ルネサス懇、大量退職と今後のルネサスを語り合う。

− KKRの出資提案は何だったのか −


A) さて、ここからは、今後のルネサス社がどのような方向に向かうのかを話し合いたいと思います。
 12月10日に、産業革新機構の出資提案に対する正式な受け入れを会社が発表しました。この決
 定をどう見たら良いのでしょうか。

D) また私の嫌いな経済問題、経営問題ですか。ルネサス懇を発足してからもうすぐ3年になります
 けど、毎度こういう話題ばかりですね。何時になったらピュアな労働問題について語れるのか。

B) 同感です。私が20代の頃には、会社の経営なんて全く気にしていませんでした。儲かるとか儲
 からないとかに興味が無かったし、会社の方針は基本的に正しいと信じて、あとは自分の仕事に邁
 進したいと思っていました。経済だの経営だのと余計な事に煩わされずに、技術の向上に努めるの
 が技術者たる自分の役割だと思っていたかったのです。会社生活を続けるうちに、いろんな労働問
 題が身の回りで起きてくるに従って、それもまたある種の現実逃避だと気づいたから、今こうしてこ
 こに居るのですけど。

A) 気持ちは分かります。しかし、労働問題と経済問題や経営問題とは切っても切れない関係にあり
 ます。ルネサスの経営が危機的状況にあるからこそ、それが早期退職のような雇用問題や、賃金
 カットとなって私たちの生活を脅かしているのです。ですから、私たちが苦手とするテーマにも、取り
 組まざるを得ません。それに私たちが経営問題を語ると言っても、それは経営者目線でどうやったら
 ルネサスの経営が上手く行くのかを考える事ではありません。私たちとしては労働者の目線から、
 例えば企業が経営危機にあれば労働者の労働条件は下げられても構わないのかどうか、どう経営
 と折り合いを付けていけば私たちの生活を守れるのか、私たちの未来を損なわずに済むのか、その
 ための労働運動はどう組み立てて行ったら良いのか等を考える事です。Bさんには後で楽しい話題
 も用意してありますから、少し我慢してつきあってください。
  では、産業革新機構について語る前に、夏頃に突如現れたKKRの出資提案について、あれは何
 だったのか振り返ってみましょう。この話題はCさんを中心にお願いいたします。

C) まず、KKRとは、コールバーグ・クラヴィス・ロバーツという名のアメリカのファンド会社です。コー
 ルバーグさんが中心となって、当時まだ30代だったクラヴィスさんとロバーツさんを誘って1976年に
 立ち上げた、企業相手の金貸しを営む会社です。彼らは出資者からお金を集めて、それを元手に企
 業の株式を売り買いして儲ける手法を取っています。安く買って高く売るのは商売の基本ですね。し
 かしそれだけだったら誰でも考えます。彼らのオリジナリティがどこにあるかと言えば、彼ら自身が経
 営に関与することで会社の価値を高めていることです。20世紀のアメリカのオーナー企業には、経営
 者の不心得によって経営が行き詰まっている場合が結構あって、そういう会社の中には優良な資産
 とか技術や特許を持っているケースがありました。このような会社は、単に融資するだけではダメ経
 営者が無駄に使い込んでしまいますけど、株式を買い占めて経営の実権を握り、舵取りさえしっかり
 すれば立ち直って利益の出せる会社になる余地がありました。彼らはそういった会社を目ざとく見つ
 けて、株式を買って経営権を得るとともに非公開化し、公開株の場合に株主たちから受ける短期での
 利益追求の圧力をかわしつつ、自らの管理下で再生させて、きちんと利益を出せる様になったところ
 で再び公開するのです。こうして買った時よりも高い値段で株や会社そのものを売却して、利ざやを
 稼ぐという訳です。ちなみに彼らのような業態をプライベート・エクイティ・ファンド(PEF)と呼びます。
 プライベート・エクイティとは、非公開株のことです。

