ルネサス懇、制度一元化を語り合う。

− 休暇 −

【休暇】

A) 次は、各種休暇制度についてです。最初は年次有給休暇です。新制度は区分Rの現行制度と同じ
 で、年間に24日の有給休暇が付与されます。現行の区分Eは22日ですから、区分Eにとっては、2日
 の休暇増になりますね。

B) まさか減らす訳にも行かないから、これは当然ですね。

D) 労働基準法39条では20日とされていますから、区分Eの制度はそれよりも2日積上げていたので
 すが。2日積上げるのだって結構年月が掛かったのではないのかなあ。統合で、あっさり2日増えちゃ
 いましたね。

A) 国内の他社と比較するのであれば、ルネサスの付与日数は見劣りしないでしょう。一応、諸外国の
 付与日数についても言及しますと、アメリカをはじめ、アングロサクソン系の国は付与日数が少ない傾
 向にあります。オーストラリアとか、ニュージーランドとか、カナダが該当しますね。本家イギリスは、若干
 多くて平均26日です。これらの国は新自由主義路線を行く国でもあります。他のヨーロッパの各国は、
 だいたい30日前後の付与日数になっていますが、”バカンス”という言葉を持つフランスは、何と年間
 38日も有給休暇があります。

B) 上を見れば、キリがないですね。

D) キリがないと言うより、日本の付与日数が、まだまだ少ないのではないでしょうか。

A) 付与日数も重要ですが、消化率の方はもっと重要だと思います。日本の消化率は際立って低く、付
 与日数の半分を捨てているとのデータがあります。
  欧米諸国では、有給休暇は当然の権利との考え方がありますが、日本にはなかなか定着していない
 ようですし、現実的に取りづらい要因もあります。取れない理由としては、仕事が忙しいというのが多く、
 他にも病気等のために残しておくというのも多いです。
  欧米諸国には、一般の年次有給休暇とは別枠で病気休暇を設定しています。日本は、病気になって
 も年次有給休暇を取って休まないといけないところが異なるのです。そうしたリスクに備えないといけな
 ければ、何か取らざるを得ない理由が無い限り、付与日数いっぱいの取得は難しいのではないでしょう
 か。
  私は、今後の休暇を巡る攻防としては、この病気休暇をいかに早く日本の企業に導入させるかがポイ
 ントになると考えています。今後、高齢化社会への対応として、雇用延長や定年延長などで高齢者の雇
 用が当たり前になっていく事は確かでしょう。突発的な病気や慢性的な疾患と付き合って、働き続けて
 いくための諸制度の整備が、ますます重要と考えます。

C) 新制度のファミリーサポート休暇は、自分の病気にも使えますが、病気休暇ではないですね。

A) ファミリーサポート休暇には、年5日の付与日数制限があるので、病気休暇とはいえません。病気休
 暇とは、基本は治癒するまでの日数だけ、有給で休める制度です。一応期間が設けてあって、その期
 間を超えると休職になります。日本の多くの企業では、年次有給休暇がなくなれば休職ですからね。

B) 仕事が忙しくて休暇が取れないのは、実感としてよく分かります。何か理由が無いと私も休暇を取り
 ません。
  私の場合、仮に何も用事の無い日に休暇と取ると、まず子供の朝と夕方の保育園の送り迎えが私の
 仕事になります。そうすると、1日の長さがそこで決まってしまうのですよ。しかもその間に洗濯や掃除
 や、布団干しをやらないといけないから、正味で使える時間が5〜6時間なんですよね。会社を1日休
 むと、仕事は10時間分遅れていくのに、自由になる時間はその半分。おまけに翌日以降は、休んだ分
 の仕事を取り返さないといけないから、その大変さを思うと、別に休まなくてもいいやって思ってしまい
 ます。

D) 自分が休んでいるときにも、仕事が進めば良いのですけどね。靴屋の小人みないなのが私にいれ
 ばねえ。

B) 周りに完全にフォローされてしまったら、それはそれでガクッときますけどね。

C) 周りが休まないから、休暇を取りづらいというのもありますよね。私の年代などは、休暇を取らないこ
 とが美徳という発想もありますよ。熱があっても会社に来るとか。

B) 冬の会議のときに、ずっとゴホンゴホンと咳をしている管理職が対面に座っていました。その日の夜
 に私も熱が出て、翌日は朝から38度8分の高熱だったので病院で診察してもらったら、A型のインフル
 エンザでした。同じ日に、一緒に会議に出た同僚も休んでいました。そういうの、無性に腹が立つので
 すよね。

