ルネサス懇、育児施策を語り合う。

− 育児短時間勤務 −

                                 参加者 : A委員(ルネサステクノロジ出身:座長)
                                        B委員(ルネサステクノロジ出身)
                                        C委員(NECエレクトロニクス出身)
                                        D委員(NECエレクトロニクス出身)
                                         E氏 (日立系会社勤務)
                                         F氏 (NEC出身)


A) では次に、本日のメインテーマである育児関連施策について話し合いたいと思います。今週末に、人
 事処遇制度一元化の情報が労働組合から出されましたね。本当はこれら全てについて議論したいとこ
 ろなのですが、何分にも資料が膨大で、昨日の今日ではすべてに目を通す事はできませんので、今日
 は予定通り育児施策に絞って議論したいと思います。
  電機懇では6月末に、女性部と青年部が合同の学習会を開催しています。その学習テーマが、「第三
 次男女共同参画基本計画」でした。今日は、学習会を主催された女性部から、日立系出身のEさんにお
 越しいただき、いろいろとお話をお伺いしたいと思います。また、NEC出身で数年前に定年退職されまし
 たFさんも、お招きしています。我々男性陣だけでは、十分な話し合いは出来ないと思いますので、今日
 は女性のお二人を中心に議論を進めていきたいと思います。では、よろしくお願いいたします。

E) みなさん、こんにちは。私は神奈川県にある日立系の会社で働いています。今日は育児関係のこと
 でお話をされるとの事でしたので、喜んで参加させて頂きました。楽しい話し合いが出来るといいですね。

F) 今日は初めてお会いする方もいらっしゃいますね。NECを2年前に退職しましたFと申します。在勤中
 は、職場の女性達と「子育ての会」のようなものを作って、いろんなことを話し合ったり、お互いに励まし
 あったりしてきました。職場を離れて少し時間が経っているので、当時の事を思い出しつつ、勘を取り戻
 しながらお話に参加したいと思います。よろしくお願いいたします。


【育児短時間勤務】

A) 女性のお二人には、いきなりで申し訳ないのですが、まずはルネサスエレクトロニクス社の育児関連
 施策について、それぞれ個別に議論したいと思っていますが、よろしいでしょうか。統合会社における人
 事制度の一元化で、これらの施策も見直しされていますが、出てきた情報によれば、これまでの施策と
 あまり変化が無いようにも見えます。もともとRTとELの制度が、似ていたからとも見なせますが、特に発
 展的検討が見られないとも言えます。

D) 更なる向上は、春闘で要求しろってことでしょう。

A) そうですね。春闘で要求するにしても、どのような理念を背景に、何を要求するのかを検討しないとい
 けないでしょう。ではまず、育児短時間勤務制度から行きましょうか。
  制度一元化案を簡単に説明します。まず取得できる短縮時間は現行通り30分刻みで、定時間の7時
 間45分より30分短縮の7時間15分から、2時間短縮の5時間45分まで、4段階の選択になるようです
 ね。RTは7時間30分から6時間までの短縮でしたから、これはELの制度に合わせましたね。

C) 30分刻みで取得できるのが特長でしたからね。ここはとりあえず良いと思います。この施策で一番注
 目されているのは、取得できる子供の学年です。新しい制度は、原則として就学前までで、会社が認め
 れば小学校3年生までは取得可能です。これは従来のELやRTの制度と同じですね。だけど職場では、
 高学年まで取得を認めて欲しいと言う意見を聞きます。

D) その意見は、私も職場の女性から聞いています。小学校6年生でも十分では無いと言っていましたよ。
 中学生だって、部活動を終えて18時台には家に帰って来るし、お腹を空かせているから、それまでに晩
 御飯の用意をしようと思うと、遅くとも17時半には家にいないときついし、そのためには30分か1時間の
 時短勤務が必要という話でした。

E) 電機の大手では小学校卒業までを対象とする会社が増えてきましたね。日立もそうです。

D) ああ、それでELの職場には、RTは「6年生まで時短勤務可能らしい」と言う噂があるのですね。実は
 RTではなくて、日立の制度だったのですね。

C) それと今回「おやっ」と思ったのは、妊娠短時間勤務制度が入っていることです。こんな制度あっただ
 ろうかと思って、ELの就業規則を読み直してみましたが、該当する記述は見当たりませんでした。

B) 妊娠短時間勤務制度は、RTでは従来からあった様に思います。

C) ではRTに合わせたのですね。一昨年、ELでフレックスを休止した年には、通勤電車が満員で流産し
 ないか心配だという話も聞きました。通勤の負担緩和の意味からも、妊娠短時間勤務制度はあって良い
 と思います。

