ルネサス懇、制度一元化を語り合う。

− 健康保険 −


A) 賃金処遇関係の議論で、だいぶ時間を使ってしまいました。外も暗くなってきましたが、今日のもう
 一つのテーマである健康保険の方に話題を移したいと思います。
  現在まで、NECエレクトロニクスグループ出身者は、NEC健保に加入していますが、来年春からは
 ルネサス健保の方に移ることになっています。移行にあたって一番問題となっているのが、法定準備
 金約20億円分の確保ですね。ELグループの社員数分だけルネサス健保の加入者数が増えますので、
 それだけ準備金も増やす必要があります。このお金を、NEC健保から持って来られないために、新た
 に積み立てないといけないと説明されていますね。したがって、その分も健保の料率を上げざるを得な
 いとされています。

B) 法定準備金と言うのは、健康保険の運営がショートしないように、前年の支出の12分の3、つまり
 3ヶ月分の費用を準備金として積み立てなくてはいけないと言う法律に基づくものですね。ELグループ
 分の準備金が約20億円という事は、ELグループの健保財政支出は年間およそ80億円ですか。ルネ
 サス健保が確か約100億円でしたので、人数から見て妥当な感じですね。20億円は嘘ではないみた
 いです。

D) 20億円をNEC健保から持って来られないのは何故なのでしょうかねえ。RUN(No.95)の質疑
 No.48には、法律上できないと書かれていますけど、そこの説明が足りないかなあ。

A) 健康保険組合については、健康保険法の8条から30条で規定されているのですが、ざっと読んだ
 ところ、今回のケースに該当する条文が見当たらないのですよ。健康保険組合の合併とか分割とか事
 業所の増減に関する条文はあるのですが、一部の被保険者が従来の健保を脱退して別の健保に合
 流すると言うケースが想定されていないようです。

C) NECエレクトロニクスを発足したときに、NEC健保から“NECエレクトロニクス健保”を独立させて
 いれば、財政の移行も出来たのではないでしょうか。そして今回のケースは、単なる合併で済んだか
 も知れませんね。独立させたら、それはそれで運営費が余計に掛かりますから、収支的に得だったか
 どうかは分かりませんが。

D) あの当時で健保を独立させると提案されたら、きっと反対されましたよ。余計なコストがかかるとか、
 保養所が利用できなくなるではないかとか。NEC本体から切り離されるのではないかとの、ネガティ
 ブな雰囲気もありましたしね。
  今回20億円を持って来られないのは仕方が無いと諦めますか。しかしそれで料率はどのくらい上が
 るのでしょうか。

B) ELグループの3ヶ月分を3年かけて積み立てるのでしょう。1年で1ヶ月分だから、1ヶ月あたりは
 12分の1ヶ月分ですね。NEC健保の現在の料率が79‰(‰は「パーミル」=1/1000。ここでは標
 準報酬月額の79/1000を表す。)と言うことは、12分の1は6.6‰。ELグループ出身の被保険者の
 数は、ルネサス健保の半分弱ですから、まあ3‰くらいではないでしょうか。労使折半として、労働者
 の負担増は1.5‰、標準報酬月額40万円なら月600円ですね。あくまで概算ですが、一人当たりの
 負担は月あたり数百円程度だと思います。

D) もうひとつ気になるのが、ルネサス健保で受けられるサービスです。会社提案を見ると、NEC健保
 で受けられたサービスが、かなり削られていますね。予防接種の補助も、健保の財政が安定化するま
 では、一旦廃止されるようです。そろそろインフルエンザの予防接種の季節になりましたけど、NEC健
 保だと、70%の補助が受けられるのですよ。1回4000円かかったとして、領収書を提出すれば、7割
 の2800円が戻ってくるのです。子供のいる家庭では助かりますよ。

B) サービスが無くなるのは、健保の財政が苦しいからだと説明されています。保険給付と納付金で全
 体の支出の9割を占めると書いてあるでしょう。新しいルネサス健保の財政規模は、旧RTの100億円
 とELの80億円を足して、180億円くらいになると考えられますよね。だけど、保険給付と納付金の残り
 1割は、たった18億円しかないから、ここから運営費とか、保険事業費として各種サービスの費用を捻
 出しないといけないのではないでしょうか。インフルエンザ予防接種を1万人が受けたら、費用は2800
 万円ですね。これって結構負担だと思いますよ。
  ところで予防接種補助は、医療費として保険給付に含まれるのか、疾病予防として保険事業費に含ま
 れるのか、どちらなのでしょうね。費用の内訳を見たいですよね。

