ルネサス懇、制度一元化を語り合う。

− 職群等級 −

【職群等級】

A) では資料に沿って、最初は職群等級からです。新制度では、総合職群(S)、専任職群(T)、監督職
 群(F)と、特務職群の4つの職群が設定されています。総合職は区分RのRS、区分EのA職に該当して
 います。専任職は、区分RではRK(基幹職)が該当していますし、区分EではB職とC職の両方がここに
 入りますね。監督職は、区分Eには該当する職群がありません。各職群には、等級が設定されていて、
 これも従来の仕組を踏襲した感があります。では総合職群から見て行きましょうか。

C) 区分Eの場合、現在のA1からA3までと、新制度のS1からS3までが綺麗に対応している様に見え
 ます。

B) 区分Rは、もともと4段階だったものが3段階になりますから、RS2とRS3がともにS2に移行するよう
 に書かれています。本当にそうでしょうか。
  それに、RS1と区分EのA1とは、全く同じではなく、RS1になる年齢の方が、A1になる年齢よりも高い
 のではないでしょうか。

D) つまりS1がA1と同じなら、RS2からS1に行く人がある程度居るかも知れないし、逆にRS1と同じな
 ら、A1からS2に行く人がいるかも知れないと言うことですね。どちらなのでしょうかね。RS1もA1も、ど
 ちらも裁量労働が適用されますから、この違いは結構重要かも知れません。


  


A) ルネサステクノロジが出来る以前、日立の総合職は8段階に分かれていました。一番下の8級から4
 級までが労働組合員で、3級が課長クラス、2級は副参事など部長クラスとなっていたように思います。
 4級は裁量労働だったのですが、ルネサスでRS1という等級を設定したときに、これを課長クラス候補と
 位置づけたために、日立の総合職4級よりもRS1の方が若干高い位置づけになったのです。そのため、
 4級からは、RS2に移った人達が結構居ました。ここで裁量労働を外されて、賃下げが起きたのです。
  したがって、新制度でRS2の一部がS1に移行するのであれば、前回の統合で実質的な降級になった
 人の中に、もとの然るべき等級に戻る方がいるかも知れません。逆にRS1=S1になるのであれば、か
 つての日立の総合職と同じことが、区分EのA1にも起きるでしょう。つまりA1からS2への降級です。

D) NEC時代は、31歳になる歳で、A職はほぼみんな主任になりました。ところが最近は、少しずつ昇格
 に遅れが出てきている様に見えます。32歳や33歳でやっと主任になった人が、新制度でS2に落とされ
 たらショックでしょうね。
  それから、とにかく賃金が下がらないことを前提に見て行かないといけないですね。少なくとも労働組合
 は、S3からS2、S2からS1に移行する年齢のターゲットを定めるはずです。春闘における区分Eのモデ
 ル賃金は、30歳でA2からA1に上がるのを前提にしていました。賃金水準が下がらない事を確認するた
 めには、等級ごとに設定される基本給レンジだけでなく、平均的な昇級年齢も見ないといけないですね。

A) その通りで、労働組合が移行年齢を定めても、会社がそれを履行する義務はないですからね。会社
 はあくまで能力などをベースに昇級させますから、ターゲットの年齢を過ぎても昇級しないケースなど普
 通に有り得ます。
  問題は、マクロで見たときに、平均的な昇級年齢が上昇しないかどうかですね。例えばS2からS1に
 上がる平均の年齢が、30歳、30.5歳、31歳、と段階的に上がっていけば、事実上の賃下げになりま
 す。昇級こそが賃金を上げる主要なポイントであるにも関わらず、毎年昇級する人数枠を、人事の都合
 で決められるところに注意が必要と思います。ですから、平均昇級年齢は労使交渉のポイントになると
 思いますし、データの開示、共有が求められるところです。
  続いて、専任職群についてはどうでしょうか。

