ルネサス懇、早期退職制度を語り合う。

− 職場の反応 −

− 職場の反応 −

A) 職場の反応についてはいかがでしょうか。

C) まず、またやるのかと言う反応がありました。つい2年前にやったとき、労働組合はもう2度とやらせな
 いと言っていたのです。それがたったの2年でまた話が出てくるのですから、一体何なんだと言う怒りの
 反応です。これは50代の方々が特に激しい反応をしています。

D) 面談の実施についても、かなり心配されています。面談だけはやめてくれと言う声があります。年配の
 人を中心にそういう声は強いですね。それから若い人の関心が低い様に思います。これは前回もそうで
 した。対象年齢が40歳以上とされていますから、自分たちには関係ないと思っているのかも知れません。

A) 他にはありませんか。

C) 30代の人の中に、職場の雰囲気が悪くなって温度を下げてしまわないか心配だという声がありました。
 100日プロジェクトの施策をこれから実行しようとしているときに、水をかけるような施策を導入して良いの
 かという意見です。まっとうな意見だと思います。

B) 逆に「もういいや」と言う雰囲気の人も居ます。年配の方で、ニューライフプランよりも割が良いから、今
 回取得しようかとか言っていました。

A) 確かにニューライフプランよりは、プレミアムの金額が高いですね。しかし、前回のRTの早期退職では、
 年収の2.5年分を支給しました。今回は月収の40ヶ月分です。何が違うかと言えば、月収換算だと一時
 金分を含まない点です。年収2.5年分だった前回の方が、金額が多いのです。

C) そうでしたか。ELの前回の早期退職のプレミアムは、今回よりもずっと少なかったです。45歳から50
 歳が最高の34ヶ月分で、その前後の年齢はそれよりも低かったのです。今回57歳でも40ヶ月出ますよ
 ね。2年前に55歳でELを退職した人は24ヶ月でした。違いすぎますね。RTのニューライフプランに相当
 するセカンドキャリア制度ともかなり開きがあるし、割が良いからと言って辞める人はELの方が多いかも
 知れませんね。

B) 日立超Lなどは扱いとしてはルネサスの系列ではないので、今回の早期退職の対象外だと思います
 が、100日プロジェクトとしてはむしろ外注費削減の方のターゲットですね。職場に日立超Lから来ている
 テスト設計者が居ますけど、自分はもう切られるんじゃないかと心配していました。切られてもすぐに退職
 にはなりませんが、1年遅れくらいで日立超Lでも早期退職をやるんじゃないかと不安なようです。

A) 早期退職に賛成だと言う意見は出ていないでしょうか。

C) あります。固定費削減を根拠にする意見が出ていますね。人件費抑制のためにやるべきだと。

B) 若い人からは、この際だから中高年を減らして、もっと若者の雇用を増やせという意見もあります。

D) 各論反対みたいな意見も出ていますよ。早期退職は人件費の高い上の方の人達から実施すべきで、
 給料の安い人達をたくさん退職させても効果は薄いというものです。

A) 賛成意見は、いずれも自分たち以外の集団がターゲットにされる事を前提にしているようですね。しか
 し中高年を減らせば若者の雇用が増えるだろうなどと考えるのは甘いです。ここ20年くらいの動向を見
 れば、リストラされた中高年が非正規雇用化していて、若者と競合しているのです。労働市場そのものが、
 もっと厳しい方向に向かうのだという現実を見なくてはいけません。他には何か意見は出ていないでしょう
 か。

B) 贅沢だという意見もあります。給料40ヶ月分も貰える訳でしょう。世間相場に比べてずっといいじゃな
 いかと。文句言っていると、その内に何も貰えなくなっちゃうぞみたいな。何だか「上から目線」ですね。
  それから、若手技術者からは、40歳以上という制限を取り払って、しかもいつでも取得できる常設制度
 にして欲しいという意見もありました。転職支援制度にして欲しいということです。

A) 今回の早期退職は、「会社が認めた者だけ」取得を許可するという条項がついています。優秀な技術
 者に辞めてもらっては困るので、転職支援制度などは絶対に作られないでしょう。

