ルネサス懇、早期退職制度を語り合う。

− どう対応するか −

− どう対応するか −

A) もし会社が、早期退職は100日プロジェクトの他の施策と切り離せないという理屈できたらどうします
 か。早期退職をやらなければ、100日プロジェクトの完遂も出来なくなるかのように言ってきた場合です。

C) おかしいと思いますね。早期退職は人員削減のための施策です。100日プロジェクトの骨子である成
 長戦略とは直接関係ないではないですか。それに固定費を削減して、企業の経営体質を強化するとか、
 筋肉質にするとか言う話は、もう昔からありますよね。この10年間ずっと言って来たし、今後10年ずっと
 言い続けるでしょう。会社が存続する限り言い続けるのでしょうから、そんなの100日プロジェクトと関係
 ありませんよ。

A) 早期退職用に200億円前後の大金が使われますが、R&Dなどに使う場合と比べて、本当に有効な
 使い方と言えるのかどうか、その辺もまだ聞いていませんしね。
  しかし、人間を固定費だの変動費化するだのと、無人格のコスト呼ばわりすることには反対ですが、今
 の社員の年齢構成自体に問題がありそうなのも事実ですね。

C) 会社の構成人員を見ると、確かに40歳から45歳にピークがあります。この層がこれから次第に高齢
 化して行きますから、10年後には平均年齢が40代後半の会社になるでしょう。会社自体の高齢化は必
 至です。加えて人事制度の問題もあります。今でも管理職待遇の社員がかなりの割合になって来ていま
 すが、何もしなければ10年後には管理職待遇が過半数になるのではないでしょうか。 
  このいびつな構造を何とかするため、出来るだけ早く手を打たなければいけないと、人事も悩んでいるは
 ずなんです。だけど、その解決策が早期退職の実施なのでしょうか。どう考えても根本対策になっている
 とは思えません。

A) この構造的な問題は、抜本的な改革をしない限り、いまピークにある層が65歳で定年退職をする25
 年後まで続くということになります。私はどこかで管理職などの役割の見直しをしなくてはならないと感じて
 います。ただ、それで賃下げになる人が大勢出てきたとき、どう合意を得るのか難しいですね。
  しかし何も計画が無いまま、今回の早期退職を認めてしまえば、結局これから何度も早期退職で解決を
 図るしか能が無くなってしまうのではないでしょうか。今回の100日プロジェクトで欠けているのは、ここの
 部分におけるビジョンではないでしょうか。

D) 今のルネサスは引越ししたての家のようなものだと思います。引っ越した直後、荷物を仮置きしてあと
 で整理しようなんて考えていると、結局整理しないまま、ずっと置きっぱなしになってしまいますよね。だか
 ら最初に整理する場所をきちんと考えるべきなんです。とりあえず今回は早期退職をやっておこうなんて
 事になれば、これからも同じことが繰り返されるでしょうね。

C) だから労働組合には、会社の人事施策として明確なビジョンが出るまでは、早期退職は絶対に受けら
 れないと抵抗すべきではないかと思います。もちろん何らかのビジョンが出てきたら出てきたで、その内容
 をチェックしないといけません。

B) そこには、若者の雇用をしっかり確保する方針を必ず入れてもらいたいです。中高年をいたずらにリス
 トラしろとは言いませんが、若い人の雇用の機会がずっと少ないまま、もう20年近くが経過します。就職氷
 河期の初期に卒業した人は、今はもう40歳になろうとしています。多くの若者がまともに働く機会も無いと
 言うのは、日本全体にとって計り知れないほど巨大な損失を与えているし、これから数十年間与え続ける
 ことは明白です。その意味では一部手遅れかも知れませんが、一刻も早い改善を求めます。会社にも明
 確なビジョンを持って社会的責任の一端を果たして欲しいと思います。

