ルネサス懇、一時金を語り合う。

− 秋闘の行方(1) −

A) 今日はさわやかな秋晴れですね。行楽にも昼寝にも、議論にも絶好の日和です。さて、先週からこの
 冬の一時金に関する労使の交渉が始まりましたね。いわゆる「秋闘(しゅうとう)」です。100日プロジェクト
 で見えてきている工場閉鎖や早期退職などの人的施策も心配ですが、今日は一時金について語り合う
 ことにしたいと思います。よろしくお願いいたします。


【秋闘のゆくえ(1)】

− 妥結月数は? −

A) でははじめに、秋闘の交渉の行方がどうなるかを、労働組合が公開している第一回目の団体交渉の
 記録などを元に予測してみましょう。

B) 会社の回答が、結構厳しいですね。市況の回復によって、確かに上期は業績もかなり改善しましたけ
 れど、下期は円高のリスクが相当にあると思います。この週末も現在進行形で円の高値を更新しています
 よね。もう企業はおろか日本国を上げても対処できないという感じです。円高リスクを思うと、結構厳しい
 秋闘になるのかなあと思ったりもします。

A) これはいきなり厳しい見通しですね。労働組合は2.5ヶ月の要求をしました。実際の妥結額はどのくら
 いになりますでしょうかね。

B) 私には見えません。ただ漠然と2.0と2.5の間ではないかと言う予想です。

D) ELは今年の春闘で1.75ヶ月でした。2年連続で最低基準の半期2.0ヶ月を割ったことは、かなり問
 題となっています。労働組合は2.0を割ったらストライキ突入だと言っていましたから、ストをせずにこの
 水準に留まった事については、なぜストをやらないのかと言う声を職場で何人かから聞きましたし、私たち
 のアンケートにもそういう意見が来ています。おそらく各職場から相当な文句が出たのではないかと推測
 します。だから今秋闘では、2.25ヶ月がひとつの目安になっています。2.25ヶ月取れれば、春の分とあ
 わせて何とか4.0ヶ月になるからです。

A) RTは2.25と言う数字に対し特に拘りは無さそうです。日立が4.55ヶ月だったので、要求どおり2.5
 ヶ月取れれば春とあわせて4.5ヶ月になって、日立並みになるかなと言ったところですので、それに近い
 月数を望む人が多いのではないでしょうか。三菱は5.02ヶ月だったので、さすがに追いつけません。

D) 今回の秋闘で、2.5ヶ月取れれば満額、2.25ヶ月ならELは何とか通年で4.0ヶ月キープ、2.0ヶ月
 ならRTだけかろうじて半期2.0ヶ月をキープとなりますね。そこで、刻みの0.25ヶ月分の一時金原資に
 ついても着目してみたいと思います。EL労組の中央委員会議案書を見ると、組合員一人当たりの平均賃
 金が載っています。しかしここには管理職が含まれませんので、管理職を含めた平均賃金は推測するしか
 ありません。今ここで仮に43万円とおくと、これの2.5ヶ月分は107万5千円になります。0.25ヶ月分な
 ら10.75万円です。面倒なので、これをグループ社員の人数4万8000人倍すると、0.25ヶ月分の原資
 は51.6億円と計算されます。かなりの額ではありますが、早期退職などの人的施策の為に積んだ240
 億円と比べれば1/4以下ですね。

C) 親会社から手切れ金代わりに資本注入してもらったのは、リストラのためでしょう。リストラのためのお
 金を従業員に還元してしまったら、親会社は何と言うでしょうか。・・・・と言われても、従業員としては納得
 できませんよね。

A) 親会社ではなくて、大株主様ですね。(笑) RTの場合、以前から日立や三菱の一時金の妥結月数を
 超えられないという現象がありました。RTの利益率が日立を上回った年でもです。さながら親分に首根っ
 こを押さえられている子分のような気分でした。でも今回は日立が4.55ヶ月でしたから、満額の2.5ヶ
 月でも日立を超えません。堂々と主張して大丈夫です。

C) いいえ、だめです。親を超えられないのはNECグループも同じです。その親は夏が2.0ヶ月、冬が2.0
 ヶ月+αです。先日NECがこの冬の業績連動式を会社と取り交わしたようなのですが、業績から言って、
 このαの部分が、かなり少なくなる見込みです。0.25ヶ月にも満たないと聞いていますから、その意味で
 は苦しい交渉になりそうです。

B) 交渉の経過を見ると、労働組合側は、すでに過去の低回答で組合員の生活が苦しい状況になってい
 ること、業績回復へ向けた業務の確実な遂行には社員のやる気などが欠かせないこと、従業員の頑張り
 によって上期は予想を上回る業績回復を果たしていることを主張していますね。主張としては妥当ではな
 いかと思います。この路線でしっかり交渉すればいいのではないでしょうか。大株主の意向がどうのこうの
 と言うのは、交渉の経緯には、あまり書かれてない様です。4月にはグループ会社を離れ、この上期は頑
 張って回復したのだからそれを評価すれば良いではないですか。

D) 私は少し不安です。労組の主張は確かに重要な点をほぼ網羅していると思います。しかし、この要求を
 受けた経営側は、何が何でも一定水準の一時金を出さなくてはならないと思うでしょうか。私にはそう思え
 ないのです。経営者は会社の利益を最大化するのが勤めですから、無用な支出は出来ません。したがっ
 て、無用な支出ではないことを言わなくてはならないはずですが、果たしてこれで十分と言えるでしょうか。
 どこか物足りないと思いませんか。

A) なるほど。それなら話は変わりますが、みなさんは現在の一時金が何を元に決まっていると思いますか。
 なぜ労働組合は春闘で毎度5ヶ月の要求をするのでしょうか。なぜ妥結額は概ね4ヶ月台なのでしょうか。
 会社の業績に比例するのはなぜでしょうか。
  5ヶ月の要求月数や4ヶ月の最低基準は確かに上部団体である電機連合が指示しているものですが、
 会社がそれに従う必要は本来ありませんよね。これは結局「枠組み」の強さなのだと私は考えています。
 春闘を通じて各企業を横断的に取り囲む枠組みです。一般に企業は他社並みであることを気にします。
 他社よりも賃金・一時金の水準が低ければ会社の名声や人材集めに支障が出ます。逆に高ければ経営
 を圧迫しますね。だから横並びになるのです。4ヶ月とか5ヶ月とか言う数値に根拠はあっても必然性はあ
 りません。支給額が業績に一次直線的に比例することも、同様に必然性はありません。私たちの一時金
 は、この枠にはめられているからこそ、安定して支給される訳ですが、反面枠から突出することも困難で
 しょう。これは一時金の妥結月数だけでなく、社内でどのような職種や階層にどのように配分するかと言う
 点においても言えることです。
  さて、今回もこうした枠組みから大きく逸脱しないという仮定のもとに、次は秋闘の妥結ポイントを予測し
 てみましょう。