B) ああ、なるほど。それで経営がダメでもたついているルネサスもKKRに目を付けられたということ
 ですか。

C) KKRはルネサスに出資するのと引き替えに、経営者の総退陣を要求したと言われていますから、
 ある意味そう見なしたのでしょうね。
  でもルネサスは少なくとも世襲で社長が交代するようなオーナー企業ではありませんし、仕事を通
 じて経験と実績を積み重ねた人達が株主総会で承認を得て取締役になっているのですから、経営者
 はそれなりにきちんとした人達のはずです。仮にKKRがルネサスの現状を、単純に経営の不作為で
 こうなったと思うのなら、KKRの方こそ甘いかも知れませんよ。

D) 8月末にKKRが出資するニュースが報じられたとき、ネガティブで嫌な感じがしましたよね。ハゲタ
 カファンドに食い荒らされるのではないかとの不安があったと思います。

C) 一般には、プライベートエクイティファンドとハゲタカファンドは別物と言われています。なぜならハ
 ゲタカファンドとは、無茶なリストラをして経営体力を本質的に損なっても、一時的に利益が出て、株
 価が上がって、その間に株式を売り抜けて自分達さえ儲かればそれで良いというものですからね。
 企業と友好的な関係を築いて経営再建を目指すプライベートエクイティファンドは、そのような悪質な
 ファンドとは違うとされています。

D) でもKKRも出資後には大リストラをやるだろうと言われていましたよね。何が違うのでしょうか。

C) その通りです。彼らも最初は人員削減を伴う大リストラをやります。でもその後で経営が再建され
 て、企業規模を拡大出来るようになれば、新たな雇用を生み出せると言っています。しかしこれは、
 あくまでも資本の側の言い分だと思って聞いてください。
  プライベートエクイティファンドも、利益を出来るだけ早く回収したいのはハゲタカファンドと同じです。
 そのために彼らは、リキャピタリゼーション(資本再構成)という手法を取ることがあります。これは何
 かと言うと、会社に借金をさせて、そのお金で株式の配当を出させて株価を上げ、そこで持ち株を売っ
 て利益を出すのです。ファンドは儲かりますが、会社には借金が残ります。その借金の負担は、社員
 が負うことになります。そういう彼らを、困窮した企業を助ける白馬の騎士のように美化するのはどう
 かと私は思います。

D) 白馬の騎士というよりも、病気を治す代わりに莫大な手術代を要求するブラックジャックに近いです
 かね。

C) それに、彼らがハゲタカファンドにならないのは、ハゲタカファンドというビジネスモデル自体が古い
 からだと思いますよ。安く買って高く売ると言いますが、それは高く買ってくれる人が居て成り立つこと
 です。食い荒らしてぼろぼろになった企業を、その実態に気づかずに高く買ってくれる「愚かな出資者
 」が居て初めて成り立つのがハゲタカファンドだとすれば、資本主義の発達とともにプレーヤーが優秀
 になるにつれて、ビジネスが難しくなるのは当然です。株価がそうした企業の内情も含めて企業価値
 を正確に反映するようになるにつれて、株価を上げるためには真の意味での企業の再生がどうしても
 必要になってきます。プライベートエクイティファンドが資本主義の主役になって来た背景には、そうし
 た株式資本主義の発展が土台にあると私は捉えています。

B) 蛇足かも知れないけど、ハゲタカファンドって、ハゲタカに失礼な言葉じゃないでしょうか。ハゲタカ
 は死肉を食べるけど、生きている動物を死なせるのはライオンとか虎とか、大型の肉食獣ですよね。
 生きている会社を死なせて肉を食らうのなら、ライオンファンドとか呼ぶ方が、本当は正しいのではな
 いかと。

C) いずれにしても、彼らの考える企業の再生とは、高い利益率を達成できるようにすると言う事です
 から、そこには自ずと限界があります。

B) 企業を優秀な「金儲け機関」にするのが目的だという事ですよね。

C) そうです。社会における企業の役割というのは、人と人とが協力し合って、個人では出来ない大き
 な仕事を成し遂げるコミュニティーなのですから、資本主義とか社会主義とかの経済体制を超えた、
 もっと本源的なものです。企業の役割は、第一には本業にあり、ルネサスの場合には良質な半導体を
 社会に供給することです。利益は企業が存続して本業を続けて行くためには必要ですが、企業の目的
 は本業にあって、利益はいわばそれを実現し続けるための手段に該当します。
  ところが世の中には、この手段と目的が逆転する人達がいます。金儲けが目的になり、事業がお金
 を儲けるための手段になっているのです。KKRも、そちら側の陣営に属します。