B) 私もそう思います。一番流産しやすい時期は、まだお腹が小さいので、ぱっと見では妊娠しているって
 判らないのですよね。だから電車に乗っていても席を譲って貰えないのが普通で、空いた席に座るときに
 は、周囲から「若いのに何で」と思われているのではないかと、余計に気を使うこともあると聞きます。今
 は「マタニティマーク」というのもあるのですが、付けていても誰も気付かなかったり、かえって反感を買う
 こともあるようです。

F) 知らない人は、例え妊婦であっても、お腹の小さい内は大変じゃないだろうって思うのかも知れません
 ね。マタニティマークなんて、それこそ政府の宣伝が足りないと思います。3月の地震が起きたときに、公
 共広告機構のCMがいっぱい流れましたけど、そういう時にこそ、マタニティマークの宣伝を徹底的にや
 れば良かったのではないでしょうか。

C) とにかく、短時間勤務制度については、おおむねELとRTの制度の現状を踏襲した感じですね。
  とはいえ、収入が大幅に減るという問題は解消されているでしょうか。ELのVワーク(裁量労働)の場合、
 一時金には「Vワーク加算」と言って20万円くらいの加算金があるのですが、短時間勤務者はVワークか
 ら外れるのです。だから裁量労働者が短時間勤務を取得すると、まずこのVワーク加算が無くなって、減っ
 た一時金から更に時短分に見合った減額があるから、一時金の減り方が大きいんですよ。

F) NECはそうでしたね。Vワークの主任は時短勤務による年収の落ち込みが大きくて、とてもがっかりす
 ると言う話を私も聞きました。一方で事務職はもともと年収が少ないところへ更に減額になるので、やっぱ
 りがっかりすると言いますね。
  子供を育てながら働くのって大変なんですよ。独身時代は、時には残業して頑張って働いていた人が、
 子供が生まれて時短勤務を始めると、今の方がずっと大変なのに、もらえる給料は減ってしまって、落ち
 込んじゃうんです。収入は減るし、保育園のお金もかかって支出は増えるから、何のためにこんなに苦労
 しているのかって思うのよね。男性の方は、労働時間が短いのだから給料が少ないのは当然だと考える
 かも知れませんけどね。

E) 男性の中には、時短勤務者は労働時間が短くて楽だと思っている人もいるんじゃないかしら。そういう
 偏見が追い討ちをかけるのだと思います。

A) 具体的に、どのくらい大変なのでしょうか。

F) 核家族で子供一人の場合を想定すると、朝は他の家族よりも早く起きて朝ごはんを作って、子供を保
 育園に連れて行ってから出社して、夕方は早めに退社して子供を迎えに行き、時には買い物をして帰り、
 晩御飯を作って、子供に食べさせて、それから子供をお風呂に入れて、歯を磨いて寝かしつけて、片付け
 や洗濯を干したり畳んだりアイロンかけたり、掃除や部屋の片付けをして、旦那さんが帰ってきたらご飯の
 支度をして、食器を洗って片付けていると、もう夜中になりますね。だから男性で月に50から70時間残
 業をしているのと、同じくらいの負担なのではないかしら。子供が複数いると、もっと大変です。夫婦の役
 割分担にもよりますけど、これで土日も旦那さんが家事や育児を手伝ってくれないと、残業100時間分を
 超える負担になるケースも普通にあると思います。

C) 男性の場合、平日は残業で大変でも、休日に釣りやゴルフが出来るうちは、まだ恵まれているというこ
 とですね。しかも貰うギャラは2倍や3倍。

F) 落ち込みます。

E) そもそも、なぜ家事や育児には賃金が払われないのでしょうか。「会社の仕事でないから当たり前」で
 済ますのではなくて、働く者の実感から「そもそも」を考えていくことが、育児関係を考えるうえで大事だと
 思いますよ。

A) 今日集まった男性陣4名は、みんな共働きで子供も居ますから、そのあたりの偏見は少ない方ではな
 いかと思いますよ。
  時短勤務に関わる課題は多いにしても、会社制度としての育児短時間勤務としては、今回の提案はま
 あまあで、後は如何にして取得可能年数を延ばして行けるかでしょうね。育児に携わる者の所得補償の
 問題は、特に母子家庭や父子家庭などのように、貧困率の高い家庭をどうするかと言う問題と合わせて、
 国策として取り組んでいくテーマだと思います。

F) 短時間勤務にも、育児休職と同じように所得補償があるべきだと思います。時短で減給される分の何
 割かを、雇用保険などで補填できないものでしょうか。子供手当も良いですが、私は時短勤務による収
 入差額補償を望みます。

E) その子供手当も、児童手当に代わってしまいそうですしね。