A) 全くそのとおりだと思います。ところで、結局早期退職制度が実施されてしまったら、我々はどういう点
 に気をつけたらいいと思いますか。

C) いちばん注意するのは退職勧奨でしょう。今回も必ずあるに違いありません。もし退職勧奨に遭ってし
 まったら、労働組合員であれば迷わず労組に相談すべきです。管理職は社内に相談先がありませんか
 ら、個人加入可能な労働組合が受け皿になるべきでしょう。

D) そうですね。労働組合員にもいろいろ居て、早期退職に賛成の人もいるでしょうが、辞めたくない人を
 退職勧奨によって退職に追い込む事については、反対で一致できると思います。だから労組としては、退
 職勧奨はNGという路線は絶対に守らないといけません。

B) 組合員の中には、退職勧奨にも賛成だという人もいるかも知れませんよ。

D) 仲間の組合員が退職勧奨を受けても良いと考える人には、組合員の資格はありません。速やかに脱
 退すべきでしょう。(笑)

B) 原則的な事を言えばその通りです。だけど、2003年に日立超Lから900名弱の人をRTに移籍させた
 時には、同時に早期退職をやりました。この時に会社は、移籍組と退職組を予め峻別していて、しかも移
 籍組の社員には、誰が退職組かをリークしていたらしいのです。退職組のレッテルを貼られた人たちに対
 する同じ職場の移籍組社員の接し方や態度が変わって、そうした日常の雰囲気からも追い込まれて行っ
 たと聞いています。

A) 今のお話は、まさに指名解雇の問題そのものです。誰を退職させるのか指定されてしまうと、対象者に
 ならなかった人の心には、この決定が覆って自分が対象になっては困るという心理が働くのです。だから
 弱い人は、会社の決定どおり事が運ぶように、自ら働きかけてしまうのです。この指名解雇の問題には、
 ずっと昔から悩まされ続けています。ただし指名解雇には、その人を選ぶ合理的な理由が必要ですから、
 例えば販売部門でEL出身社員が狙い撃ちされるような非合理的と思える事態があれば、声を上げるべき
 でしょう。
  とにかく、今回は管理職の受ける退職勧奨も心配です。だから管理職向けにも労働組合があるのだとい
 う事を、広く知ってもらう必要があるでしょう。東京管理職ユニオンなどは、その走りです。自ら会社と交渉
 するという気概を持った人にはお勧めです。管理職ユニオンは、関西東海にもあります。地方拠点で不
 当な扱いがあれば、最寄のユニオンに相談するのが良いでしょう。我々には電機ユニオンがあり、これも
 東京、神奈川、関西に拠点がありますが、こちらには団体交渉のプロが何人も居ますから、会社との談判
 を任せたいという人には向いているでしょう。


− まとめ −

A) では、本日の議論を私の方でまとめたいと思います。
  まず、今回の早期退職制度には、100日プロジェクトに付随して出てきながら、目的に人員構成のスリム
 化という要素が含まれており、今後も反復して実行されそうな気配があります。もしそうであれば、これは会
 社のいびつな年齢構成との関係で論じるべきものであり、長期的な視野にたった施策が明確でなければな
 りません。根拠があいまいなまま認めてはいけないでしょう。当然、「100日プロジェクトの一環である」のよ
 うな、いいかげんな理屈で押し切られてはいけないでしょう。
   また、仮に今回あくまで単発的に実施するのだとしても、早期退職自体に約200億円の大金が必要と想
 定されるのですから、これを他のR&Dなどに使うという道もあるはずです。経営体力の強化というのが単純
 な人件費削減策で論じられる事のないよう、特に労働組合には、しっかりした経営のチェックが求められると
 思います。それと同時に、職場意見を聞き、全組合員に見える形で集約する必要があります。
   それから、もし早期退職制度が実行されれば、前回の時もそうだった様に、必ず退職勧奨があると考え
 られます。今回は、前回よりもっと厳しい事態になると考えておいた方がいいでしょう。もし退職勧奨を受け
 てしまったら、労働組合員は、迷わず労組に相談に行くべきですし、管理職は外部の個人加入可能な労働
 組合を頼るのが一番間違いないと思います。
   本日はお忙しいなか、お集まりいただき有難うございました。