ルネサス懇、秋闘を語り合う。

− 責任論ふたたび −

【責任論ふたたび】

D) 私は労働組合の責任について、やはり言及しておきたいと思います。もう今さらと思われるかも知れ
 ませんが、春闘も近いことですし、言うべき事は言っておきたいのです。

A) どんな責任があると思われますか。

D) 前回の議論では説明責任について触れました。もうひとつ、ちょっと原理的かも知れませんが、いま
 のEL労組やRT労組は、どちらも労使協調路線の労働組合ですから、労使協調路線なりの責任がある
 のではないかと思うのです

A) それは、どんな責任ですか。

D) 労使協調路線とは、企業の維持継続・成長発展を促すことで、組合員の労働条件・経済的地位の向
 上を獲得すると言うスタンス、最近の言葉で言えば、会社と労働者との間に「WIN−WIN」の関係を築く
 ことが、その要諦であると理解しています。その理念の根拠は、多くの組合員が何よりもこの会社で継
 続して働けることを望んでいること、働き続けながら自らの生活を支えたいと願っていること、それを可能
 とする安定した仕事環境の中で仕事にやりがいを感じながら、職業人として成長して行きたいと望んでい
 ることから、それらを保障すべく、会社の経営を健全なものにして、会社を成長発展させる事こそが大事
 なのだという考え方にあると思います。
  だから、今の労組は会社に対して、一方的な要求を突き出すことはしませんね。労組の資料をじっくり
 読んでいただくと解ると思いますが、労組は会社に要求する代わりに、暗に我々組合員もまた会社の要
 求に応えると言っているのです。会社の要求に応えるとは、ひとことで言って「しっかり働きます」と言う
 ことです。春闘や秋闘で妥結すると言う事の意味は、この妥結額で向こう1年や半年間、我々は一生懸
 命働きますと会社に約束することなんです。
  今回の秋闘は終わりました。だから我々は、2.0ヶ月と言う一時金と引き換えに、100日プロジェクトの
 遂行のため、これから半年間は頑張って働く義務があります。

A) そうだとして、労組執行部の責任はどうなりますか。

D) 前置きが長くてすみません。執行部がいくら約束しても、現場の組合員が着いてこなくては意味があ
 りませんよね。つまり、今回の結果でもって「よし、頑張って働こう」と言う意識を、どれだけ喚起出来ただ
 ろうかと思うのです。この点に関して、労組の対応が適切だったと私には思われないのです。私の職場
 では、秋闘期間中、職場会ひとつ開かれませんでした。私の職場の組合員は、完全に蚊帳の外だった
 と思うのです。それで結果が2.0ヶ月ですと言われても、しらけますよね。
  組合員が自覚を持って、交渉経緯と結果に納得して、しっかり働こうという意欲を高めると言うのが、労
 使協調路線の労組における交渉力の源泉ではないでしょうか。それが今回もまた損なわれた様な気が
 するのです。

A) そうですか。では仮にその見方が当たっているとして、責任の取り方はどうなりますか。

D) 集約のための代議員投票で、絶対多数で可決されているのです。だから組織として2.0ヶ月と言う結
 果が承認されたと見るべきでしょう。したがって2.0ヶ月と言う結果に対して責任を取る必要はありません。
  ただ、執行部の側から組合員の帰属意識や結束力やモチベーションを高めるように、改めて働きかける
 必要があるのではないかと思います。そのためには、組合員が交渉へ参加していると言う自覚を持てる
 様でなくてはいけないでしょう。次回の春闘では、きちんと職場会をやって、職場の意見収集をして、要求
 に反映させるところから始めるべきと思います。

A) 組合員の意欲については、労組にも責任があるとは思いますが、やっぱり会社側に、より多くの責任
 があると思いませんか。2.0ヶ月では、従業員の期待に十分応えたとは言えないのではないでしょうか。

D) ええ、しかしそれは、2.0ヶ月よりももっと出せたはずだと我々が考えているからですよね。だけど、
 絶対額で多いからやる気を出すとか、少ないからやる気を無くすとか、そういう事だけで良いのかなあと
 私は思うのです。そうではなくて、交渉経過そのものの納得性がとても大事だと言うのが私の考えです。