ルネサス懇、人件費削減施策を語り合う。

− 人件費カットの影響は −

【人件費カットの影響は】

A) 賃金カットの影響は、家庭によって様々でしょう。いま、電機の40代後半以降の労働者の家庭で
 は、実に約2/3が貯金を取り崩しているとのデータがあります。住宅ローンや教育費の負担が特に
 大きいと言われていますね。このような貯金を取り崩している家庭では、賃金カットが可処分所得の
 減少となって、確実に生活に影響してくるでしょうね。

D) 私の知り合いも、子どもが大学生で、学費の捻出に苦労していると話していました。私立大学の工
 学部だと、初年度入学金が150万円くらいで、年間の学費は100万円が普通ですね。だから1人大
 学にやるだけでも大変ですよ。収入が少ないので、労働金庫で教育ローンを組んでいると言っていま
 した。
  別の知り合いは子供が双子で、2人同時に大学進学を迎えて、もっと大変だと言っていました。さっ
 き残業時間削減の話をされていましたけど、残業をするくらいしか、やりくりする方法が無いと悩んで
 いる人もいます。

B) あっ、私立大学はそんなにかかるんですね。私自身は国公立の大学に通っていたから、申し訳な
 いけど学費はずっと安かったです。恵まれてましたね。だけど私の子供は国公立に行けるかどうか分
 からないし、住宅ローンは結構抱えているから、子どもの将来のためにも、今の内に貯金をしておき
 たいと思います。

D) 住宅ローンも教育ローンも、借金は返していかなきゃいけないから、会社の将来が見通せないの
 はきついですよ。ここで賃金カットしたからと言って、必ず会社が立ち直って、将来は安泰という保証
 はありませんしね。周囲の人も、同じようにローンを組んで子どもを大学にやっているし、それで特に
 根拠もなく何とかなるのではないかと思ってしまうのだけれど、本当に何とかなるのか分からないの
 ですよね。ひょっとしたら、どこかで破綻するのかも知れないと不安になったり。

B) その意味では、会社の将来を不安にさせる施策ですよね。リーマンショックの時には、100年に一
 度の大恐慌を乗り切るためだと言って、未曾有の危機に対処するために賃金カットをやったし、一時
 金は3.75ヶ月で、はじめて4.0ヶ月を切りました。納得はできなかったけど、普段の年とは違う判断
 も必要なんじゃないかとも思いました。
  それからたった2年で、また賃金カット。もしそれが妥当な経営判断だとしたら、短期決算の辻褄合
 わせが出来なければ、経営が行き詰るところまで来たんじゃないかと考えます。いよいよ倒産寸前な
 のかも知れないって。

D) ダメならダメで、こんなところでチマチマと賃金カットはやめてくれって声も出てきそうです。

A) では次に、カットのあり方は、会社提案の通りでいいのでしょうか。つまり賃金と一時金の両方の
 カットで良いのか、割合はこれで良いのか、組合員は全員一律に同率のカットで良いのか。この点は
 どう思いますか。

D) どうして一時金だけをカットしないのかなと思いますね。賃金は、月給の7.5%が3ヶ月分ですから、
 計22.5%分のカットです。一時金は、2.0ヶ月分の12%ですから、単純計算で月給の24%分です。
 あわせて、月給の46.5%分のカットになります。これをすべて一時金の方に持っていくと、2.0−
 0.465=1.535ヶ月になりますね。冬の一時金は約1.5ヶ月です。

C) 例えば、総合職の係長クラスと、事務系の担当を比べると、事務系の方が月例賃金のウェイトが高
 いんです。言い換えると、裁量労働者など、より成果を重視される立場ほど一時金のウェイトが高いの
 です。だから一時金カットのみにした方が、事務系の負担は減るはずです。月例賃金カットを併用され
 る方が、逆進性が高まると言えますね。だから私は、一時金カットのみにした方が良いと思います。

B) それならば、一律のカット率の方が問題のように思えます。職種か、または貰っている賃金の額に
 応じて、傾斜を付けた方がいいのではないでしょうか。裁量性の強い人、賃金月額の高い人に高い
 カット率を適用するのが妥当ではないかと思います。それと、扶養家族のいる人へのカット率を下げ
 るとかも。

D) それについては、会社から一律のカット率を提案された時点で、終わっているのかなと思います。
 労働組合の側から、誰かの分を削って誰かに充てろとは言えないでしょう。そんな事を議論し出した
 ら、組織の統制が出来なくなってしまいますよ。その点は、会社側の配慮が欲しかったと思います。