C) 賛成意見という訳ではありませんが、やむなく取得するかも知れないと言う人がいます。もともと親と
 2人暮らしで、しかも介護で大変な思いをしていて、今でも限界に近いんです。これから職場がどうなるか
 分からないし、勤務地が変わったらもう耐えられないから、お金の貰えるこの機会に退職した方が、まだ
 良いのではないかと言っています。でも退職しても介護は続くし、収入はないし、再就職のあてもありませ
 ん。どうしたら良いか分からず、気力を無くしつつある様に見えて心配しています。

A) 退職は出来るだけ思い止まるべきでしょう。介護の問題は、早期退職制度の一時金で解決すべきで
 はありません。育児介護休業法という法律をご存知でしょうか。この法律の26条に従えば、その方の場
 合、介護が継続できないような転勤は配慮される可能性があります。転勤に関する判例は、労働者側に
 厳しいものが多いのですが、2人暮らしで他に頼るあてが無いとなれば、可能性は十分にあると思います
 よ。会社には介護休職制度も、短時間勤務制度もあるのです。まずは職場の上司に事情を説明するよう
 促し、何かあったら労働組合に相談するように教えると良いでしょう。

D) 介護のほかに育児関係でも大変な人達がいます。職場が他の事業所に移ると、やって行けないと言う
 人も必ずいるはずです。その人達がやむなく取得すると言う事態は避けたいです。勤務地に関する配慮が
 欲しいですね。

A) 2007年4月より施行された改正男女雇用機会均等法では、間接差別を禁止することを新たに定めまし
 た。これは何かと言うと、採用や昇進にあたって、転勤できるか否か、転勤したかどうかを判断基準に据え
 る事などを禁じたものです。なぜなら、育児に携わる女性などは、簡単に転勤できないのは普通であって、
 「みんな平等に」転勤させることが、不利に作用するからです。これを間接差別としています。
  職場丸ごと事業所を移る場合には、この間接差別という概念も及びにくいのですが、本来考慮されなけれ
 ばならないと私は考えます。ちなみに異動出来ないことを理由に退職勧奨をすることは、直接差別として、
 やはり禁止の対象になっています。

C) 経営責任を追及する声も聞こえ始めています。そもそもこの3月期の決算では、RTもELも大赤字を出
 しました。その経営責任はどうなるのかというものです。ある意味厳しい指摘ですよ。と言いますのは、200
 8年にELが早期退職をやったときにも、経営責任を追及する声はあったのです。そのとき職場から上がっ
 た声は、「1回目を2001年にやって数年しか経っていないではないか。それでまた早期退職をやるような
 事態になって、経営の責任はどうなるのか?」と言うものでした。ところが当時の経営は「2001年の時とは
 会社も経営者も違う」と居直りの様な言い訳をしたと聞きました。じゃあ今回は何なのか。前回からたった
 2年しか経っていないし、経営者も多くは代わっていないではないかと言う突っ込みです。統合したからと
 言って、大赤字を出した経営責任が消える訳ではないですからね。

D) 確かに前回早期退職をやったときは、どうしようも無いほどの行き詰った事情があり、仕方なくやるのだ
 と言う雰囲気がありました。いえ、雰囲気というよりも、労働組合の答弁自体が事実そうだったと思います。
 今回は、そこまで切羽詰った状況ではないですよね。なのに早期退職の話が涼しい顔をして出てきました。
 背筋の寒くなるような冷淡な雰囲気を感じますよ。

A) 会社が早期退職をする根拠は、経営体質の強化でしょう。しかし早期退職にもお金がかかります。今回
 のプレミアムですと、予定通り人数が集まったら200億円くらい必要かも知れません。今はR&D費などが
 大幅に削られていますね。もしこのお金をリストラではなく新しい技術や、本当に必要な設備や、インフラの
 整備に使ったらどうでしょうか。それはそれで何らかの体質強化に繋がる可能性もあるのではないでしょう
 か。