ルネサス懇、早期退職制度を語り合う。

− 面談を受ける人の気持ちは −

− 面談を受ける人の気持ちは −

C) さっきも言いましたが、私は販売部門やスタッフ部門などが心配です。ここは人員がだぶついていると
 見なされているだけに、早期退職のターゲットになりやすいのではないかと思っています。さっき、職場の
 意見として早期退職制度に賛成と言う意見もあると聞きました。嫌な気持ちになりますね。技術系の方は
 あまりご存知無いのかも知れませんが、販売部門の社員は、これでも会社の最前線で仕事をしているの
 ですよ。顧客からは無理な要求もあれば、理不尽な理屈を言われたり、嫌がらせとしか思えないような応
 対をされる事もあります。技術系の方の中には、そうした矢面に立たず、会社の涼しいオフィスでぬくぬく
 と仕事をしてながら、販売からの相談への対応が悪かったり、遅かったりする人が結構大勢いるんじゃな
 いでしょうか。今、そういう人達から早期退職制度賛成なんて言われているとしたら怒り心頭ですよ。

B) じゃあ、そういう技術の人を、いっそ特約店に異動させますか。会社の言うフロントライン強化のために
 は技術の力も必要でしょうし、そういう人なら一生懸命やるかも知れませんよ。

A) いえ、逆ですよ。そういう事を言う人も、本当は不安なんです。自分の活躍できる場所が狭いことを知
 っているから、会社が壊れることを人一倍恐れているのです。だから、もし早期退職をやるべきと言ってい
 るのが、今回対象外となる40歳未満の人であるとするならば、もし今回認めれば、あなたが40歳を過ぎ
 た頃には恒例行事化しているかも知れませんよと教えてあげるのです。

D) 私は前回の会談で、工場労働者へのリスペクトが無くなったと言いました。しかし今の話によれば、販
 売部門へのリスペクトも無くなったのでしょうか。そう考えてみると、スタッフ部門に対しても、あるいは事
 務職に対しても、同様にリスペクトが無くなったような気がします。

B) 技術の人間だってリスペクトされていませんよ。考えてみれば経営トップも労働組合も、どこまでリスペ
 クトされているか怪しいです。お互いが認め合わない会社だったのでしょうか。何でこうなってしまったん
 でしょうね。

C) 心理面で悪い相乗効果が生まれているのだと思いますよ。今は、人件費を固定費と呼び、減らすべき
 ものだと強調していますよね。業務効率だの費用対効果だのといわれれば、仕事の出来ない社員は付加
 価値の付かない固定費だという事になってしまいます。そういう者は排除しろと。今回の早期退職なども、
 将にその例ですよね。だからみんな自分が排除の対象になっては困るんです。あなたは違いますよと言っ
 てもらえる人はまだ余裕があるでしょう。でもお互いスキあらば、この部門が要らない、この人達が余分だ
 という話をするから、誰かの悪口を言っていないと不安なんだと思います。そういう状況だから、誰からも
 認められないし、誰かを認められないのではないかと。部門レベルでも閉鎖的で、セクト主義のようなもの
 も生まれていますね。

A) お互いがお互いを認め合えないのであれば、いきおい会社から認められるかどうかが重要になってき
 ますね。会社から必要ないと言われたり、これまでの働きや実績を評価されないと激しく傷つくのも、こうし
 た事情が背景にありそうです。

D) 仕事を通じてしか自分の価値を語れないと言うのも寂しいですね。なんで「俺は仕事はできん。だから
 みんなよろしく。」くらいの居直りができないのだろう。昔はそういう人が課に1人くらいは居ましたよ。

B) トヨタ式のムダ取りの発想が席巻していますからね。そういう人もムダなのでしょう。人間をムダ扱いす
 る事については、さすがに私も反対です。本末転倒ですよ。

C) ムダだと思っていた人が居なくなって困ったというのも、過去のリストラの経験と教訓ではないかと思い
 ますよ。どんな人でも、居なくなると職場では困るものです。それと、技術部門の人は、事務系の人を減ら
 せば固定費を削減できると思うのかも知れませんが、過去はそれをやったために、技術者が事務の仕事
 を肩代わりしなくてはならなくなり、生産性が落ちたのではないかと私は思っています。

D) 同感です。例を上げると、2001年の大リストラの前後には、女性の事務職をだいぶ辞めさせて、派遣
 に置き換えて行きました。この時に生産系のシステム入力の仕事していた女性が一気に辞めてしまって、
 残った人は誰も入力の仕方が分からず、その後遺症が今も癒えていないと言います。しかも話を聞いてみ
 ると、辞めた側も辞めさせた側も、会社の方針に激しく憤っていて、どうも確信犯だった可能性があるので
 す。ああ、そういう抵抗の仕方もあるのだなと思いました。

A) さて、どういう形式で面談が行われるのかについても、注意が必要ですね。退職勧奨面談については、
 かつて日本IBMがマニュアルを作成しました。お手元の資料をご覧下さい。これによると、面談者を3つの
 グループに分けて、それぞれ面談内容を変えるようになっています。1番目が「残留者」と呼ばれるグルー
 プで、「厳しさを認識させ、今後の活躍を期待する」と書かれています。2番目が「本人選択」と言うグループ
 で、「厳しさを認識させ、本人の選択に委ねる」とされていますね。そして3番目が「退職候補者」です。この
 グループが受ける退職勧奨の言葉の例というのが書かれています。まさに先ほど報告のあった前回のEL
 の例と重なってきますね。

D) そうなんです。それで、ターゲットになって退職勧奨に遭った人は、面談に呼ばれた段階からびくびくし
 てしまうらしいです。まだ上司が何も言わないうちから、「私が早期退職に応募した方が良いのでしょうか」
 とか、しゃべってしまう。

C) 今回も40歳以上全員が対象ですから、圧倒的多数は「残留者」グループです。会社からは事務的な説
 明があるだけで、「これからも頑張って下さい」で終わるはずです。だからこの人達は、退職勧奨に遭う人
 達の事まで、なかなか想像が及ばないと考えられます。

B) 会社が全員面談をする事には、そういう意味もあったのでしょうか。かえって無関心にさせることが出来
 るという。