ルネサス懇、「2011春闘」を語り合う。

− 運動の方針はどうあるべきか −

【運動の方針はどうあるべきか】

A) さて、ここからが本番ですが。

D) いつも本番になるのが遅くないですか(笑)。前段階が長すぎます。

A) お楽しみは最後までとっておきたいものです。さて、今までお話したことを踏まえつつ、私たちの運動を
 どう組み立てて行けば良いと思いますか。

B) 会社の業績を考慮に入れれば、やはり賃上げや一時金の増に期待するのも困難かと思われます。

D) そうは言っても、じゃあ会社の言いなりって訳にも行きませんね。

C) ストライキはどうしますか。一応今回も委譲投票はしたんでしょう。それで、具体的に何ヶ月をハドメにし
 てストをかけるのが適当だと思いますか。

D) やっぱり賃金体系の維持と一時金4.0ヶ月でしょう。ルネサスは電機連合の拡大中闘に入っているの
 ですから、電機連合の最低基準は守らないと。昨年のような大幅な赤字の年だって守ったんだから。

A) おや、あなたにしては弱気ですね。もう少し上の、4.25ヶ月くらいと言うと思いましたが。

D) ええ、前回の秋闘の時には2.25ヶ月(4.5ヶ月相当)だって思ったんです。でもストライキは組合員全
 員でやるものですからね。かなりの多数派が賛成する水準でストをかけないと、組合員が着いて来れない
 でしょう。

C) ですが、そういう弱気な姿勢こそ、会社側の思う壺ではないですか。

D) ええ、確かに言われる通りです。私が今回弱気になっているのは、今年の春闘がここ数年に無いほど
 盛り上がっていないからです。この2010年度という年は、ルネサスが統合会社となって、親会社の強力
 な支配から多少なりとも開放されて初めて迎える春闘ですね。だから経営者は新しい会社の一時金水準
 を決定する春闘として、ものすごく大事に考えているだろうし、並々ならぬ意志を持って立ちはだかってく
 ると思うのです。しかしそれに挑む組合員がまったく盛り上がっていない。だから高い水準でストを打っても、
 経営側は容易に折れないと思うのですよね。逆に組合員が折れてしまうと思うのです。失敗に終わるスト
 ほど、みじめなものはありません。

C) かなり悲観的ですね。

D) そもそもストに入られたら、たぶん3月末の営業黒字達成は無理ですよ。経営としては、どうせ外部へ
 のコミットメントを達成できないのです。だったら、すごすごと労働組合に折れるよりも、赤字を増やす覚悟
 で徹底攻勢に出た方が良いではないですか。そうやって賃金水準を上げない様に頑張る方が、投資家か
 らも大株主様からも、見た目は良いかも知れないですし。

A) ELはそんなに盛り上がっていないのですか。前回も言いましたが、ストを打てるような組合の体質にし
 ないといけません。ではストの話はこれくらいにして、今言われた4.0ヶ月なら良いのでしょうか。

B) 要求4.5ヶ月で妥結月数が4.0ヶ月だと、RTとしては昨年と全く一緒です。とても受け入れられません
 ね。だいたい三菱電機が5.77ヶ月を要求しているし、日立も5.5ヶ月でしょう。違いすぎますよね。親会
 社は利益を上げているからと言うのは分かりますが、それにしても去年と同じはないでしょう。

D) じゃあ、何ヶ月ならいいのでしょうか。

B) 過去の実績から言って、やっぱり4.4ヶ月くらいじゃないかと。ふと思ったのですけど、過去の実績の
 平均とか比べる対象が無いと、何ヶ月が適当かって本当はよく分からないのですよね。例えば、スーパー
 に買い物に行くでしょ。大根は東京都内なら、だいたい1本100円から200円で売られているから、100
 円だと安いと思うし、250円だと高いから今日は買うのをやめておこうって思うんです。つまり100円から
 200円が大根の相場です。相場を基準に、相対的な値段で高いか安いかを判断しているのです。

D) つまりRTにとって、今回の業績であれば、過去の実績から判断して一時金の相場は4.4ヶ月近辺だと。

B) まあ、そんなところです。

D) 今回仮に4.0ヶ月なら、旧RTの相場から見てだいぶ低いのですね。それに、さっきも言ったように、今
 年は統合新会社の水準、つまり相場を決める春闘でもあるから、妥結月数が4.0ヶ月だとすれば、これま
 でのRTの4.4ヶ月という相場はご破算になって、全く意味が無くなってしまうのではないかと思います。

B) やっぱり大事な春闘じゃないですか。盛り上がっていないなんて言っている場合じゃないでしょう。

D) まあ、そうですが、少し待ってください。実は世間を広く見渡せば、一時金のもっと低い会社も沢山あるし、
 そもそも一時金を貰っていない労働者もいるのです。だから別の世間相場から見れば、4.0ヶ月でも貰い
 すぎという事にもなり得ます。

B) そういう意見は、私たち30代からは良く出ます。

D) 世間と比べるにしても、やっぱり相対的な判断なんです。何かと比較して高いか低いかを論じていると
 いう点では、有る意味さっきの4.4ヶ月と同種の意見だと思います。私としては、相対的ではなくて、絶対
 的な指標がある方が強いと思うのです。

A) それはどんな指標ですか。

D) 電機連合のデータでは、40代以上になると、貯金を取り崩している家庭が貯金をしている家庭を上回
 るのです。私たちの取った春闘アンケートでも、苦しいと答えた人の割合が3/4を占めていましたよね。
 これを解決するためには、賃金を上げるしかないじゃないですか。だから賃上げは要求して良いと思います。
 私たちのアンケートに従えば、3万円以上のベースアップをしろとの要求になります。

C) そうですね。そういう要求を聞いて無茶だと思うのは当然だと思います。だけど要求は要求で良いでは
 ないでしょうか。日本人は苦手かも知れないけど、海外で買い物をすると、売り手はものすごくふっかけて
 来たりするのは良くあることだと言います。だいたい相場の3倍くらいの値段をふっかけてきて、そこから交
 渉が始まって、結局適当なところで折り合います。賃金の交渉も、もっとふっかけて良いのではないかと思
 います。

D) そうでしょう。必要だから要求する、欲しいから求める、これがまずは基本のはずなんです。妥結額は、
 要求と比べて相当に下がるかも知れないし、そのギャップには不満を感じるかも知れないけど、大事なの
 は要求が私達の生活実態とか生活実感の中に確かな根拠を持つことなんです。今の春闘にはそれが無
 いのです。真の労働者の要求に根ざさないし、だから弱いし、これではストも打てないだろうと私は思うの
 です。