ルネサス懇、一時金を語り合う。
- 秋闘の行方(2) -
A) それでは、私の方で用意した資料を見てください。これはルネサステクノロジ(RT)とNECエレクトロ
ニクス(EL)の過去の一時金の推移です。
表1 : 営業損益と妥結月数との比較
(妥結月数は夏冬計または平均値の2倍。2010年は2倍した。)
この数値をもとに、営業損益と妥結月数をグラフ化してみました。
グラフ1 : 営業損益と一時金妥結月数との比較
グラフ2 : 営業損益率と一時金妥結月数との比較
これらのグラフを見ながら、今秋闘の一時金妥結月数を予想できないものかと思います。まずRTの
一時金を見てみます。RTでは業績連動方式は採用せず、毎度個別要求をしてきました。しかしその実
績を見ると、面白いことにかなり近似直線に乗っていますね。だから予想はしやすいと言えます。それ
でこの上期の業績は、若干の赤字、-20億円程度の見込みらしいですから、通年なら40億円の赤字
相当と考えて直線にあてはめると、だいたい4.3ヶ月から4.4ヶ月くらいになりそうです。
C) ELの場合は、ちょっと事情が違っていて、毎年NECグループとしての連結決算を前提に業績連動
方式の一時金を要求していました。このグラフはEL単独の営業損益を元にしていますから、当然直線
には乗りません。それと現在のNECの業績連動方式は、営業損益と最終損益の両方のパラメータで
決まります。本業の良し悪しを示す営業損益と、会社の支払い力を示す最終損益の双方を見ているの
だと思います。
A) そうですね。しかし傾向は判るでしょう。ELの場合、RTよりも業績による振れが大きいようですね。
しかし一昨年の2.3ヶ月は突出して悪すぎますね。本来なら3ヶ月以上出ていてもおかしくなかったの
ではないでしょうか。
C) 確かにこのグラフを見ると、悪すぎましたね。2009年の春闘は、NECに付き合ってフレックスを休止
するなど、緊急費用削減施策として、他にもいろいろ我慢をしました。なぜフレックス休止はNECに合わ
せるのに、一時金はNECと同じ4.0ヶ月ではないのかと言う声が、私たちの取ったアンケートにも寄せ
られました。2010年の春闘における組合員の意識は、この2009年のひどい春闘の結果を引きずって
いたと思います。
A) そうですか。ELの近似直線を見ると、RTよりは全体的に低目ですね。ここでグラフ1から、ELの200
9年分(2.3ヶ月)の実績を消して比較すると、下のようになります。
グラフ3 : 営業損益と一時金妥結月数との比較 (ELの2009年分を考慮しない場合)
面白いことに、ELとRTで近似直線がほぼ平行になりました。グラフの傾きはかなり寝ていますね。およ
そ営業損益が1000億円増えると、一時金の支給額は0.7ヶ月分増える傾向にあります。統合会社であ
れば、ざっとこの1/2倍、つまり営業損益1000億円に対し0.35ヶ月とも見なせます。ただし企業規模
が大きくなれば、一般に利益率は下がるのが常識なので、実際は0.35ヶ月と0.7ヶ月の間になるでしょ
う。
それからELのグラフはRTよりも0.1ヶ月くらい低めになっていますね。このグラフからは、ELの悲願で
ある2.25ヶ月が秋闘の妥結点として適当だと読み取れます。
次に下の表を見てください。
表2 : RTの要求月数と妥結月数
これは過去のRTの要求月数と妥結月数の差です。半期分で見ると、差の平均は0.21ヶ月となってい
ます。これを今回に当てはめれば、妥結月数は2.29ヶ月と予想されます。要求月数が満額回答になるこ
とを期待している人は少ないと思いますが、要求月数と妥結月数の差が開きすぎると違和感を覚えるもの
です。業績がよほど低迷している場合は別として、この差はある範囲に留まると思われます。
以上から、今回の妥結月数は2.25ヶ月+α、ただしこのαはせいぜい多くて0.1ヶ月程度と推定しま
す。
D) 私の勘は外れることが多いのですが(笑)、私もこの妥結月数になるのではないかと思います。というの
も、ELとしては、2.25ヶ月は譲れない線だからです。春闘からの経緯から言って、2.25ヶ月を割ったら
ストライキに入らないと、EL労組としては体面を失います。はっきり言って自爆ですよ。会社もそれは知って
いるはずなんです。なぜなら春闘の後、山口社長(現会長)が自ら、通年で4.0ヶ月という基準を認識した
と述べているからです。もしそれでも会社が2.25未満の回答をし、労組がストライキに入れば、今度は会
社の自爆ですね。結局、2.25以上の回答を出すしかない状況にあると見ています。
B) 今秋闘は、統合会社として初めての交渉であって、今後の試金石になると書かれていますよね。という
事は、どういう結果になろうとも、そこに会社としての決意とか意志が込められていると見なすべきだと思い
ます。統合会社がどんなメッセージを従業員に出すか、期待を込めて見てみたいと思います。