ルネサス懇、制度一元化を語り合う。

− 各種手当 −

【各種手当】

A) では、そろそろ手当関係の方にも目を向けましょうか。最初は、ファミリーサポート手当からです。これ
 については、先月も議論しましたね。区分Rに は家族手当制度がありましたが、これがファミリーサポー
 ト手当と名称を変え、手当の額も若干変わりますね。区分Rにとって大きな変更は、配偶者の手当が大
 幅な減額になっている点と、S1の基本給から手当分の18000円が減っている点です。RS1の中には、
 賃下げになる人が、かなり出てくると思われます。

B) 子供に対する手当は、従来の12000円から13000円に増額になりますが、配偶者の手当が6500
 円に減額になっていますね。私の場合、共働きで子供が1人ですから、新制度での手当は13000円です。
 従来の18000円から5000円減額になってしまいます。しかし逆に言えば、従来は扶養者分以上に貰っ
 ていたとも言えます。

C) 素朴な疑問ですが、なぜRS1は家族手当が役割給に入っていたのですか。

B) RS1は裁量労働なので、家族手当を支給するのは適当ではないとの理屈だったと思います。賃金水
 準が十分高いので、別口で家族手当を出さずとも、やっていけるはずだとの考えもあった様です。そうは
 言っても、家族手当分を減額する訳にも行かなかったので、平均的な支給額である18000円を、一律に
 役割給に加算したのでしょう。だから18000円は家族手当ではなく、相当分の原資を均一に分配したも
 のなのです。いわば家族手当の残像ですね。

C) RS1だから家族手当が不要との理屈が不適当だったのではないでしょうか。事実として扶養している
 のですからね。ついでに言えば、管理職にも家族手当は必要なのではないかと。

B) フルタイムで共働きをしている家庭の割合は、組合員の方が高いはずですから、管理職こそ必要だと
 も言えます。しかし一旦家族手当は廃止すると整理したのであれば、今回の減額は筋が通りません。減
 額をやめる代わりに、S1はファミリーサポート手当無しと、すっぱり言い切ってしまっても良いと思います。

D) それはやめて欲しいです。区分Eの方は、もともと家族手当、区分Eでは扶養給と言いましたけど、そ
 の分がA1の基本月収に入っていません。それに仮にA1の賃金は18000円をプラスすると言われても、
 ミドルポイントのリミットがあるのです。ファミリーサポート手当は、基本給とは別勘定で貰った方が、絶対
 に得だと思います。

A) ああ、そうでしたね。号俸給制度ではなくなるのだから、確かにファミリーサポート手当は別勘定の方
 がいいでしょう。

B) 個人で見れば、損する人も出てきますが、諦めろという事でしょうか。長い目で見れば、得だと考える
 しかないでしょうかね。あるいは私の場合、子供がもう1人増えれば。

C) 配偶者の扶養手当は、いずれ無くして、社会保障政策によって代替されるべきものと、前回は結論づ
 けましたね。しかし、そのような制度が社会に確立されるまでは、企業側も制度確立を推進する側に巻き
 込むためにも、いまの扶養手当を堅持すべきだと言うことでした。

A) では、ファミリーサポート手当以外の手当についても順番に見ていきましょう。時間外勤務手当はどう
 でしょうか。時間外割増率などは、区分Eも区分Rも同じですから、基本的に変更ありませんね。割増率
 は130%で、深夜が30%増し、休日は145%です。ただし区分Eにあった徹夜勤務手当は廃止提案が
 出ていますね。

D) 徹夜勤務手当は、午前5時から始業開始までの時間も、深夜時間帯と同じく30%増しにする制度だっ
 たのですけどね。会社が廃止する理由は3つあって、ひとつ目は法定の範囲外であるから、2つ目は極
 力徹夜勤務にならないように管理を徹底していくから、3つ目はフレックスなど柔軟な働き方によって、
 午前5時以降の身体的負荷が必ずしも同一にならないからとされています。

A) 労働基準法では、午後10時から午前5時までの時間帯に対し、深夜割増をしなくてはならないと定
 めています。5時以降は法定の時間に含まれないから、払わなくて良いだろうと言っている様ですが、ど
 うでしょうか。労働基準法と言うのは、この法律を根拠に労働条件を引き下げてはいけないと第1条で定
 めているのです。今回のケースは、法を根拠にした引き下げのように思えますね。
  2つ目の理由もよくわかりません。徹夜勤務だけでなく、深夜労働にしろ、極力防止すべきものである
 事に違いありません。そのための装置として、法は割増賃金の義務を課しているのです。もし会社に徹
 夜勤務は原則行うべきものでないとの認識があるのなら、そうならないためにも徹夜勤務手当は残させ
 るべきでしょう。