D) でも今時は、労働者の側でも企業は金儲けが目的だと考えている人が、結構大勢居るのではない
 でしょうか。資本側の考え方を、そのまま取り込んでしまっている感じで。

B) 中には、エヴァンゲリオンみたいに資本とのシンクロ率400%の人とか。

C) シンクロ率って何ですか。労働者が企業の目的を金儲けであると考えたとしても、生きるために企
 業活動に参加せざるを得ない事情や、企業が利益を上げないと存続し続けられない事実がある以上、
 無理もないことだと思います。

B) ええ、わかります。

C) 誤解されると困るので、ちょっと説明しますね。もし私たち労働者が、胸に手を当てて自分が何のた
 めに働いているのかと自問したら、「私は企業が儲かるために働いている」とホントに本気で思う人は、
 ごく希だと思います。

B) 「本業で社会に貢献するために働いています」と言う人も、かなり少ないと思いますが。

C) そうです。もともと労働者個人がなぜ企業活動に参加するのかと言う目的と、企業そのものの目的
 とは同じでは無いのです。個人としては、やっぱり生活していくためと言うのが第一でしょう。そして今
 話題に出しているのは、労働者個人の働く目的ではなく、企業の存在目的です。
  企業の存在目的がなぜ本業にあるのかと言えば、本業によって得られる成果を得ようと思ったら、人
 類は企業のようなコミュニティーを造るしかないからなのです。コミュニティーを造らないのなら、成果も
 諦めないといけません。本源的と言ったのは、そう言う意味です。
  ところが、企業を金儲けの手段と考える者にとって、企業の存在は相対的なのです。利益を上げる手
 段なら、企業以外にも土地とか資源とか貴金属とか、いろいろと投資先があるからです。これら全てを
 ひっくるめて、一番儲かるところに資金を落として、より多くのリターンを得たいと言うのが資本の欲求で
 す。だから例えば公的機関を何でも民営化すれば効率的になると考えるのも間違いで、資本の手にゆ
 だねれば、そもそも儲からない事は、例えその成果を必要とする人が居てもやらないと言う判断をする
 のです。この話を丁寧に説明していると長くなるので、今日はルネサスの話の範囲で止めておきます。
  おそらく特約店や営業の最前線で仕事をしている人は気づいていると思いますが、ルネサスの半導
 体の中には、地方の小企業に出荷していて、年間に数千個程度しか出ないけれども、その会社の主力
 製品に入っていて、無くなると顧客としては大変困るが、だからと言って価格をつり上げられても困ると
 いうケースがあると思います。現場で働いている人の感情として、そう言う製品は例え不採算でも、出
 来るだけ残したいと思うでしょう。そういった感性を持つことは、とても大切だと思うのです。企業の目的
 が本業を通じて社会の中で役割を果たすことにあると考えれば、この判断は正しいとも言えます。ところ
 が、企業の目的を利益追求と考えれば、こうした判断は誤っている事になります。ここでは、ほんの一
 例しか上げませんでしたが、利益追求が企業の手段から目的にひっくり返ることで、企業活動の方向性
 もかなり違ったものになって来ます。その事の意味というのは、実はとても深刻なので、いずれ丁寧に
 説明したいと思います。
  KKRのように、企業の利益率向上を目指す集団に委ねる企業再生には自ずと限界があると言ったこ
 との意味は、だいたい分かってもらえましたでしょうか。

B) 分かったつもりです。それにしても、どうして突然KKRが出てきたのでしょうか。

C) 報道によれば、産業革新機構が出資先を募る際に、KKRにも声をかけていたらしいです。最初は出
 資者の中にKKRも居たのですが、KKRとしては単独でやった方が圧倒的にリターンが大きい訳ですか
 ら単独行動に走ったのだと言われています。

