえも危うくな
 ると想像できます。このような削減を認めていい物でしょうか。

C) 企業別労組、上部団体としての電機連合、そして連合も含めて、”正社員のための労働組合”との
 批判が、かねてからありますね。正社員の雇用や労働条件は、労働組合によって、そこそこ守られて
 来ました。その一方で、ここ20年の間に非正規雇用が一気に増えて、全雇用者の1/3を超える様に
 なりました。彼等は一般に、正社員に比べると圧倒的に低賃金で、雇用の保証もなく、将来に不安を
 抱えた状態で働き続けています。今回、正社員の賃金カットよりも先に、彼等の雇用契約が打ち切ら
 れてしまうのも、その一例ですね。

A) 今の労働組合の機関決定の仕組みが、どこまで真に民主主義に則ったものかは、疑問の余地が
 あると思います。問題はそれだけではなくて、そもそも「俺達だけの民主主義」が、本当に民主主義の
 名に値するのだろうかと思うのです。
  アウトソースや期間労働者は、ルネサスの労働組合員ではありません。それにも関わらず、彼らの
 雇用の断絶に関わる重要な決定に対し、ルネサスの労働組合が、「組合員の賃金カットより先に契約
 を打ち切れ」と言って、会社に干渉してしまって良いのでしょうか。私は、そこまで言う権利は無いと考
 えています。
  これは労働組合に限らず、国家でも、民族でも、地域でも、規模の大小に関わらず言えることで、他
 の集団に属する人々に重大な影響を及ぼす事柄を、それらの人々の居ないところで、力のある者達が
 決めてしまうことは、それが如何に内部的には民主的な手続きに則っていようとも、真の意味での民
 主主義ではないと思うのです。

D) 少なくとも、誰かの雇用打ち切りよりも、自分達の賃金カット率が下がる方が重要だという発想は、
 労働組合的ではないですね。

B) しかし、労働組合は、自分達の組合員の権利を守るのが第一ですよね。であれば、アウトソースや
 期間労働者が、ルネサスの組合員でない事が問題だとも言えませんか。本来、企業別労組を名乗る
 のなら、同じ会社で働く労働者は、全員組織化できていないとおかしいですよ。

D) ところが今は、非正規も、アウトソースも、部下無し管理職も、みんな非組合員です。ひょっとしたら、
 組合員の割合は、この会社で働く全労働者の半数を切っているかも知れません。ユニオンショップ制が
 機能していないとも言えますね。ユニオンショップなど、やめるべきではないかとの意見もあります。

C) その意見には賛成できません。管理職の話が出ましたが、本来は管理職でも、労働組合に入れる
 んです。世の中には、「管理職ユニオン」とか、企業別労組とは違う1人で加盟できる労組がいろいろ
 とありますよね。でも加盟している人は、ほんのごく僅かです。もし今ユニオンショップ制をやめてしまっ
 たら、いよいよ労組に加盟する労働者の数が激減すると思いますよ。 「我々の労働条件は、会社の
 業績が上がれば向上するし、下がれば悪くなっても仕方が無い」というようなイデオロギーが、すでに
 相当浸透していると見ています。今どき、ルネサスの正社員の若者が労働組合に入り続けているのは、
 ユニオンショップで自動的に加盟させられているのと、脱退すれば解雇されると思い込んでいるのが理
 由でしょう。デフォルトで組合員でなくなってしまったら、会社から睨まれるかもしれないのに、わざわざ
 高い組合費を納めてまで労働組合に加盟しようなんて思わないのが自然でしょう。
  だから私は、”正社員のための労働組合”とのそしりを、どんなに受けようとも、たとえボロボロになっ
 ても、ユニオンショップ制は堅持すべきだと思うのです。さもないと、労働組合が本当に死んでしまうと
 思います。

A) だからこそ、ルネサスや電機各社で働く非正規従業員を守る労組が必要ですね。私たちのもう一つ
 の労働組合である「電機ユニオン」は、今年「電機情報ユニオン」と改称し、産別労働組合として新たな
 スタートを切ります。いまの企業別労組では救いきれない非正規の問題を解決しながら、正社員にとっ
 ても働きやすい労働環境の実現を目指して、活動して行きます。