D) 1万人は、ちょっと大きく見積もりすぎのような気がします。予防接種補助があることを知らない人も
 多かったですからね。申請は数千人分だったのではないかと思います。今回の制度一元化で“有名”に
 なってしまいましたけどね。
  それとインフルエンザの予防接種には、病気への予防効果があるわけで、いざ罹ってから診察代や
 薬代をかけるよりも、予防接種代の方が安上がりかも知れません。実際、過去のNEC健保の機関誌
 を見ると、2006年の7月号には、“インフルエンザ・花粉症のために保険給付が前年度比4%増えた”
 なんて書いてあったりします。
  結局のところ、厳しい財政の中で、どこに注力していくのか、何を廃止するのか、それとも料率を上げ
 るのかという選択になるのではないでしょうか。

B) それと、如何に効率的に費用を抑えながら運用していくかですね。ジェネリック医薬品の使用なども、
 その一つですね。私も薬局で聞かれたときには、ジェネリックで良いと答えています。でも実は、ジェネ
 リックとオリジナルの薬品では、微妙に成分が異なることもあると聞きますから、どちらを使用するかは
 個人の判断になるのだと思いますけど。自分の薬はジェネリックで良くとも、子供の分は気になりますね。

C) ジェネリック医薬品の安全性とか、オリジナルと何が異なるのか等は、公的機関がきちんと調べて、
 周知していくべきものと思います。単に「統計上有意差が無いから安全です」ではなくて、何が違ってい
 て、どういう作用が考えられるのか、情報の公開が必要なのではないでしょうか。その上で、健保には、
 そういう公的な情報にアクセスできるようにしてもらいたいと思います。

B) それから、単に費用対効果という考え方で良いのかとの疑問もありますね。今のインフルエンザの
 話でも、たとえ予防接種代の方が罹患したあとの診察代や薬代より高かったとしても、そもそも病気に
 罹らないに越した事は無いでしょう。ルネサス健保は、被保険者のQOL、つまり生活の質の向上を目
 指しているのですから、もっと予防を重視して良いのではないでしょうか。

A) その通りだと思います。健康保険組合は、医療保険組合ではありませんからね。理念を忘れず、積
 極的に健康を維持増進する組織であるべきでしょう。

D) その意味では、ルネサス健保の「家族簡易検診」を廃止すると言うのもどうでしょうか。受診率が1.
 6%と、極めて低いことを廃止の理由にしていますが、本当に必要なのは、受診率を高める努力ではな
 いのでしょうか。
  NEC健保では、今から5,6年前だったと思いますが、40歳以上が毎年受けていた生活習慣病検診
 を2年に1回に減らしました。さらに2年くらい前に、無料だった生活習慣病検診をやめて、有料の癌検
 診に変えました。有料といっても3000円でフルコース受けられるので、制度としては悪くないのですが、
 生活習慣病検診と違うのは、受診の案内を出さないところです。受けるも受けないも、全く個人の意志
 ですから、受診者はかなり減っているのではないかと思います。やはり予防効果という点から疑問が生
 じます。

B) 財政を圧迫している納付金は、どのくらいの割合を占めているのでしょうか。

C) NEC健保のデータでは、保険給付が47.5%に対して、納付金の割合が44.7%と、ほぼ同等です。
 両方合わせたら92.2%にもなります。保険事業費は、わずか3.7%しかありません。納付金の負担が
 とても大きいですね。ルネサス健保も保険事業費はたった4.8%で、金額ベースでは4.6億円となって
 いますね。

