ルネサス懇、秋闘を語り合う。

− 労働組合運動の再構築 −

【労働組合運動の再構築】

C) 私は本質的な問題を追及したいですね。秋闘が盛り上がらなかったという話がありました。労組の盛
 り上げ方も足りなかったかも知れません。だけど、盛り上がらない最大の原因は、組合員のニーズと労
 組の掲げるもの、あるいは獲得できると期待できるものとの乖離にあるのではないでしょうか。組合員の
 多くは、本当の自分の望みを、労働組合を通じて叶えられるとは思っていないのではないでしょうか。
  そりゃあ、2万人以上もの組合員を抱える労組です。組合員の年齢幅も広く、いろんな職種に就いて
 いますから、マクロにパイの拡大を目指して、全員が潤うことを目指すのは正しいでしょう。たとえ0.01
 ヶ月であっても、少しでも多く獲得しようとする事は間違っていないと思います。だけど組合員は、自分が
 どうなるのかに結局は関心があるのですよね。

A) ええ、そうでしょうね。つまりパイの拡大さえ必ずしも共通の目標ではなくなった可能性があります。
 これでは、一時金**ヶ月を基準にストライキと言っても、組合員全員の理解を得られないかも知れま
 せん。それでも団結意識は重要だと思いますよ。

B) 団結意識は乏しいかなあ。同調意識ならばあると思いますよ。同調意識がマイナスに作用すれば、
 「みんなで我慢しましょう」になっちゃうんですよね。

C) みんなと違うことをする人は我侭と言われますけど、みんなが同じで無いと気がすまないという感情
 を押し付けて、例外を排除しようとする方が、よっぽどひどい我侭だと私は思いますよ。みんなに我慢さ
 せないと気がすまないと言う人は、きっとみんなに我慢させる者に対してよりも、我慢しようとしない一部
 の人に対して、怒りの感情を抱くのでしょうね。

B) これまでの話から、今回の秋闘には、2つの閉塞感があったと思います。ひとつは組合員が参加で
 きなかったという閉塞感、そしてもうひとつは、交渉が通じなかったという閉塞感です。

D) そうですね。参加できないという面からは、無関心やシラケが生まれるし、交渉が通じないという面か
 らは春闘不要論が生まれて来ると思います。そしてこの2つが組み合わされば、結局は労働組合不要
 論に発展するのではないかと懸念しています。
  その結果として、労働組合を通じて何かを改善しようとする意識が消えて、代わりに経営面で大幅な
 黒字を達成すれば、従業員の処遇も向上すると言う意識が台頭して来るのではないかと。言い換えると
 従業員の処遇が低いのも経営が痛んでいるせいであって、経営さえ立て直せば処遇も回復するのでは
 ないかと言う、その一本のストーリーだけで物事を考えるようになって行かないかと心配します。

C) そういう考え方自体が、必ずしもすべて誤りとは言えないだけに、厄介ですね。

A) 誤りとまでは言えませんね。しかしそれが100%真理だとみんなが考える様になれば、労働運動は
 崩壊してしまいます。労働運動には、労働者一人ひとりを大切にすると言うミクロに迫る要素と、会社と
 いう枠を越えて広がっていくマクロに発展する要素の両面があります。経営の安定化のためなら多少の
 犠牲はやむをえないと切り捨てることで、ミクロの追求を諦めて良いでしょうか。自分の会社の経営が
 上手く行ったことでライバル企業を蹴落としたとき、ライバル企業に勤める労働者はどうなっても知らん
 と言う発想で良いでしょうか。これらを気にしなくなったら、もはや労働運動では無くなってしまいます。
  私が言いたいのは、業績好調な会社と沈滞する会社とで、一時金に差があってはいけないという様な
 極端な形式的平等主義ではありませんよ。ただ、業績が悪くとも、ある一定水準の一時金が確保されな
 いと、働いている人達の生活が成り立たなくなります。その水準というのは、電機連合のような企業横
 断的な労働組合組織を通じて相場を造っていくべきものです。そういう企業の枠を越えてつながる意識
 が無くなってはいけないと言うことです。

B) わかりやすく言うと、泣いている労働者が居ても平気で居られるような人は労働組合員ではないとい
 うことですね。そういう意識を常に持ちながら、労働者みんなの生活を良くするために、賃金の向上とか、
 労働環境の改善とか、社会の仕組みつくりとか、多方面に考えて行きましょうと、その実現手段のひとつ
 に経営の改善もあるでしょうと。