D) 労働組合としても、過去の交渉で勝ち取った権利を、簡単に手放していいのかと思います。

C) 通勤手当は区分Rに寄せられるみたいですね。区分E側は、新制度で改善しているように見えます。
 まず公共交通機関を1キロ以上利用すると通勤手当の対象になりますでしょう。区分Eはこれまで、自宅
 から2キロの原則がありました。2キロ歩けば約30分です。健康には良いかも知れませんね。

D) 現実問題として、自宅から駅まで2キロ近くあったら、普通歩きませんよ。大抵は自転車だと思います。
 駅前の駐輪場って結構高くて、だいたい1回止めると100円で、定期でも1ヶ月に1500円から2000円
 くらい取られますよ。駐輪場代が実費に含まれないのは、おかしいと思っています。

B) 駐輪場代は明らかに実費ですね。自転車の利用を会社は認めている訳でしょう。合理的な理由があっ
 て自転車を利用していれば、当然実費への支給がされるべきです。

C) 区分Eでは自転車の利用を認めるものの、奨励はしていませんでした。駐輪場代が出ないのは、そう
 いった理由と思いますが、そうなると余計に自宅から2キロの縛りは何だったのかと言う気がしますね。
 区分Rの通勤手当の考え方のほうが、合理的に思えます。
  それから、あまり目立ちませんが、車通勤などのガソリン代の計算も、区分Rの方が有利ですね。4輪
 のガソリン代は、区分Eがリッター10キロに対し、区分Rは8キロですからね。区分R出身者の方が、高
 級車に乗っているのでしょうね。信号のある道路でリッター10キロは、普通乗用車だと難しいでしょう。
 きっと区分E出身者は、軽自動車に乗っていると想定されているんでしょう。

B) いえいえ、区分Rは車を買い替えられないから8キロなんです。区分Eは、最新のエコカーに乗ってい
 るから、10キロでもお釣りが来るのでしょう。せめて一時金が安定して4.5ヶ月以上出る状態に戻って、
 車を買い替えられるようになるまでは、8キロのまま据え置きにしてくださいよ。

D) 電車通勤で、区分Eの最廉価方式が改められるのが大きいと思います。従来の区分Eの制度では、
 通勤時間が多少長くなっても、運賃の安い経路が採用されていました。合理性を欠くとの批判があった
 のです。

A) 通勤手当はそのくらいで良いでしょう。手当関係で最後に、休業手当はどうでしょうか。区分Rに合わ
 せて83%支給となっています。区分Eは現行80%ですから、少しだけ増えますね。法律では、労働基準
 法の26条で、60%以上とすることが定められています。区分Eは、残りの4割を労使折半にしたものと考
 えられますね。区分Rの83%は、1/6を労働者の負担としたものですが、根拠はわかりません。

B) 法律を上回っているので、とりあえず問題ないという事でしょうか。

A) それがそうでもありません。休業手当に関する法律は、労働基準法だけでなく、民法にもあるのです。
 民法536条の2項を読み上げますと、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することがで
 きなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。」となっています。分かりにくい表現
 ですが、会社が休業するケースにおいては、債権者とは会社のことで、債務者は従業員のことです。従
 業 員は、会社に労働を提供する義務を負っているから、債務者なのです。そして反対給付と言うのが
 賃金を意味します。この法律に従えば、会社の責によって労働者が働けなくなった場合には、賃金を
 100%請求できるのです。どこまでが会社の責と言えるかについては、諸説ありますが、不況や経営難
 で一時帰休をする場合などは該当するとされ、東日本大震災のような天変地異によるものは該当しない
 との解釈があります。
  それから、雇用調整助成金のことも忘れてはいけないでしょう。休業する場合、休業手当の2/3は国
 から助成金が出ます。従業員の解雇を行わなければ、3/4です。ですから、仮に休業手当を100%とし
 ても、正味の会社の負担は25%しか無いのです。新制度では、「真にやむを得ない場合は、会社および
 組合は協議して別に定める」となっていますので、デフォルトでは100%とするのが妥当ではないかと私
 は考えます。

D) 同感です。それは単に、法律上そうすべきと言うだけでなく、一時帰休という措置自体が、工場単位で
 行われるからです。工場の労働者から見れば、デリバリーや歩留は自分達の責任でも、流れる製品その
 ものが無いのは、日ビルや武蔵や玉川にも責任のあることです。首都圏の拠点が休業にならず、自分達
 だけが休業になり賃金が減ることについては、不満があって当然と思います。せめて工場だけでも、一時
 帰休の補償は100%に出来ませんでしょうかね。