A) 納付金と言っているのは、前期高齢者納付金と、後期高齢者支援金ですよ。前期高齢者と言うのは
 65歳から74歳までを指します。ルネサス健保には、これら前期高齢者も加入できる制度がありますが、
 多くの企業の健保や、中小企業向けの「協会けんぽ」などは加入できないのが普通ですから、前期高
 齢者の多くは国民健康保険に加入する事になります。そうなると、現役で働いている世代よりも収入が
 少なくて、かつ医療費の支出も増えるこの世代を多く抱える国民健康保険は、当然ながら企業の健保
 や協会けんぽよりも、財政が苦しくなります。だから、企業の健保から、納付金を拠出して調節している
 のです。
  もうひとつの後期高齢者支援金は、2008年から始まった後期高齢者医療保険制度を支えるための
 支援金です。こちらは、現役世代の健保からの支援金が、予算の4割を占めています。
  共通するのは、働いている若い世代が、高齢者の医療費を負担していると言う構造です。少子高齢化
 も進んでいますから、高齢者の医療費負担は、今後も増えていく見込みです。いま、健保の料率はじわ
 じわと上がっていますが、まだ上がり続けるでしょう。現役世代が高齢者の分まで負担するのは、けしか
 らんと思いますか。

C) 私のような中高年は、そうは思いません。人の一生を考えれば、子供のときと老人のときは、現役世
 代の世話になるのが当然で、裏を返せば、現役世代が子供と老人の面倒を見るのは当然だと思ってい
 ます。家族が居る人は、みんなそうだと思いますが、働いて稼いだ金は全部自分のものと言う訳ではな
 いですからねえ。

B) それはその通りだと私も思いますが、少子高齢化がものすごい勢いで進んでいますから、この先どう
 なっちゃうのかなとは思います。こう言っては何ですが、団塊の世代の一人あたりの負担よりも、私たち
 の世代の一人あたりの負担の方が、ずっと大きいはずです。正直言って、理屈どおり子供と老人を支え
 られる自信は無いですね。

A) だからこそ少子高齢化や若者の就職難が問題なのだとも言えますね。少子化対策もなかなか効果
 を上げていないし、出来るだけ長く働けるように高齢者雇用が推進されていますが、定年後の再雇用な
 どは、賃金が非常に安くて、保険料増収の効果も乏しいといったところです。

D) しかし料率が上がるのは負担ですね。介護保険料(40歳以上で上乗せされる)を別にした健康保険
 料の料率は、NEC健保は79‰、ルネサス健保は77.4‰で、ほぼ同じですね。労使の負担割合もだ
 いたい同じです。NEC健保は、以前は労使で6:4の負担をしていましたが、最近の料率アップ分は折半
 で5:5です。私たち従業員の負担は、NEC健保で33.2‰、ルネサス健保で32.2‰なので、年収60
 0万円の人で、年間に約20万円の負担でしょうか。

C) 確かに負担は大きいですけど、見方を変えれば、これで済んでいるのは有り難いとも言えます。堤未
 果の「ルポ・貧困大国アメリカ・U」を読むと、アメリカは本当にひどいなあと思いますよ。アメリカの健康
 保険は、生命保険のように民間の会社が請負っていて、保険料はものすごく高くて、しかも保障はプア
 と言うものです。まず、医療費がものすごく高くて、盲腸で手術して1日入院しただけで100万円を超え
 る請求が来たとか、妊婦は出産したあと入院すると、1日あたり50万円もかかってしまうので、日帰りで
 出産するとかです。だから病気になることが大変なリスクで、仕方なく保険に入るのですが、医療費が
 高いから保険料も高くて、保険料が払えなくて破産する人が続出していると言います。結局のところ、病
 院と保険会社と製薬会社が結託して、ぼろ儲けする構造があるのだそうです。それに比べれば、日本の
 健康保険制度は、すばらしいと思います。

B) 健康保険組合は、営利目的ではないからですね。人の命や健康に関わるところと言うのは、人間に
 とってとても弱い部分ですからね。命を盾に取られて、有り金をむしり取られるような制度には、絶対にし
 てはいけませんね。
  ところで何年か前から、健康保険組合を解散する企業の話を聞きます。西濃運輸とか京樽が解散して
 話題になりました。ルネサス健保もその内に解散してしまう様なことは無いでしょうか。

