ルネサス懇、「2011春闘」を語り合う。

− 多様化する要求の集約を −

【多様化する要求の集約を】

B) それならば、真に労働者の心に根ざした要求水準は、どうなるでしょうか。

D) わかりません。情報が少ないですね。組合員が何を求めているのか、総合的、包括的に分からないの
 です。本来なら、労働組合が日頃からもっと頻繁に職場会を開いて、お互いに何を求めているのか話し合
 って理解し、共有するような機会を設けるのが理想だと思うのです。そうやって話し合って、お互いに求め
 るものが違う者同士が、出来るだけ最大公約数的な要求を探りつつ、特に困っている人を救済できる方
 法を検討しながら、じゃあ我々の要求はこれだというものを出さないと。組合員の要求の集約ってそういう
 もんでしょ。

B) 職場の組合員の多くは、去年以上の獲得をすべきと思っているのではないでしょうか。だけども、中に
 はもっと会社寄りの、つまり4.0ヶ月でもしょうがないんじゃないかとか、一時金が出るだけでも有り難いと
 か思う人も居たり、そもそも一時金よりも仕事の忙しいのを何とかして欲しいとか、IT投資や研究開発費を
 出して欲しいとか、いろんな人が居ると思います。

D) その一方で、ずっと低賃金に張り付いていて、一時金が出るなら8ヶ月でも10ヶ月でも欲しい人とか、
 積年のベースアップゼロを跳ね返すために、一気に5万円くらい賃上げして欲しい人とかも、きっと居るで
 しょう。

C) つまり、一時金に限っても、4.0ヶ月以下でいいやと言う人も居れば、10ヵ月くらい欲しい人まで、もう
 様々だと。それが本当なら、どう要求したらいいか、分かりませんね。

D) 分からないのは、要求の集約が出来ていないからです。組合員の要求が人それぞれ違うのは当然の
 ことです。集約とはそれを並べて、みんなで話合って、最終的な自分達の要求を固めることなんです。要
 求を集約しないでおいて闘おうとするから、企業の体力ばかり気にする闘争になってしまい、ストを発動す
 る事も出来なくなってしまいますね。もし要求を集約できていたら、もっと違う、ブレない闘い方になるはず
 だと思います。

C) それは例えばどんな風にでしょうか。

D) 本当にみんなが納得して要求を集約できるケースと言うのは、単純な多数決ではなく、例え少数でも
 切実な願いを重視したものになるでしょう。今の会社において、およそ賃金に関することで、一番切実な
 願いとは何でしょうか。それは非正規雇用の待遇改善であったり、母子家庭や父子家庭の経済的困苦の
 解消であったり、事務系の職員の賃上げであったり、とにかく低賃金のために生活を支えるのに苦労して
 いる人達が中心になるのではないでしょうか。だから、やっぱりベースアップは必要だという話になると思
 います。

B) だけど電機大手の、もっと儲かっている会社でもベースアップは要求しませんよ。

D) 今は仮定の話をしているのですから、この際それは置くとしましょう。

B) しかし会社がベースアップを飲むとは思えませんよね。

D) そこで必要なのが戦術なんです。譲れない要求には、ストを構えるしかないでしょう。要求を集約でき
 た労組は強いんですよ。ブレないでストに突入できるからです。

B) そうは言っても、要求が3万円のベースアップだったらどうしますか。会社は無い袖は振れないし、どう
 にも行き詰ってしまうではないでしょうか。

D) 別に3万円のベースアップをハドメにストをかける必要はないでしょう。無い袖を振れとは言いません。
 有る袖を振らせるのです。非正規にしろ、事務職にしろ、電機大手ではマイノリティです。マイノリティで賃
 金の低い人達に篤くなるような賃上げで妥結すると言う方法があるでしょう。

C) つまりベースアップではなく、最低賃金の引き上げと賃金体系の若干の修正をハドメにして、妥結を図
 ると。

D) そうです。これはあくまでも一例ですので、あまり大げさに捉えないで下さい。今の例では、マジョリティ
 は賃上げなし、マイノリティだけが賃上げとなります。もし労組が要求を集約していなければ、マジョリティ
 の側から不公平だとの意見が沢山あがるでしょうから、このような要求は出来ません。ちょっと極端な例
 で示しましたが、集約することの必要性を分かって頂けたでしょうか。

C) 少数派だけが恩恵を受ける要求であっても、全員で要求するからこそ実現の可能性が開けるという事
 ですよね。

B) 逆に言うと、ある組合員の一群は一時金を出せと言い、別の組合員の一群が、それよりも研究開発費
 を出せと言った状態で、お互いのすり合わせのないまま、つまり集約しないまま春闘に入っても、会社に
 対してアピールできる力は乏しいと。そういう状態では会社は無理して一時金を出そうと思わないし、それ
 どころか労労対立によって組合が分裂してしまう可能性もあるということでしょうか。

D) そうですね。それで現実に戻りますけど、要求を集約しないまま突入した今回の春闘では、どうしたら
 良いでしょうか。私なりに思うのは、今となっては、これまで2回の団体交渉が終わった段階で労組が固
 めている方針に、組合員も最大限協力するしか無いのではないかということです。要求を集約しなかった
 労組執行部への批判は、春闘の後でするとして。