ルネサス懇、2012春闘を語り合う。
− 一時金の交渉経過 −
【一時金の交渉経過】
A) 賃金体系維持については、そんなところでしょう。では問題の一時金はどうでしょうか。まず要求した
年間4.3ヶ月はどう評価したら良いでしょうか。
B) 絶対的な水準としては少ないと思いました。RT労組はこれまで、リーマンショック後の2009年を除
けば、すべて4.5ヶ月以上の要求をしています。480億円の営業赤字は確かに膨大ですけど、この1
年間、震災をはじめ、超円高とか、タイの洪水とか、欧州金融不安による受注の減少とか、労働者の側
からは何ともし難い外的要因が多々ありましたよね。その中での480億円の赤字というのは、例年なら
黒字になって当然なほどの頑張りだったのではないのでしょうか。労働者の頑張りに見合った要求を出
すのなら、去年と同じ4.5ヶ月くらいは言って欲しかったです。
D) 私は、まあこんなもんかなと言う印象です。産別ミニマム基準の4.0ヶ月を巡る攻防になるのは見え
ていましたから、0.3ヶ月分はのりしろだと思いました。
A) 今年の三菱電機の要求は6.04ヶ月、日立は5.5ヶ月でした。ルネサスの4.3ヶ月とはあまりにも
差がありました。
<ルネサスの一時金要求妥結月数> <日立・三菱との比較>
(2011年以降はルネサスエレクトロニクス)
D) 黒字の会社と赤字の会社の差でしょう。上場会社になって、しかも親会社も無くなったのだから、ある
程度仕方がないとの見方もあります。
A) そういう見方が大勢を占めるのは承知しています。しかし思い出して欲しいのです。2003年にルネサ
スが分社したとき、労働条件の変更は無いとの説明だったのです。労働条件の中でも、私たちが最も気
にする賃金一時金について、これだけ差がつくことは、心情的に受け入れ難いものです。例えば2005年
の春闘では、日立が4.8ヶ月に対して、ルネサスは4.77ヶ月でした。親会社よりも高い営業利益率を
達成した年でさえも、親会社の一時金月数を上回れなかったという現実があります。良いときでも上回れ
ないのに、悪いときには著しく差が付いてきたのが、過去の歴史です。
C) NECも似たようなものです。分社後も一応、親会社の業績連動式に乗っかって、同じ一時金月数を獲
得できましたけど、年によっては差が付きました。90年代まで、新入社員は半導体会社ではなく、NEC
に就職して、新人教育のあとで各部門に配属されていました。一応本人の希望は聞かれましたが、中に
は半導体志望ではなかった人も配属されています。一般に半導体部門は、地味できつい職場との印象
がありましたから、「半導体には行きたくない」と言う人も居ましたね。会社の方針で配属を決められ、同
じように努力してきたのに、半導体に配属されたばかりにNEC本体と賃金一時金で差が付けば、労働者
としてはやりきれない思いがあって当然でしょうね。
B) 子会社って苦労しますよね。日立超Lに勤めている同期からは、一時金が日立グループでも最低レベ
ルで、近年は3ヶ月が目安になっていると聞きますよ。日立なんて、儲かっているグループ会社だけを取
り込んで、儲かっていない会社は切り離して、露骨なリストラをやっていますよね。幅広くなんでもやるの
が日立グループの誇りではなかったのかと言いたいです。そうやって、儲かった会社だけを取り込んだ結
果として黒字を達して、しかも今月にはハードディスク事業を米国企業に売却して売却益1910億円を追
加で計上して、こんなに儲かっても、一時金はやっと5.28ヶ月なのかと思ってしまいます。会社が利益を
上げることなんて、一般の従業員にとってみれば、所詮この程度のことでしかないのでしょう。
A) 莫大な利益を上げても従業員に還元されるのはわずかだとすれば、逆に業績が上がっていなくとも、
だからと言って諦めずに、最低限の一時金は獲得できるように要求しないといけませんね。
今年の4.3ヶ月という要求水準は、三菱、日立とのギャップを埋めようとの意志をまったく放棄したもの
に私には感じられます。しかし、その4.3ヶ月でさえ、「会社の支払い能力からすれば、応えることが到底
困難で過大な要求」と会社は突き放しましたね。
B) 会社がそう主張するのも、理解できない訳ではないですけど、労働者には労働者の言い分がありま