A) しばらくは無いと思いますが、将来はわかりません。いま、中小企業向けの協会けんぽは、料率が9
 5‰です。この95‰というのが、健康保険組合における現在の基準ともなっていて、これを超える料率
 の組合が、財政赤字で準備金を取り崩すような事になっている場合には、財政再建計画を厚生労働省
 に提出しないといけないのです。再建計画が立てられなければ、解散して協会けんぽに移行することに
 なるでしょう。
  しかし、健保の解散と言うのは、見た目が悪いですよ。要するに、収入が少ないか、支出が多いから
 破綻するのです。収入が少ないのは、労働者の賃金が安いからと考えられるし、支出が多いのは、放
 漫経営の帰結だったり、従業員が不健康で保険給付が嵩んでいるとか、企業そのものが、あまり良い
 状態でないことを間接的に示しているからです。だから会社としては、同業他社と横並びの解散の日が
 来るまで、維持したいと思うのではないでしょうか。

C) NEC健保は、数年前に保養所の大半を閉鎖しました。昔は全国に10箇所以上あった保養所も、今
 は那須、軽井沢、蓼科、熱海の4箇所を残すのみとなっています。こうした保養所の閉鎖も、NECだけ
 の事ではありませんね。もともと健保自体は、企業にとって福利厚生のひとつとして、ロイヤリティーを高
 める手段として使われてきた面があると思うのですが、最近はお互い横にらみで、少しずつ独自性を無
 くしながら、負担を減らす工作を重ねているように見えます。穿った見方かも知れませんが、それは結局、
 将来の解散に備えているのではないかと。

D) 保養所は私も随分利用しましたし、快適でしたよ。特に収入の少なかった若い頃は、有り難かったの
 を思い出します。だからNECが保養所の大半を閉鎖したときには、これは問題ではないかと思いました。
 福利厚生が痩せていくことも問題だし、保養所で働いていた人の雇用も心配でした。
  しかし保養所閉鎖の背景に、そうした大きな流れの可能性があるのであれば、やはりもう一度、この
 問題を考えてみてはどうかと思います。残った4保養所にしても、いつまで続くか分かりませんよね。EL
 グループの被保険者が抜けるから、NEC健保の財政も厳しくなっていくはずです。

C) ですが、保養所の問題は、NEC&関連労働者ネットワークの方に譲りましょう。私たちはルネサス健
 保について考えましょう。
  ところで、ルネサス健保には、NEC健保に無い制度もありますね。「特例退職被保険者制度」です。E
 Lグループ出身者がこれに加入できることになったのは大きいですね。後期高齢者制度の対象となる75
 歳まで、ルネサス健保の被保険者でいられます。NEC健保には、2年間の任意継続しかありませんでし
 たからね。しかも任意継続は使用者負担が無いから、保険料も一気に倍以上だと思います。
  2011年度の特例退職被保険者制度は、標準報酬月額28万円として保険料を計算することになって
 いますから、健康保険料と介護保険料を合わせて10444円ですね。国民健康保険は、市町村によって
 保険料が全然違うので、一概に比較は出来ませんが、この保険料では入れない場合が多いのではな
 いでしょうか。サービスの内容も違いますしね。

D) 高齢者のための優遇制度を抱えて、健保の財政を圧迫しているのではないかとの批判が出てきそう
 ですが、実態はそうではないらしいですね。EU−InfoのNo.2011−02の15ページに書いてあります
 が、むしろこの制度があることで、前期高齢者納付金が減って、健保の財政上からもメリットがあるよう
 です。ということは、そもそも納付金が高すぎるのかな。

A) ルネサス健保の内側から見ていれば、納付金が高すぎと感じると思いますが、外から見れば、やっぱ
 り料率が低いのです。健保の財政が赤字だと言っても、商売で赤字なのとは訳が違います。保険料の料
 率を上げれば解消する話ですから。
  それから、現在の納付金や拠出金は、後期高齢者医療保険制度が出来てからのものですが、それ以
 前は何も無かったのではありません。以前は老人保健制度というものがあり、やはり拠出金はあったの
 です。新制度になって急に負担が生じたと考えるのは間違いです。

C) NEC健保の過去の機関誌などを見ても、だいたい4割は拠出金が占めていました。従来から劇的に
 負担が増えたという訳でもなさそうです。

A) 大企業の健康保険組合の加入者は、平均年齢が若いし、企業が採用する時に健康診断を要件として
 いるために、健康状態も平均的に良好なのですよ。労働環境がよくて労働衛生もしっかりしているから、
 病気や怪我もしにくいですね。おまけに高所得ですから、健康保険の支出の割に収入が多いのです。こ
 れだけ恵まれた集団が、他の国民全体から独立に健康保険組合を作っているのですから、低料率で高
 サービスを受けられるのも当然です。それで良いのかということが問われているのだと私は思います。

