ルネサス懇、秋闘を語り合う。

− なぜ残念な結果になったか −

【なぜ残念な結果になったか】

A) 今までの議論で、秋闘の結果は残念なものであったという見解はおおむね一致したと思います。で
 は、なぜ今回このような結果になったのか、考えてみたいと思います。まず、何度も議論に出てきてい
 ますが、年初に内外に発表した予算の圧力、すなわち「初めにフタ」の威力がものすごいと感じますね。

D) そうですね。今回の労働組合側の主張は、まっとうなものだったと思います。まっとうなのに通じな
 かった。なまじまっとうな主張をしているだけに、結局は何を主張してもムダだったんじゃないかと言うよ
 うな雰囲気さえ感じます。交渉になっていたのかどうか。
  ELとしては、2.25ヶ月は譲れない線だったはずなのです。だから、2.25ヶ月を巡ってストをするの
 だと私は期待していました。以前のEL労組だったら、そりゃあストはしないでしょう。今回はRT労組と一
 緒に秋闘をやるから、もしかしたらと思ったのです。期待はあっさり裏切られちゃいましたけど。

A) RTだってずっとストはやっていませんよ。勿論、むやみやたらとストをするのが良い事とは思いません。
 我々の世代は、70年代のゼネストなども知っていますから、勝算の見込みの甘いストが、どういう悲劇
 を生むのかを、実際にこの目で見ています。
  ストをやるうえで重要なのは、目的がはっきりしていること、その目的がストをしてでも実現するに値す
 るものであること、実現可能だという公算があること、そして実現しようと言う強い意志を労働者が共有し
 ていることです。この秋闘でストをやる必要があったとしたら、その目的は何でしょうか。

D) 一番大事なのは一時金水準の維持だと思います。ELは通年で4.0ヶ月の達成がかかっていました。
 業績の回復度合いから言って、実現可能だとも思っていました。

A) では、それはストをしてでも守るべきものだったでしょうか。

D) そこなんですよね。ELでは以前から、ストをすると組合員の賃金も減るし、会社の業績にもダメージ
 があって、巡り巡って従業員の処遇にも影響するから、ストはやらない方が得だみたいな言い訳が聞か
 れていました。大企業の労組が社会の代表として、賃金や一時金の水準を守ることの意義というのが
 何も意識されず、単にどっちが自分の懐に入ってくる金が多くなるのかという議論になってしまってました。

A) そうであれば、労働者側の強い意志が欠損していたということですね。それではストは打てませんよ。
 RT労組などは電機連合の拡大中闘として、電機の賃金相場を作っていく責任があるのです。会社統合
 して、企業規模が更に大きくなった今、EL労組とともに、その責任は増していると言えます。

D) 責任なんて硬いことを言われると、引いちゃいそうですよ。

A) ははは。だけどそういう教育は、労働組合として本来必要なものですよ。電機連合が毎回の春闘で
 賃上げ交渉の要素として「賃金の社会性」と言っていますでしょう。賃金には社会性があるのです。
  ルネサスエレクトロニクスは日本を代表する半導体企業ですから、この業界における賃金相場を作っ
 て行く役割を私達は担っているはずです。この秋闘は、その重要な第一回戦でした。結果は、従来の水
 準から後退してしまった様に思います。ここから押し戻すのは容易ではないと私は思います。気が早い
 かも知れませんが、今のままでは、次回春闘も4.0ヶ月を守るか割るかの攻防になるのではないかと
 危惧しています。

B) 4.0ヶ月が新会社の相場になってしまう恐れがあると言うことですか。それは要約すると、私たちが
 強い意志を持って団結していないから、一時金も増えないのだと言われるのでしょうか。何となくコテコ
 テの労働運動論みたいですが。
  今回の妥結結果の背景には、円高などの外的環境の厳しさとか、この会社の事業体質とか、もともと
 両社とも赤字会社だったこととか、現実的な苦しさがあると思います。11月16日に評議員会があって、
 全会一致で秋闘の集約が承認されました。これは組合員の一般的な感覚として、これが精一杯だと考
 えたからではないでしょうか。

D) EL労組は、11月2日に集約しています。こちらも反対票は入らなかったようです。感覚としては同じ
 かも知れません。

A) 代議員の大多数で集約を可決したのであれば、それを尊重しなくてはならないでしょうね。だけど、
 みなさんの実感として、従業員がみんな今回の結果に納得したと思えますか。

D) 納得していない人は周りに居ますよ。一方で、逆にそもそも一時金が労組と会社との交渉で決まって
 いることさえ知らない組合員もいると思います。納得以前の問題と言うか。

B) さすがに大多数が納得しているとまでは思えませんね。