すからね。先の春闘アンケートを見ても、生活実感が相当苦しくなって来ていますし。
A) 生活が追い詰められてくると、どうしても理不尽と思えることに敏感になるのですよ。そういう心情も
理解して欲しいと思います。
D) 区分Eは、万年低回答の一時金に慣らされてしまっているからか、4.3ヶ月も出れば御の字みたいな
雰囲気さえありますよ。要求はあくまでも要求なのだから、もっとガツンと言ってもいいんじゃないのかっ
て思うこともあります。取れるか取れないかは、会社の状態にもよるし、交渉次第ですけどね。そうでない
と、要求に気持ちが乗らないじゃないですか。交渉に入る前から、組合員が冷めてしまいますよ。
C) 会社の主張は相変わらずの企業体力論と言いたいところですが、今年に限って言えば、企業体力が
大きく損なわれているのも事実ですからね。やっぱり震災の影響がすごく大きかったと思います。2011
年度の上期は、震災のために約500億円を使ったと言われていますよね。それからELの持ち込んだ転
換社債1100億円の償還もあったから、2011年の3月末と9月末を比較すると、わずか9ヶ月の間に「
現金および現金同等物」が3373億円から1583億円に減ってしまいました。もともと親会社から注入し
てもらった資本をリストラに使う計画だったので、減るのは想定内なのですけど、想定以上に減ったと言
うので、賃金一時金カットの緊急費用削減施策をやったのだと理解しています。
B) そして、人件費削減をやったにも関わらず、結果的に下期黒字は達成できませんでした。会社の格
付けも下がりました。人件費削減は無駄だったのではないかとの疑問は、至極当然のものに思えます。
D) その労働組合側の疑問に対し、会社の回答は、「緊急施策によって赤字幅が縮小し、資本の毀損も
一定程度抑えられた」というものでした。この回答は、まさに半年前に、私たちルネサス懇が「こんな回
答はして欲しくない」と思っていたものですよね。「100億円人件費を削ったから、100億円支出が減り
ました」って事でしょう。当たり前じゃないですか。
組合員が聞きたいのは、そういう事ではなくて、100億円の削減が、どのような効果をもたらしたかで
すよ。例えば、何もやらなかった場合に比べれば、500億円分の売上拡大に繋がったから、従業員にも
100億円分以上の還元が出来そうだとか、そういう説明が欲しいのです。
C) 気持ちは分かりますが、定量的に説明しろと会社に求めても、無理だと思いますよ。
A) この会社の最大の課題は、とにかく売上を伸ばすことです。1月末に発表された3Q決算報告では、
下期の売上に大幅な下方修正が入りましたね。10月末の見込みから、わずか3ヶ月で、4688億円が
3858億円まで減少しました。これにはタイの洪水の影響もありますが、国内海外ともに需要が減退して
いるのが最大の要因のようです。SoCが悪者にされていますけれど、MCUもA&Pも需要が減ってい
るのです。これが何とかならない限り、会社としてはジリ貧です。
D) 早期退職などの人的施策が、ボディーブローのように効いてきているのではないでしょうか。半導体
産業の場合、インテルやTIのような老舗は確かな技術力で生き残っている一方で、サムスンやハイニッ
クスと言った韓国のメーカーは、財閥のトップの素早い意思決定に基づいた投資戦略によって、装置産
業化の度合いの強いメモリー領域で、価格競争に勝っていますよね。ファブのTSMCは台湾政府のバッ
クアップを受けているし、GFは中東に強力なパトロンが居ると言います。東芝などは、フラッシュメモリー
を開発した会社という技術的アドバンテージと、東芝本体の投資力のミックスで勝っていると言う印象で
す。ARMのような欧州のファブレスは、オンリーワンの技術力が競争力の源泉ですね。クアルコムなど
もそうです。台湾のメディアテックは、安いチップを設計するための人海戦術をとっていると聞きます。
だから、こうして俯瞰して見ると、半導体業界で生き残って行く上では、技術力か投資力の最低でもど
ちらか一方が必須なのだと思いますよ。今のルネサスには投資力が無いから、それこそ日本国が産業
政策を根本的に見直して半導体を強力にバックアップする体制を築かない限り、個社の技術力で勝って
いくしか無いと思うのです。
