ルネサス懇、「2011春闘」を語り合う。

− 賃金水準の年齢間格差 −

【賃金水準の年齢間格差】

B) 賃金水準について、言っておきたいことがあります。資料を見てください。お配りした資料は、電機連合
 の中央委員会議案書ダイジェストに載っていたグラフを元にしています。このグラフは2001年、2005年、
 2009年の各年における年齢と賃金の関係をグラフ化したものです。



             グラフ1 : 電機連合賃金実態調査の中位値の推移
          



A) 電機連合は、このグラフから賃金水準はおおむね維持していると主張していますね。

B) 確かに、ぱっと見れば、各年度であまり変わっていないようにも見えます。しかし、次のグラフを見てく
 ださい。



             グラフ2 : 電機連合賃金実態調査の中位値の推移−年代比較
          



B) これは、2009年時点で35歳の人の賃金カーブと40歳の人のものとの比較です。2009年で35歳の
 人は、2005年では31歳、2001年で27歳ですから、各年齢の点を青い曲線で結びました。同様に200
 9年で40歳の人の賃金を、赤い曲線で結びました。それぞれの曲線を比較すると、かなり差があるのが見
 て取れると思います。

A) 確かにかなり差がありますね。このグラフには縦軸のスケールが無いので、具体的にいくらなのか判り
 ませんが、35歳の平均賃金と、40歳の平均賃金では、3〜5万円くらいの開きがありそうですね。

B) そうなんです。35歳の方が、かなり低いですよね。月収で3〜5万円も差がつくということは、年間なら
 一時金も含めて60〜70万円くらい差がついていると思うのです。30代の10年間を通算すると、600〜
 700万円くらい少ないです。2009年で40歳と言えば、大学卒なら1991年の入社です。35歳なら1996
 年の入社です。

D) 1991年は、バブル入社の後期にあたります。1996年入社は「ロスジェネ世代」ですね。

B) 私達ロスジェネ世代は、単に就職が狭き門だっただけでなく、賃金でも恵まれてはいないらしいと知って、
 少しショックを受けました。

C) 変ですね。いくら何でも差があり過ぎです。少なくとも90年代からこの方、ベアがゼロの年はありました
 が、マイナスになったことは一度もありません。なのに賃金が減っているとは、どういう事でしょうか。

A) 考えられる可能性は2つありそうです。ひとつは賃金体系の変更の影響でしょう。90年代の後半に、電
 機各社は成果主義賃金制度を導入しましたね。あの時の賃金体系の見直しによる影響を受けた可能性が
 あります。制度移行の整理の仕方によって、そのあおりを食ったとも考えられますが、具体的に制度の何が
 作用したのかは、各社の制度内容と運用実態を調査しないとわからないでしょう。
  もうひとつは、96年頃の世代に大手の正社員が少ないという可能性です。この電機連合のグラフは、大
 手も中小も一緒にしてありますから、大手の割合が比較的少ない年代は、相対的に賃金が下がります。

D) 真の原因については、是非とも電機連合に調査していただきたいと思いますね。

A) ところで、これまでの議論では出ませんでしたが、賃金体系の維持と言うのは、そもそも労組の掲げる
 要求に値するものなのでしょうか。賃金体系の変更は、重要な労働条件の変更ですし、もし変更によって
 仮に労働者の賃金水準が下がるとなれば、会社側は一方的に変更できないのです。要するに要求せず
 とも、一方的に改変させられる心配は無いのですから、あえて維持を要求するのはおかしいでしょう。

C) 労働者側から経営者に対して処遇の改善を申し入れるのが春闘ですから、単なる体系維持では本来
 の意味で要求にはなっていないと言うことでしょうか。