C) 結局のところ、国としての健康保険制度をどう見るのか、現在のままで良いのかと言う訳ですね。

A) そうです。健康保険組合の歴史は古くて、戦前に遡ります。健康保険法は1922年に制定されました。
 国民皆保険は戦後ですから、健康保険組合の方が国民健康保険よりも先に誕生しているのです。
  企業の中には、健康保険組合を解散して、中小企業向けの協会けんぽに入るところが出てきていると
 の話が先ほどありました。では協会けんぽは、どうなっているのでしょうか。協会けんぽは、つい3年前ま
 で「政府管掌健保」、略して政管健保という名称で社会保険庁の管轄下に置かれていました。これが社
 会保険庁の解体とともに、全国健康保険協会という公法人に移管され、協会けんぽになったのです。政
 管健保は、政府が運営主体ですが、協会けんぽになったことで、国の責任範囲がどこまで及ぶのか不
 安視されています。それどころか、国民健康保険がここに統合されて行くのではないかと目されています。
 私たちの健康保険組合もまた、これらと統合されていく可能性が無いとは言えないでしょう。いま、健保
 が、企業独自の各種サービスを減らしているのは、その予兆とも取れます。例えば予防接種補助なども、
 ぎりぎりの料率で健保を運営していきながら、財政が厳しいことを理由に二度と復活させない可能性が
 あると思います。
  企業の健康保険組合も、国民健康保険も、協会けんぽも、全部一緒になれば公平だとの考え方もある
 かも知れません。しかし、統合されることによって、企業から拠出されている保険料がどうなるのかとの疑
 問が沸きます。結局のところ、ここでも法人税の議論と同じように企業の負担が軽減され、代わりに不足
 分は消費税を財源にするのだとの主張が出てくると思いませんか。
  加えて、国民健康保険などは、保険料を納められなくて、実質的な無保険状態になっている人も多く居
 ます。そうした問題は、統合したら解決するどころか、むしろ悪化さえしかねません。なぜなら、保険料収
 入や公的負担において、企業にとって有利な変更が為されれば、被保険者の負担がそれだけ増えるか
 らです。国民皆保険制度を実現するために、どのような健康保険制度であるべきか、ルネサス健保という
 枠組みを離れて考えてみることも大切だと思います。

B) 今日は、いろいろな意見が聞けて参考になりました。ところで素朴な疑問ですが、健康保険組合という
 名前からして、この組織は労働組合と同じように、「組合」ですよね。組合と言うからには、私たち被保険
 者は組合員であって、料率決定とか、組織運営とかに、関われないとおかしいのではないでしょうか。な
 のに、私たちの与り知らぬところで、方針が決められているように感じます。

A) いい質問ですね。健康保険組合を運営している理事会や、決議機関としての組合会は、使用者の代
 表と従業員の代表が勤めています。ところが、これら理事や議員は互選ですので、私たちが選挙で選ん
 でいるのではありません。その意味では、間接民主制でさえないのです。
  では、従業員の代表は誰なのかと言えば、労働組合の役員ですよ。春闘にしても、制度一元化にして
 も、私たちが労働組合に上げる質問や要求は、執行部から会社に対して、質問したり要求・要望すること
 を前提にしていますよね。だけど健保に関して言えば、労組役員が運営に直接関わっているのですから、
 組合員から執行部へは、本来はもっと強く要求して良いし、執行部としても、単に会社側の回答を返すだ
 けでなく、自らの見解を語らなければならないのだと思います。

B) “健保は会社とは別組織だから要求してもしょうがない”と考えるのは誤りだと言う事ですね。

A) 最後に、参考文献を1冊紹介しておきます。東京自治問題研究所が発行している「公法人“協会けん
 ぽ”が動き出す」という本です。将来健康保険がどうなろうとしているのか予測するうえで、参考になりま
 す。
  さて、予定していた時間をオーバーしてしまいました。今日の議論は、この辺にしておきましょう。また明
 日よろしく御願いいたします。