ところが、1年前の早期退職では、優秀な技術者が結構辞めたと聞きますよね。私の身近で知ってい
るところでもそうです。売上がこれだけ減っても、赤字幅を抑えられているのは、確かに固定費を減らし
た効果でしょう。しかし、人員削減で「筋肉質」の体質にするとはよく言われますが、早期退職などでは「
筋肉」も減りますから、体力そのものが損なわれたと思うのですよね。例えるなら、お相撲さんがダイエッ
トしているようなイメージです。売上が思うように伸びない原因の一端は、そこにあるのではないでしょう
か。開発品は、当初の予定通り立ち上がっているのでしょうか。
B) SoCは若干の遅れがあるものの、MCUやA&Pはほぼ当初の計画通りであると会社は言っていま
すよ。ほぼ予定通りなら、なぜこんなに受注が伸びないのかとの疑問がますます深まりますよね。
D) だから100日プロジェクトの進捗に組合員が疑念を持つわけですね。100日プロジェクトの「構造対
策」で、いろいろとリストラをやりましたでしょう。早期退職でも200億円以上の現金を使いましたしね。
そうやってお金を使いながら会社のスリム化を進めた結果、確かに費用は圧縮できましたよね。でも、
スリム化というのは、売上を伸ばす方向とは逆方向なのでしょう。「構造対策」と「成長戦略」は、もとも
とトレードオフの関係にあるのではないでしょうか。
C) 会社全体で見れば、その通りだと思いますよ。そこで会社としては、リソースシフトの実施によって、
成長領域に対しては人員増強をしていますね。新たに増強した人員が、きちんと機能するまでには多少
の時間は必要でしょうけど、構造対策の方はだいたい終わったと言えそうです。もうこれ以上リストラす
るお金も無いだろうし、ここから先は、成長戦略の花を開かせることに傾注するしかないでしょう。
それで話を一時金に戻しますけど、会社の言うとおりであれば、これから徐々に売上を伸ばしていくけ
ど、今がちょうど底なので、一時金を払う原資が無いとの認識になりますね。今春闘について言えば、
支払い能力に支障があるという話も、リアルなものと受け止めなくてはならないと思いますよ。最近よく
言われるのがキャッシュフローの重要性です。エルピーダの例もそうですが、キャッシュが尽きれば倒
産に至るというものです。
D) そうは言っても、一時金を4.3ヶ月出したら倒産だけど、絞れば会社は存続して、やがてはV字回復
して持ち直すなんてことは、確率としてゼロではないとしても、普通なかなか有り得ませんね。キャッシュ
が尽きるか尽きないかぎりぎりの、よほどクリティカルな場面でなければ、0から4.3ヶ月までの一時金
の妥結月数の間のどこかに、会社の倒産と存続とのスレッショルドが存在するなんてことはないでしょう。
C) もし今年がそのクリティカルな局面だったらどうしましょうか。
A) 仮にそうだとしても、繰り返しますが、ルネサスの本質的な問題は、本業が上手く行っていないことに
こそあります。クリティカルな局面を1回は乗り切ることができたとしても、果たして次はあるでしょうか。
確かに今年は、成長戦略の半ばで成果がまだ出てきていない段階ですし、構造対策のためのリストラの
ための費用もかかりましたし、震災や円高や洪水や欧州金融不安の複合的影響を受けました。来年以
降は、これらの全てにおいて、今年よりは好転するはずだから、今この苦しい時だけは何とかしのごうと
の考え方もありえるとは思います。でも一時金を要求すれば倒産だが、我慢すれば会社が延命するは
ずだと考えるのは極端すぎます。
C) 外的要因はあるにしても、本業を建て直さないとどうしようもないと言う事情は変わりませんよね。そ
れが出来なければ、一時金などゼロにしたって、せいぜい半年延命できる程度ではないのでしょうか。
D) しかし考え方によっては、半年の延命だって貴重ですけどね。
B) やっぱりエルピーダの破綻が、私たちの心にも陰を落としていますよね。
D) それはそうです。私が入社した80年代の後半は、DRAMが稼ぎ頭で、メモリー事業部が一番大きな
事業部だったのです。だから新人の配属希望先としても人気がありましたよ。エルピーダに行った同期の
中には、私よりも優秀な人間が何人もいますよ。彼等は今頃どうしているのか。まじめで優秀な社員がた