C) 区分EのB職とC職が一緒になるのが気になります。この様な区分けで果たして正しいのかどうか。

A) 実は日立も、Bを執務職、Cを間接技能職と定義していました。NECの職群は、日立に近いと思われ
 ます。新制度のT職の原型はRKですね。Kは基幹職の頭文字です。新制度の専任職がTなのは、Sだ
 と総合職と同じになってしまうので、単にアルファベットの次の文字のTにしただけではないかと思われ
 ます。
  区分Eの事務系も工場労働者も、専任職という枠組みに入れたのは、人事評価のプロセスによる区
 分けだと考えられます。しかし、業務内容が相当に異なるものを、同じ職群にまとめることには、私も違
 和感を覚えます。これは日本の労働運動の歴史の中で、職種別賃金を定義できていない事とも関係す
 るでしょうね。

B) RKは5段階ですし、新設のTも5段階なので、RKとTは同じと思って良いのでしょうか。区分Eは、
 B1とB2がT1に、C4とC5がT3に入るのですね。
  専任職の場合も、総合職と同様に、基本給レンジと平均昇級年齢の両方のチェックが必要ですね。

C) そうでしょうね。区分Eの場合、B3とB4の間にはギャップがあると言われています。今回、B3がT2
 になり、B4がT3になっていますね。T職からS職に移る場合、T3以下は筆記試験があるでしょう。だか
 ら新制度もT2とT3の間にギャップがあると推定できますね。T3からT2に上がるのが難しくて、かなりの
 人数がT3に滞留するのではないでしょうか。
  ただ、現行区分E制度におけるこの等級の賃金バンドと、新制度の基本給レンジを単純に比較すると、
 新制度の水準の方が高く設定されていますね。B4よりはT3の方が、賃金の上がる余地がありそうです。
 見方を変えれば、本当にB4=T3なのかとの疑いも生じますね。さっきの総合職の議論と同じで、B4の
 下層がT4に移行したり、B3の下層がT3に移行するケースがあるかも知れません。

D) 実際区分Eでは、今の制度に移行するときに、B職の一番下の6級に押し込められたとの話を、何人
 もの方から聞きました。それから営業職では、大卒男性がA職なのに対し、同じような仕事をしている短
 大卒の女性がB職なのは不公平だとの話もあります。低い職群等級へ押し込められているとの話は、対
 象が女性である場合が多いです。

A) そういう話は、昔からあります。ひとたび賃金の低い職群等級に押し込められてしまえば、総合職など
 と比べて異なる待遇が長年に亘って維持されてしまいます。私たちはそれを「職種間差別」と呼んできま
 した。
  歴史的な経緯を少し言いますと、もともと日本の大企業は戦前、高学歴の女性を採用しませんでしたし、
 戦後になっても、やはり大卒の女性を企業は採りませんでした。高卒の女性などを、「女子事務員」として
 採用しましたが、男性正社員との間には、大きな賃金格差がありました。つまり、単に仕事が違うから賃
 金も違うと言うのではなく、性差別と一体化する形で、女性が安い労働に押し込められてきたのです。

B) 整理しますと、職群等級の移行にあたっては、問題点が主に2つと言うことですね。ひとつは、不当に
 低い職群等級へ移行されてしまうケースが無いかどうか、今ひとつは、もともと現在が不当に低い位置に
 押し込められているのに、そのまま移行してしまうケースが無いかどうかです。
  資料を見ると、営業職だけは、総合職のリスト中にも専任職のリスト中にも入っています。それぞれで、
 どのような定義になっているのか公開して頂かないとダメでしょう。

D) 専任職には、他にも「品質保証職」とか「生産管理職」とか入っていますが、本当に専任職だけで出来
 る仕事なのでしょうか。移行にあたって参照されるのが「等級定義書」とされていますが、等級定義書と照
 らし合わせれば、分かるようになっているのでしょうか。

