ルネサス懇、秋闘を語り合う。

− まとめ −

【まとめ】

A) ではまとめに入りたいと思います。
 まず、今回の秋闘は、円高の急激な進行などの外的要因に晒されて、かなり厳しいものになりました。
 しかしそれを考慮しても、上期に何とか営業黒字を達成しながら一時金の妥結月数が2.0ヶ月だった
 と言う結果は、これまでの経緯から見て、一段低い水準だったといえるのではないかと思います。特に、
 統合会社で最初の交渉において、こうした低い水準で妥結したのは問題なのではないかということで
 したね。従来水準から見れば、2.14ヶ月くらいが、何とか納得のできる水準と言えそうです。
  次に、このような厳しい結果になった原因は、労組の交渉に問題があったと言うよりは、ルネサスエ
 レクトロニクス社が上場会社であること、上場会社であるが故に業績に対して厳しい外圧が存在するこ
 とが背景にあるのではないかと言うことでした。そして個別の交渉の局面では、外部のステークホルダ
 ーの要求に応えられなければ、企業の存続が危ういとか、キャッシュが行き詰れば倒産だとか、企業の
 存続への危機感を労使の代表が共有している様に見えます。そのために、労働者個人の切実な訴え
 などが、何も通用しないような交渉になって来ていると感じます。その結果、一時金の交渉自体が、一
 体どれほどの意味があるのか見えなくなって来ていますね。交渉なんて無意味なんじゃないのか、無
 駄なんじゃないのかと言う思いが組合員に広がらないかと危惧します。もっと組合員を巻き込むような
 一時金交渉の再構築を労働組合には求めたいと思います。また、こうした状況に対応して行くためには、
 私達も経営分析力を身につける必要があるでしょう。
  しかし更に本質的な問題として、そもそも私達の生活環境が、あまりにも進行しすぎた貨幣経済の中
 にあること、それが故に生活に必要な糧を、お金を通じて手に入れなければならないこと、そのお金が、
 私達の勤める企業の賃金に拠り過ぎてしまっていることがあります。お金の使われ方として、人が生き
 ていくのに必要な基本的なもの、すなわち食糧や衣服や住環境や、医療や教育などを買うために使わ
 れるのが、もっとも純粋に人の幸福につながる良い使われ方だと私は思います。ところが、今の一時金
 では、本当にお金の必要な人が潤うとは限りません。ルネサスエレクトロニクス社には、そもそも一時金
 が無い非正規労働者も働いているに違いありません。ですから、生きていくのに最低限必要なものは、
 賃金を経なくても、ある一定水準が確保できる仕組みを作っていく必要があるのではないでしょうか。そ
 のためには、従来の枠組みを大切に守って、一時金のパイを最大限取ることは継続しながらも、同時に
 もっと社会や政治に関心を持って、私達みんなが潤う富の再分配のあり方についても考えて行きたいと
 思います。


                 (「ルネサス懇、人的施策を語り合う」に続く)