C) 裏を返せば、病気であっさり休んで、軟弱だというレッテルを貼られたくないのですよ。そういう風潮
 があるからこそ、無理をしてしまうのです。

B) だけど、インフルエンザで会社に来て、職場でうつすなんて、罰金物ですよ。

A) 気持ちは解りますが、その場合には、その管理職に本当のことを話すのが一番だと思います。体調
 が悪いときには、どうぞ休んでくださいと言ってもいいでしょう。そのほうが職場も助かりますと。 休み
 やすい職場を、そうやって少しずつ作っていけたら良いと思いませんか。

B) かえって怒鳴られそうな気が・・・・。ところで、病気休暇はいいのですけど、有給休暇にも次年度へ
 の繰越がありますから、積立があれば、その年は24日まるまる使っても、まだ最大24日の備えがあり
 ますよね。

A) 健康な人であれば、それで十分かも知れません。一体何日休暇を付与すれば良いのかとの批判も
 あるでしょう。しかし備えるという発想自体が、休暇を保険として持っていたいという事ですからね。私は
 保険としての休暇を別枠で持っていた方が良いと思います。

B) ですから、保険としての休暇は私も否定はしませんけど、病気のために取っておくという回答は、単
 に付与日数が足りないという意味ではなくて、むしろ病気で休むかも知れないのに、それ以外の理由
 で休んでしまったら、いざ病気になったときに休み過ぎにならないか不安とか、そういう意味ではないの
 かと思います。私自身がそうですから。
  私の場合、自分だけでなく子供が病気のために休む可能性があるから、特に冬場などは、他の理由
 で休暇を取らないようにしているのです。

D) 結局それは、広義の意味で忙しいから取りにくいという事でしょう。連休とか、集中的に休暇を使うよ
 うな事は、やはり抵抗があると。

C) 確かに集中的には取りにくいから、毎月1日ずつ計画的に取得しましょうという活動も昔からありま
 すね。これは、休暇日数を使い切る人には迷惑な話です。前年からの繰越日数の半分を、計画的取
 得の対象にするとか、そういうルールにしたら面白いと思うのですけどね。

A) 年次有給休暇が取得できない理由は深そうですから、今日はこの辺にしておきましょう。次は年休
 の一斉行使についてです。取り上げるまでもないと思っていたのですが、区分Eの方では、何か言いた
 いことがあるようですね。

D) 区分Eの夏休みは選択式だったので、これがどうなるのかと思いました。区分Eでは、夏休みがAパ
 ターン、Bパターン、Zパターンの3種類あります。Aパターンが8月の第1週、Bパターンが8月の第2週
 で、Zパターンがそれ以外の7月から9月のどこかで任意に取得する5連休です。
  実はこの制度が出来たのが、つい10年くらい前です。それ以前のNECは、3年周期で夏休みが変
 わりました。8月第一週の休みが2年続いたあとで、第2週の休みの年が1年ありました。夏の一番暑
 いのは土用の頃だし、お盆と重ならないので混まないから、第一週の休みは嬉しかったですね。当時
 の私は、NECはハイカラな会社だから、夏休みも粋だと思ったものです。あっ、ハイカラって死語ですか。

B) 選択制というのは面白いですね。フレキシビリティがあって良いと思います。区分Eの選択制を残す
 べきということですね。

D) いや、そうでもないです。選択制が始まってから、夏休みを取れない人が出てきています。もともと
 選択制を敷いた背景は、工場が夏休み中もフル稼働だったので、事業部も半稼働にして、滞りなく生
 産を継続する目的だったと思います。従業員の便宜を第一に図った訳ではないですよ。
  選択制以前の夏休みは、用力も落としてしまっていたので、事業所全体が休みでした。休日出勤しよ
 うにも、出来なかったのです。選択制になってからは、事業所が動いているから、出勤すれば仕事が
 できちゃうんですよね。特に、顧客が稼働していたりとか、夏休み明け納期の仕事を抱えていたりとか、
 休みたくても休めない人が出てきてしまいます。そういう人のためにZパターンを用意しているわけです
 が、みんなが休んでいないときに、一人だけ1週間休むのも、きついですよ。出てきたときには、1週間
 分仕事が遅れていますからね。溜まったメールを読むだけでも、1日では終わらないのではないでしょ
 うか。
  今年の夏、電力削減のために一斉休暇取得日を3日設けたでしょう。あれは、職場ではむしろ歓迎さ
 れていました。普段休めないから、休暇が取れて嬉しいという声が多かったですよ。