くさんエルピーダに移って、ずっと頑張り続けてきたに違いないのです。それでも倒産してしまいました。
今月発売になったiPad3が早速オーストラリアで分解されて、中からエルピーダ製の4GビッドDRAM
が2個見つかったとのニュースがありました。エルピーダ製はモバイル関係に強いと言われていたから、
スマートフォンやタブレットPCの普及によって、業績も好転するのではないかと期待していたのです。あ
ともう少し持ちこたえられなかったのか、銀行はせめてあと1回でもチャンスを与えられなかったのかと、
やるせない気持ちになります。
B) 外部のアナリストの書いた記事を読む限り、エルピーダが賃金一時金を払いすぎたから倒産したのだ
なんて書いてないですね。
A) 海外には、労働組合が長期間のストライキを張って、倒産するまで妥結点を見出せなかったという話も
ありますが、こと日本で、労働組合が頑張ったから会社が破綻したなんて話は寡聞にして聞きませんね。
エルピーダの場合には、価格競争に着いていけなかったのが、最大の原因でしょう。市場への適応が、
ますますシビアに求められる時代になったと感じます。日立もNECも三菱も、半導体の歴史が長いだけ
に、トランジスタなどのディスクリートから、マイコンやASICなどのロジック半導体、それにメモリーやアナ
ログデバイスやGaAsなど、いろいろなものを取り揃えた総合デパートのような業態でした。その中で、D
RAM部門をいち早く切り出したのがエルピーダです。モノカルチャーな業態の不安定さは実にシビアです
ね。先日ルネサスでも表示デバイス事業を集約しましたが、モノカルチャービジネスと言うのは、当れば
儲かるけれども、失敗すればそれで終わりという博打のようなところがあります。これまでのルネサスは、
表示デバイスの1事業が潰れても、社内で雇用を吸収する事が出来ました。今後、MCUの会社に特化し
ていくに従って、MCUでダメなら終わりと言う博打型の業態に移行していくことになります。その未来の
姿を、エルピーダが見せてくれていたのではないでしょうか。
B) それはつまり、一時金を我慢すれば会社が助かるなんて理屈が、ますます通用しなくなる方向への変
化ですね。それでも、資本の規模に合った業態になるように選択と集中は避けられないのでしょう。リス
ク分散のために集中を怠れば、即死は無くともゆっくりと売上を減らして、やがて即身成仏になるかも知
れない。
A) 優秀な社員がいくら一生懸命頑張っても、どうにもならないことがあると言う事です。半導体の世界で
進む選択と集中とか、事業再編とかは、今後ますます企業の生成消滅を加速する可能性があります。私
たちの労働組合はこれまで、会社を潰さないために一部の人に負担を負わせるリストラを時には容認し
てきましたね。しかしこれからは、会社が潰れても人が死なない仕組みを強力に造って行く必要があるの
だと思います。
D) またまた話が横道に逸れましたので、一時金に戻しましょう。労働組合は、第4回目の交渉で、一時
金4.0ヶ月確保の方針を固めました。しかし、ストライキの実施については、特に言及されませんでした。
執行部から職場への指示もありませんでした。例年であれば、やらないならやらないと報告があるもの
です。今年は最後までストをやるのかやらないのか、分かりませんでした。だから職場では、4.0ヶ月
はハドメではないと認識し、また例によって、これよりも下回る水準で妥結するのではないかと見てい
ました。
C) 曲がりなりにも4.0ヶ月で妥結できて意外でしたか。
D) 言いたくは無いですが、少し意外でしたね。どうして4ヶ月取れたのか、これがRT労組の力なのか、そ
れとも会社が腹を括ったのか。いずれにしても、結果としては良かったと思います。4ヶ月を割り込むと、
どうしても気持ちが萎えますからね。
B) でも4.0ヶ月と言っても、正確には夏と冬に1.76ヶ月で、残りの0.48か月分は、下期のどこかで
払われるとしか決まっていないのですよね。きっと3月に支払うつもりなのでしょう。なぜなら、2012年
度は100日プロジェクト最後の年ですからね。3月期での黒字化が最重要課題ですよ。と言う事は、3
月期の決算が苦しくなった時点で、この0.48ヶ月分は無くなる可能性がありますよね。いざと言うとき、
