ルネサス懇、制度一元化を語り合う。

− はじめに −

                                 参加者 : A委員(ルネサステクノロジ出身:座長)
                                        B委員(ルネサステクノロジ出身)
                                        C委員(NECエレクトロニクス出身)
                                        D委員(NECエレクトロニクス出身)


【はじめに】

A) 今日(11月12日)は、さわやかな秋晴れの日ですね。11月だと言うのに、気温も暖かく、空気も乾
 燥していて、とても過ごしやすく感じます。このような好天の日に皆さんを呼び出して恐縮です。
  さて、人事処遇制度一元化も骨子がだいぶ固まってきたようです。何しろ量が膨大ですから、半日で
 は検証できないと考え、今日から明日にかけて、合宿を組ませて頂きました。制度を一つひとつ検証し
 ながら、じっくり話し合いましょう。
  それにしても、あなたはまた大きな荷物を持ってこられましたね。

C) いやあ、ルネサス懇の合宿だと言うので、また木賃宿に泊まるのだろうと、薪と寝袋を背負ってきた
 ら、こんな大荷物になってしまって・・・・。うそですよ、本当は酒とつまみと、釣りの道具を持ってきました。

A) 木賃宿でなくて良かったですね。ここは窓からの眺望もいいし、なかなか良い宿でしょう。

C) なかなか普通の宿で安心しました。

A) 議論の順番は、お手元の時間割表を参照してください。まず今日は、制度の中でも一番重要な「非月
 報者処遇制度」について話し合います。次に、ボリュームを考えて、先に「健康保険組合」に関して話合う
 こととします。明日は、「勤務・休職・定年制度」と「福利厚生制度」についてです。実は「海外勤務制度」
 についても、本当は検証したいところなのですが、私達のメンバーには海外勤務体験者がいませんので、
 十分な検討が出来るとは思えませんでしたから、割愛することにしました。

C) 明日は8時半スタートですか。釣りをしている時間は無さそうですね。

D) それにしてもまた、膨大な資料ですね。見るだけで、げんなりしそうです。

A) 労働組合から会社案が公開されたのが10月7日でした。12月2日には、最終案が提示されるとの
 事ですから、一般組合員の検討期間は、わずか2ヶ月足らずです。ルネサステクノロジの制度統合のと
 きには、半年くらいかけて、じっくりやった記憶があります。NECエレクトロニクスとの制度統合は、賃金
 から勤務制度から福利厚生まで、全部まとめて資料が出てきて、検討期間も短いですから、かなり強引
 な印象を受けますね。

D) これも100日プロジェクトにおける会社の基本姿勢の現れですかね。統合をスピーディにするために、
 下々の者には語らせず、トップダウンで推し進めようと言う姿勢の。

A) まあそうでしょう。しかし例え議論の時間は限られていようとも、私たちルネサス懇は、ちゃんと話し
 合いますよ。それで今回の議論の進め方に関して、確認をしておきたい事があります。今日は各制度を
 順番に取り上げて個別に議論していきます。はじめに新制度の会社提案内容を確認します。できれば、
 それに対する率直な感想を述べてください。職場で聞かれた意見なども、どんどん話してください。ルネ
 サス懇のポリシーは、労働者一人ひとりの思いや感情を大切にする事にあります。こういう制度提案が
 されるときには、労働者はまず、自分自身がどうなるのか、損するのか得するのかを考えます。それは
 決して我侭ではなく、ごく自然のことです。個人の率直な思い、生の感情や感覚を、最大限尊重しましょ
 う。
  本日ここに集まった4人は、ルネサス労働者4万6000人の代表ではありません。単に現在ルネサス
 に勤める者と、過去に勤めた者が、たった4人集まったに過ぎません。だから全体を鳥瞰し、あらゆる可
 能性を考慮しながら、大局的な見地で議論しようなど、おこがましい限りです。ですので、みなさん自身
 の感覚に自信を持って、率直な見解を述べてください。
  「木を見て森を見ない」と言う言葉があります。この言葉は近視眼的な物の見方に対する戒めですね。
 しかし「木を知らぬものに森はわからない」と言うのが私の持論です。私達労働者一人ひとりが、誰より
 も良く知っているのは、自分自身の現実、自分自身の「木」です。新制度が、自分の木をはぐくむ肥料に
 なるのか、枯らす害虫や除草剤になるのか、知っているのは自分です。だからこそ、自分が知っている
 自分の現実を、お互いが語り、知り合うことが、民主的な労働運動の原点となります。私達は少人数で
 すが、自分の現実と、想像力の及びうる範囲で結構ですので、他の労働者の現実を話合って、共有す
 ることから始めましょう。
  そして、なぜそう思うのか、どうしてそう感じるのか、本当はどうなれば良いと思うのか、どのくらい強く
 そう願うのか、それは実現可能なのか、どうすれば実現できるのか、こうした事について、掘り下げて行
 けば、一見すると互いに異なる労働者の要求にも、共通の解決方法が見つかるかも知れません。労働
 者を取り巻く現実と、心からの要求に立脚しない労働運動など空虚です。その根本を大切にしながら、
 議論を進めて行きましょう。