ルネサス懇、制度一元化を語り合う。

− 再雇用 −

【再雇用】

A) 再雇用制度は、区分Rの制度に片寄せされますね。60.5歳になる前の選択です。NECのように、
 定年前の賃金減額はありません。

C) 東芝、三菱、NECの雇用延長制度が、業界の中でも悪いのですよ。区分Eは、57歳の時点で雇用
 延長の選択をしないといけません。それに雇用延長を選ぶと、定年までの賃金は2割減額になります。
 裁量労働は外れるから、Vワークの主任は、大幅に年収がダウンしますよ。
  更に雇用延長後は、賃金が半分だし、一時金が半期で1ヵ月分なので、年収としては選択前の約4割
 になります。

A) 新制度も賃金は大幅に減額になりますよ。総合職の成績標準者で月収16万3千円ですよ。それま
 での月収の半分以下になります。一時金は半期で2ヶ月分出ますが、年収は区分Eの制度と比べて必
 ずしも多いとは思えません。低賃金労働と言うのが問題ですね。日立などは、その分だけ労働日自体を
 減らす制度もありますよ。

C) 労働日を減らして当然ではないのでしょうか。40歳以降の最低賃金は22万1千円ですよ。フルタイ
 ムで働いて、それよりも賃金が安いとは何事でしょうか。専任職群で、評価Cなら14万8千円です。18
 歳の最低賃金の15万3千円よりも低いですよ。ひどすぎますね。再雇用者なら最低賃金を下回っても
 構わないと考える根拠は何でしょうか。

B) そういえば今回の新制度の提案の中に、最低賃金が入っていませんよね。区分Eも区分Rも金額が
 同じだから取り上げなかったと言われそうですが、労働組合が毎年の春闘で要求している重要なものを、
 確認事項とさえしないのはおかしいですよ。再雇用の賃金が最低賃金よりも低いとの批判が出るのが
 分かっているから、わざと伏せたのではないでしょうか。

D) 60.5歳を過ぎたら、急に能力が衰えるとも思えませんしね。明らかに仕事の割りに、賃金が安すぎ
 ると思います。成果主義など、仕事の成果に応じて賃金を決める仕組みを導入しながら、仕事が同じで
 賃金を大幅に減らす制度を混在させるのは、ダブルスタンダードだと思いますね。

B) ですが、そのようなダブルスタンダードは、正規雇用と非正規雇用との間にもありますよね。派遣や
 請負は、正社員と同じ仕事をしていても、賃金はずっと安いです。

C) 弁護士の中野麻美が言うところの「労働ダンピング」ですよ。そうやって非正規雇用を不当に安い賃
 金で働かせる仕組みを造ってきた訳です。再雇用制度も、年金問題の解決と安い労働力の供給を同時
 に実現するための制度として、政府と企業が結託して造ったとの疑いを私は持っています。だけど会社
 は、国の制度の被害者だと言わんばかりでしたね。年金制度を縮小して、その穴埋めを企業にさせるの
 は問題だと思いますけど、被害者みたいに言うのは、賃金をちゃんと払ってからにしてくれと思います。

D) 賃金は年金が不足する分だけという考え方自体は認めるとしても、払う賃金に見合った労働時間に
 すべきでしょうね。そうしないと、ただ安い労働力が市場に大量に投入されるだけで、若者の就労をか
 えって圧迫してしまいますよ。労働日を減らすとか、1日あたりの労働時間を減らすとか、制度を見直す
 必要を感じます。

B) 再雇用が若者の雇用を圧迫しているとの理屈は、ちょっとおかしいと思います。少子高齢化の問題
 は、全人口に対する生産年齢人口が減って、生産年齢にある人達の負担が増えることにある筈ですか
 ら、本当は、若者も中高年も、働ける人達の就業機会がもっと増えないとおかしいのですよね。
  私と同年代の人に再雇用制度についてどう思うかと聞くと、“賃金が安すぎて優秀な人が辞めて行く
 のは問題だ”との声を聞きます。優秀でない人なら辞めて当然なのかと言いたくなりますが、私たちの
 世代が厳しい選別に遭っていますから、そういう考えになるのも無理はないと思います。

D) いま民主党が年金の支給年齢を68歳に引き上げるとか言っていますでしょう。それはそれで問題な
 のだけれど、再雇用制度も、それに追随させないといけないし、65歳への定年延長も、視野に入れて
 いかないといけないと思いますよ。

C) まずは生活の糧を得られるようにするのが第一ですよ。しかし雇用延長の背景にあるのは、収入の
 問題だけではないですよ。
  高齢者が社会とのつながりを失わず、社会の中に生きられる場所を確保していくこととか、長年の人
 生で培った能力を発揮して、社会への働きかけが出来る機会を確保するとか、生きがいを持って、健康
 で長生きをするための適度な活動を続けていけることとか、それらを通じて、高齢者の医療費や年金を
 減らしても継続できる社会を造ることとか、高齢者福祉全般に関わる問題です。みんな年を取るのです
 から、自らの行く末を思いながら、考えて行きましょう。

D) ところで、区分Eの制度で雇用延長制度を取得した人は、移行措置として新制度の対象にはならな
 いと書かれていますね。それはないだろうと思うのですが。

C) そうなんですよね。ルネサスとの統合のときに、ルネサスがNECと違って60歳時の選択にしている
 事は分かっていましたから、新制度のようになることを見越して、選択しなかった人も居るのではないか
 と思いますよ。
  特に60歳前の賃金2割減額が問題ですよ。仮に何らかの事情で雇用延長が出来なくなっても、減額
 した分の賃金は戻ってこないのです。どう考えても辻褄の合わない制度です。なんで退職金に上乗せ
 しないのかと言いたいけど、結局は損するリスクを持たせることで、雇用延長したいと言う気分にさせな
 いようにしたのでしょうね。

D) 管理職も雇用延長ってあるのでしたっけ。管理職で制度を取得している人を、見かけないような気が
 するのですが。

C) 制度はありますよ。ただ、“余人をもって替えがたい高い能力を持っている人”だけが対象だったと思
 います。おかしいですよね。奇人をもって替えがたい変人だろうと、野人をもって替えがたい猿人だろう
 と、希望者は全員再雇用が原則ですよ。

A) 雇用延長制度については、まだまだ一般的な認知や理解が不十分と感じます。私たちも、多面的な
 見地から、情宣活動を行っていく必要がありそうです。