C) さあ、どうでしょうか。新制度における総合職の等級定義書が公開されていますが、職種に照らした具
 体的なことは書かれていませんね。
  実は区分Eにも似たような基準として、「プラクティスファイル」と言うものがあります。違うのは、プラク
 ティスファイルが、自立だの自主性だの企業倫理だの協働だのと、沢山ある項目の全てにおいて、「常
 に行動できている」ことを求めている点です。そんな基準をクリアできるスーパーマンみたいな社員ばか
 りなら、今頃ルネサスは超優良企業になっているでしょうに。だけど区分Eの場合、これが全部クリアさ
 れないと、上の等級には上がれない事になっているのですよ。タテマエと現実が乖離しすぎだと思います。
 新制度の等級定義書は、そこまで現実離れしていないみたいだから、多少は良くなるのではないかと期
 待しています。

A) そうでしょうか。人事はすでに、新制度の職群等級の人数構成や、移行後の賃金総原資などについ
 て、シミュレーションを終えているはずだと思いますよ。誰がどこに行くのか、ほとんど決まっているときに、
 本当に一人ひとりきっちり職群等級を見直すと思いますか。労働組合も、適正な評価が行われるかどう
 かを気にしていますね。評価プロセスや管理者教育、評価者訓練の強化、評価基準や評価の視点の公
 開、それに評価が適正に行われているかどうかを定期的に監査する仕組みなどを求めています。それら
 も重要ですが、やはり評価結果がどうだったのかが、一番重要だと思います。労働運動はプロセスよりも
 結果を重視ですよ。

D) 区分E労組は「賃金一時金実態調査」を毎年やっていて、その中で昇級昇格も確認しています。残念
 なのは、組合員から集めたデータを公開していない事です。昇級昇格者の人数と割合と平均年齢や、30
 歳と35歳の平均賃金のデータとかは、組合員一般に公開すべきではないのかと思います。春闘でモデル
 賃金を掲げておきながら、結果がどうだったのか報告しないのでは、私たち組合員は評価できませんから
 ね。
  来年4月は非常に重要なポイントですから、きちんと調べて公開して頂きたいですよ。賃金がダメなら、
 せめて職群等級の移行人数だけでも。

B) 職群等級の移行が適正に行われたかどうかについては、4月になったらルネサス懇でアンケートを実
 施しても良いかも知れませんよ。私の方で原案を作成してみましょう。

A) さて、最後に監督職群については如何でしょうか。これは日立の時代からF職群とされていたものです。
 区分Eには該当するものが無いらしいですね。

D) 監督職は、現場叩き上げの軍曹といったイメージでしょうか。F1やF2の「特称」と言うのは何でしょうか。
 具体的にどのような特称が付与されているのですか。

A) 特称は特称です。RF1、RF2などが、それに該当します。戦前からある制度で、特称は○○組の組長
 とヤクザみたいな呼び方をされたりもしました。特称の賃金には「特称加算金」があるし、金色のバッチを
 着けて、まあちょっとした誉れですよ。社長や経営幹部とは別の出世コースとして象徴的な存在だから、
 制度としては無くすことが出来ないのです。古い言葉で、技能工集団の中心を「棒芯(ぼうしん)」と言いま
 すが、その棒芯の呼び名を変えたのが特称と思っていただいて結構です。

B) 以前「蟹工船」を読んだら、「ボースン」と言う言葉が出てきました。船の甲板長などを示す言葉だそう
 です。何語かは知りませんが。これが棒芯の語源らしいですね。

D) 区分EのC1がF1に移行するのは良いとして、B1はどうでしょうか。区分Eでは、B職の1級は主任と
 呼ばれています。今回の制度改定で、現在すでにB1になっている人は、T1に移行後も主任の呼称を外
 されないことになりました。ですが、来年以降新たに昇級してT1になる人は、主任ではなく”棒芯”になっ
 てしまうのですね。B職は短大卒女性が多いから、何となく違和感があります。それとも、そういう人は、
 T1ではなくS1に移ることになるかな。