業績へのストレッチに真っ先に使われる原資として、一時金0.48か月分が確保されたと見るべきでは
ないでしょうか。
A) それは少し結論を急ぎすぎではないですか。会社は一度払うと約束したのですから、それを撤回す
るには、それ以外の費用を削ることが前提になりますよ。
D) 我々としては、仮に3月期で純損益黒字が達成できなくとも、この0.48ヶ月は確保したいですね。
何しろ産別ミニマムですから。
C) 組合員にとってはそうかも知れませんが、管理職いじめに繋がらないと良いのですけどね。一昨年
は、区分Eの組合員の一時金が1.75ヶ月だった陰で、管理職の一時金は散々だったのですよ。
D) それは分かっています。しかし、区分Eの場合、リーマンショック以来3年連続で一時金が4.0ヶ月を
下回っているでしょう。もう限界だと思うのですよ。特に今年の賃金一時金カットなんて想定外でしょう。
きっと貯金を取り崩したり、ローンを借りたりして当座をしのいでいる家庭が結構あると思うのです。単純
に「業績が悪いから一時金は諦めてね」では済まなくなっていると思いますよ。
B) 4.0ヶ月は最低限の水準だと思いますよ。3年前にリーマンショックで3.75ヶ月になったときには、
業績が前年からドンと落ちたので、何となく仕方が無いかなとのムードがありました。だけど今年の場合
には、如何に赤字といえども、いろいろな障害がありながら、良く持ちこたえたという感じですよね。那珂
工場を復旧させた人達をはじめとして、やっぱり大勢の従業員が頑張ったのだと思いますよ。その頑張
りに感謝したいです。
C) まあしかし、会社の財務体質を見る限り、一時金のやりくりが厳しいことは想像がつきます。
A) 気になるのは、「種々の施策」とか「臨機の対応」とかの言葉が、会社回答に付記されている事です
よ。何だと思いますか、これを。
D) さっきBさんが言われたように、支払い時期の決まっていない0.48ヶ月分は、無くなるかも知れな
と示唆しているのでしょう。
A) それもあるかも知れませんが、「新たに背負った負担を跳ね返し、新たな成長を成し遂げるための
種々の施策」と書かれているでしょう。一時金を削っても、新たな成長に繋がるとは思えませんから、
それ以外のリストラを示唆しているとは考えられませんか。
C) もしかしてSoCの事業再編とかでしょうか。あまり考えたくは無いですが、ルネサスの場合、統合と
同時に親会社からリストラのための資本注入を受け、100日プロジェクトのスキームに沿って、お金を
使いながら構造改革を進めて来ました。そして構造改革と震災などによって、もう使えるお金がなくなっ
たので、あとは構造改革が功を奏して、売上を伸ばし、再び成長して行けるかどうかの段階にあるとい
う認識ですよね。だとすれば、種々の施策としてあり得るのは、費用の流出防止のための賃金一時金
カットか、そうでなければキャッシュの流出を伴わないリストラ、例えば事業譲渡や拠点の売却みたいな
ものと考えられますね。
A) これまでも、ローズビルをテレフンケンに売り、東セミ長野を村田製作所に売り、高知のラインの半分
を住友電工に使わせるなどのリストラを行っています。その路線が懸念されます。
D) 何だか胡散臭いですね。
B) でも、「臨機の対応」と言うからには、まだ具体的な施策は決まっていないのではないでしょうか。
D) そうでしょうか。どういう選択肢があり得るかくらいは、経営者は当然いくつもシミュレーションをしてい
ると私は思いますよ。
C) 今春闘では、ルネサス労組はNEC労組よりも、かなり頑張ったと思いました。一時金はともに4.0ヶ
月での妥結ですが、NECは妥結した翌日に賃金カット4%をはじめとする逆提案を受けていますからね。
企業の体力から言ったら、ルネサスの方がNECよりも更に追い込まれているでしょう。だから相対的に
ルネサス労組は検討したと評価したいですよ。でも、その評価には、留保条件が必要かな。
D) この3月から5月くらいにかけて、何かのリストラ施策が出てくる様だと、それを見越しての春闘だった
のではないかとの疑いが生じますね。そうなったら、今回の春闘の評価も変わってくるでしょう。
C) どうしても資金繰りが苦しくて、「やっぱり0.48ヶ月返してください」なら、まあ事情によって許せなくは
ないと思いますけどね。