C) 本当に自由に取得できるのであれば、選択制の方が望ましいと言えますが、取れない人の事も考え
 ると、固定性の方が、今は合っているかも知れませんね。
  だいたい、労働基準法における一斉付与自体が、休暇の取得促進を目的にしていますよね。まずは
 取得できることが優先ではないかと思います。

A) それも一理ありますが、労働基準法39条による休暇の一斉付与と言うのは、労働者の時季指定権
 と使用者の時季変更権に強い制限を加えることが、かつて三菱重工長崎造船所の事件における94年
 の福岡高裁の判決でも確認されています。この判決に鑑みても、取得できないということ事態が、非常
 に問題なのですよ。忙しかったから取れなかったでは済みません。
  いかに選択制を敷こうとも、必ず取得させなければならないのだとの意識が、管理職に無いのであれ
 ば、そこを徹底すべきでしょう。

C) 確かに法を厳格に適用すれば、夏休みの取得期間である9月末が来た時点で、必ず取得していな
 いといけない訳だから、未取得の人は、自動的に9月最終週の連続5日が取得日になるし、本人が休
 もうが出勤しようが、会社は休暇扱いにして、休暇付与日数を5日削ってしてしまっても良いのですよね。

B) そこまでやっても、まだ休まずに出勤する人が出てくるでしょうか。「俺は、必要とあらば、自腹を切っ
 て夏休みを返上しても働くプロ」とか何とか、ナルシシズムに浸ったりして。

A) 続いてリフレッシュ休暇について議論しましょう。これは区分Rと区分Eの制度の折衷になっています
 ね。5年ごとに5日という点が区分Rの制度と同じで、勤続年数ではなく年齢で付与という点が区分Eの
 制度と同じです。 区分Rでは、勤続年数でなくなるのは不公平ではないかとの声がありました。

C) そういう理屈も有り得ますよね。中途採用で29歳で入社したら、2年後にはリフレッシュ休暇の対象
 になるでしょう。高卒で18歳から勤めている人は、勤続13年目でやっとですから、かなり不公平な感じ
 がしますよ。

A) これ以外の制度もそうですが、長年働いた者に対する慰労の要素が希薄になってきているように
 思えます。

C) 区分Eも以前は勤続年数で付与していました。数年前に年齢による付与に変えたのですよ。だけど、
 30歳で5日、40歳で7日、50歳で10日と傾斜をつけているのは、慰労の意味を残しているのだと思
 います。それに慰労と言えば、50歳でキャリアデザイン支援金10万円が貰えるのですが、新制度で
 は廃止されますね。

D) 私みたいに、もう少しで50歳の年代には、ちょっとショックですよ。10万円と10日の休みと、どちら
 が無くなってショックかと言えば、休みの方ですね。会社に入ってこれまで、半月まるごと休める機会っ
 て、結婚したとき以外ありませんでしたからね。これが5日になってしまうと、夏休みと変わらないじゃな
 いですか。55歳でも5日取れるから、トータルの日数は変わっていませんよって言われるけど、そうじゃ
 ないですよ。連続して休めるから貴重なんですよ。

B) これまでは、実質「ごくろうさん休暇」だった制度が、名実ともに、次の業務に向けて心身の疲労を
 回復し、リフレッシュするための休暇に変わったと思えば、それはそれで納得できるような気もします。
  だけど当面は、50歳の時点で10日の取得も可能にして、代わりに55歳は無しにするという選択肢
 を残すような、移行措置があってもいいかなあと思います。

A) 次にファミリーサポート休暇は如何でしょうか。前回、育児施策について議論したときには、現行区
 分Rの「家族看護休暇」と「介護休暇」の2つは現状維持にして、ファミリーサポート休暇とは別にすべき
 ではないかとの見解になりました。何か付け足す事はありますか。

C) 原型は区分Eのファミリーフレンドリー休暇なのですが、現状は、ファミリーフレンドリー休暇の取得
 用件に該当するような事でも、年次有給休暇を使っている場合が多いと思います。
  年次有給休暇であれば、用件に関わらず確証が要らないから、申請が楽なんですよ。どうせ年休だっ
 て取得しきれずに余るから、そっちを先に使ってしまうのだと思います。ここでもやはり、休暇自体が取
 りにくいという問題があると思います。

B) 私は今の区分Rの制度の方が良いと思います。必要なときに必要な休暇が取れるように、家族看
 護休暇と介護休暇は別になっているべきだと思うし、区分Rのサポート休暇のように、年休の未消化
 分を繰り入れる要素が欲しかったと思います。繰り入れが5日に満たない人のみ、不足分を付与という
 制度にすれば良かったのではないでしょうか。

A) 他に無ければ、休暇制度は以上として、休職制度についてレビューすることにしましょう。