D) KKRがリスクを承知で単独行動に走ったと言う事は、デューデリジェンスを経て彼らはルネサスを再
 生する自信を得たと考えて良いのでしょうか。

C) 彼らは合理主義者ですから勝算はあったはずです。ルネサスの場合、何か特別に優良資産を持っ
 ている訳でもないので、単純にばらばらに解体して切り売りした方が高く売れるとも言えないでしょう。
 したがって本業を立て直すのが利益を上げる一番の近道なのは間違いないと思います。その本業も
 今は営業赤字続きです。しかしベースとなる技術があって、造っている製品にはニーズがありますから、
 利益の上がる製品に集中するとともに、リストラを進めて固定費を削減すれば、十分に黒字化できると
 考えたのではないでしょうか。

B) それは一般的にマスコミから言われている話ですよね。

C) 加えて、自動車メーカーなどに対して製品を安く売りすぎているから利益が上がらないのだとの指
 摘もあります。リーズナブルな価格で売れば、もっと利益が出るはずだと考えたとも言います。

D) もともとルネサステクノロジとNECエレクトロニクスの2社は共に自動車向けマイコンに強く、お互い
 がシェア獲得のために安売り競争をしていたから思うように利益が上がらなかったと言われていますね。
 ルネサスエレクトロニクス社が発足する時には、統合によってマイコンは世界シェアの3割超を握って、
 顧客に対して価格交渉を有利に進められるようになると説明されましたでしょう。では統合後の2年半
 は、当初の目算通り有利な価格交渉がちゃんと出来ていたのでしょうか。そういう反省も必要な気がし
 ます。

C) 実際に交渉するのは、営業や特約店の担当者です。会社が統合したからと言って、いきなり次の
 製品からは価格を1.5倍にさせて頂きますなんて尊大な主張は出来ないでしょう。それはKKRが経
 営権を握っても、本質的に同じだと思います。

D) ただ、少なくともKKRは、ルネサスを「まじめに」再生しようとしていたと考えて良いのでしょうか。
 我々社員にはKKRが何者か分からなくて、ルネサスを解体して中国や韓国の資本に売却してしまう
 のではないかとか、いろいろと不安があったと思います。

C) 中国や韓国の資本に売られる可能性も無くはないと思いますが、それ以前に日本国内の資本に見
 捨てられかけていた事はどう考えるのでしょうか。
  いずれにしても、KKRはそんなに滅茶苦茶はしないと私は考えています。と言うのも、KKRはまだ日
 本の市場には余り参入できていないのです。デフレの影響で日本企業は株安が続いていて、買収す
 る側に有利な環境にありますから、彼らも今後日本での仕事を増やしたいと考えているでしょう。です
 からルネサスの一件では、日本国内に良い印象を与えておきたいと考えた筈です。仮に日本の雇用
 慣行を無視して、問答無用で会社の解体や工場閉鎖や指名解雇などを強行すれば、それこそ悪名を
 馳せてネガティブな先入観を与えてしまいます。

D) ではKKRが血も涙も無い非情なファンドで、大リストラでも解体でも、何でもやるかの様な噂は、あ
 る種のプロパガンダですかね。

C) みんなにそう思って貰いたい人達がいる事は確かではないでしょうか。

B) それって、もしかして日本の大銀行とか、産業革新機構側の陣営とかの事でしょうか。

C) さあ、どうでしょうか。

B) でもKKRが慈悲深い白馬の騎士であると期待するのも間違いなのですよね。

C) 間違いでしょう。彼らは過去にオランダのフィリップスからスピンアウトしたNXP社を買収した事があ
 ります。NXP社は総合電機メーカーの部品供給部門から独立したものの、業態はIDMであり、親会社
 の支配を強く受ける下請け体質があったという点で、ルネサスとよく似ていたと言われています。KKR
 の介入によってNXP社がその後どうなったかを知れば、彼らの手法がある程度は分かるはずです。私
 も調べようと思ったのですが、ネットで検索しても適当な情報にたどり着けませんでした。ただ、初期の
 頃に大規模なリストラによって人員削減を行い、選択と集中を進めたことは確かな様です。
  ちなみにKKRのライバルであるブラックストーンは、車載マイコンでルネサスと競合するフリースケー
 ル社を買収しています。こちらもやはり株式を非公開化して経営の再建を実行中です。半導体企業は、
 製品を開発してから量産品がある程度の数量出る様になるまで、数年かかりますから、中長期的なス
 パンでの再生計画がどうしても必要になります。ところが株式を公開していると、クォーター毎に業績を
 チェックされるために、短期の決算の辻褄合わせに注力せざるを得ませんね。ですから非公開化と言う
 のは、半導体企業の再生には合っていると思います。
  ただ、注意しなくてはならないのは、NXPと全く同じ事をKKRがルネサスに展開する訳ではないと言
 うことです。KKRは合理主義者であり、合理主義者であるが故に、状況適合的に経済合理性を追求す
 るはずだと思うのです。日本とオランダでは雇用慣行も、その土台となる文化も異なりますから、その
 影響が出るに違いないと言う事です。例えばKKRが血も涙も無い非情なリストラを敢行するかどうか
 は、それを許す雇用慣行が日本にあるかどうかに大きく影響を受けると思います。言い方を変えれば、
 彼らに非情なリストラをさせないためには、それが経済非合理的となるような局面を、私たちの労働運
 動を通じて造っていくのが有効だと考えます。

B) 雇用慣行ですか。では電機業界13万人リストラで実行されているひどい退職強要を、現代日本の
 雇用慣行としてKKRが参考にする可能性もあると推定できますね。

C) ここまではやっても大丈夫との判断基準になる可能性はあると思います。

B) つまり安易にリストラを認めてはいけないと言う事ですね。雇用を守り、ディーセントワークを実現す
 る方が経済合理的であるようにしていかないといけないと。さっきのレッドパージの論議と同じような結
 論になって来ましたね。

C) レッドパージの話の中で、「安心して生活できる基盤を企業の外に造る必要がある」と私は言いまし
 たが、それを「企業のリストラが問題ではなく、リストラによって生活出来なくなることが問題である」との
 意味に解釈して欲しくないです。リストラはリストラで問題なのです。リストラによって労働者の社会参
 加の場が失われる事も、生活環境が圧迫される事も問題だし、それが暴力を伴って推進されるのであ
 れば尚更問題です。もし企業の外に生活基盤が無ければ、その問題がより深刻なものになると言うこ
 とです。だから現在も未来も、リストラには我々として断固反対していかなくてはいけない事に変わりあ
 りません。
  しかし企業もまた生成消滅するものである以上、リストラを労働運動だけで100%回避するのは不可
 能です。そこで、企業にはリストラ回避の努力を精一杯やらせた上で、それでも必要なリストラに対して
 は社会保障などで手当する事になります。ここで社会保証は政治解決すべき課題であって企業とは無
 関係であると考えるのは間違いです。

B) 例えば、失業すると貰える失業給付は雇用保険によって賄われていますが、雇用保険は現在、労
 働者が5‰(パーミル=1/1000)を負担しているのに対し、事業主は8.5‰の負担ですね。つまり現
 在の日本の社会保障制度にも、企業の関わりはあります。でも日本の失業給付の水準は、決して高く
 ないとも言われますね。

C) そこで社会保障を充実させるために、企業の関わりをもっと増やす事を考えないといけません。でも
 そんな事は企業にとっても財界にとっても、それらに支えられる自民党にとっても本来は歓迎できない
 ことなのです。だから社会保障制度を充実させる方が企業にとって得である、または社会保障制度が
 貧弱だと結局は企業も損をするという状況を造らないと、何も変わらないと考えるべきです。ここでもキ
 ーワードは経済合理性の追求です。資本主義社会において労働運動の持つ可能性とは、すなわち経
 済合理的となるポイントを動かせる可能性であると私は考えています。これは大衆運動としての労働
 運動や、その担い手である労働組合だからこそ出来る事であって、個々の労働者には決して出来ない
 事です。

A) 熱い議論ありがとうございました。いずれにしろKKRの件は現時点において過去の事になりました。
 そこでKKRについては、この辺にして、次に産業革新機構の出資提案について検討してみましょう。