ルネサス懇、「100日プロジェクト」を語り合う。

− BU別施策について −

− 情報展開が不十分 −

A) 各BUの施策についてはどのように考えたら良いでしょうか。皆さんのご意見をお願いします。

B) 私はあちこちの知り合いに話を聞こうとしたのですけど、誰に聞いても100日プロジェクトの結果自分
  たちの仕事がどう仕分けられたのか、自分たちの事業部がどういう方針を出したのか、よく分からない
  と言っていました。課長クラスであれば知っているのかも知れませんが、今のところ部下まできちんと説
  明が降りていないようです。だから正直よくわかりません。

D) 実は私もよく分からなくて、もどかしい思いです。100日プロジェクトの情報が無いということもあります
  が、そもそもこの会社は、部門間の情報交換が乏しいと感じます。おそらくMCUの人はSoCが何をやっ
  ているのか良く知らないし、SoCの人にとってA&Pは未知の世界だと思います。もっと言えば、A&Pの
  中もごちゃごちゃしていて、よく分からない。だから調べようと思って月報や週報などを読ませて貰おうと
  思えば、カードがかかっていて他部門からは見れなかったりする。ひどい部門になると、HPに掲載され
  ている業務分担も、他部門からは見れません。なんでそこまでガードをかけるのかと思います。

C) 私はBUの人間ではないので、やはり情報に通じていません。という事は、このメンバーで論じるには、
  会社が発表している内容から推理するしかありませんね。ざっと見た印象では、事業仕分けと言う割に
  は、何を仕分けたのか、特に何を不採算部門と見なして止める方針にしたのかがわかりませんね。この
  あたりが政府のやった事業仕分けと根本的に違うところのように感じました。


− SoCの施策 −

A) では順番にいきましょう。最初にSoCについてはどうでしょうか。7月にノキアの事業買収の発表があ
  りましたね。これによって次世代通信技術であるLTE(Long Term Evolution)の技術を社内に取り
  込むことが出来ました。これをどう見ますか。

B) よく分かりませんが、思い切った決断だとは思いました。私のイメージでは、携帯系というのは数が出
  る代わりにすごく買い叩かれて、原価率が悪くて儲けが出ないという印象です。だからコアになる技術を
  取って、しかもチップサイズやセットがカバーする機能範囲の広さで勝負できる製品を造って行きましょう
  ということであれば、方向としては正しいのではないかと。問題はどのような製品に載せられるかではな
  いでしょうか。LTEの通信速度が活きる領域、そして数の出る製品の形態とは何でしょう。iPADなどより
  も、もっと人々が欲しいと思うような製品が、いま世界のどこかで検討されているかも知れません。マーケ
  ッティングが非常に重要になりそうです。

C) 私は少し感慨深いと言うか、残念という思いも抱きました。なぜかと言えば、NECは元来通信の会社
  ですからね。かつてNECは、コンピュータも通信も扱うデータがデジタルであるが故に、この2つは統合
  された技術になる事を見抜いて、C&C(Computer & Communication)を早くから提唱しました。
  半導体にはその中核を担う部品という意味がありました。
   それから今はやりのクラウドコンピュータなどは、通信のスピードが上がったからこそ、データはホスト
  側で持つのが合理的だと言う発想から来ているのでしょう。つまり今がまさにC&Cの時代になってきて
  いるわけです。それなのに、我々半導体部門はNECから切り離され、新会社ではそのコア技術を他社
  から買収して得ようとしている。今さらですけど、もう少し違った道は無かったのだろうかと思います。

D) 取り込んだノキアとのコラボレーションはどうなるのでしょうか。あちらは世界数カ国に事業所があるらし
  いですが、それらとの交流はあるのでしょうか。またLTEの回路技術や、それを駆動するソフトウェアの
  技術は、社内に展開されていくのでしょうか。それともルネサスの中に「小ノキア」みたいな集団が何時
  までも残って、他の部門からはブラックボックスのような存在であり続けるのでしょうか。人的交流や技
  術的交流を積極的に行ってこそ、買収した意味も増すのではないかと。

A) SoCに関して、LTE以外についてはどうですか。

D) ずっと赤字で問題視されていたマルチメディア系製品が、結局生き残っているらしいですね。私は良い
  とも悪いとも言いませんが、陰でものすごく悪口を言われています。「こんな赤字製品を仕分けられなく
  て、何の事業仕分けか」と言っている人が何人もいました。継続してやるならやるで説明は必要でしょう。

B) USBをマルチメディアインフラと呼ぶのは解りますが、ゲームってインフラなのでしたっけ。各社が出し
  ているゲーム機の仕様って共通じゃないですよね。たぶん安定した収益を確保できるようなイメージを出
  すためにインフラと言う言葉を使いたいのだと思いますけど、ちょっとこれは。ゲームって当たると大きい
  けど、バクチみたいなところがありますよね。

C) バクチですね。中にはバクチが混じっていても悪くはないでしょう。バクチ頼みになってしまうと、たとえ
  当たりを引いても、その後退期に入れば、一昨年の鶴岡300mmラインのように、稼働率がぐっと下がっ
  てしまったりしますけどね。ところで、ちょっと意外だったのは、スマートグリッドなどの環境対応の存在感
  が薄くなったことです。NECエレは昨年、この分野に注力していくのだと言っていました。なぜ積極的な
  アピールをしないのか、これも理由を知りたいですね。


− MCUの施策 −

A) MCUについてはどうでしょうか。

B) 全体的な方針としては堅実だなと言う感じです。ひとことで言えば、両社の開発環境を統合して、シン
  プルにしつつ両社の財産を生かすということでしょう。至極まっとうな方針だと思います。まっさらなところ
  から新規に事業を始めるのではなく、お互い従来製品とか開発中の案件とかも抱えていますから、統合
  って口で言うほど簡単では無いと思います。だからあとは如何にして推進するかでしょう。
   それから外注のことが何も書かれていませんが、MCU系は外注先を相当切っていますよ。これからも
  更に切ろうとしていると聞きます。それで日立超LとかRMSとかには、かなりしわ寄せが行っているみた
  いです。夏休みも返上して仕事してたりとか。

C) MCUは中国戦略にも重点的に取り組むようですね。設計も販売も、現地の力を活用していく方針のよ
  うです。その内にルネサスエレクトロニクス・チャイナが独立するかも知れませんね。でも中国市場はみ
  んな狙っていますから、単に闇雲に投入製品数を増やしますでは不十分な気がします。だからA&Pは
  MCUとのキットソリューションを強化しますと言っていますけど、MCUの現地の設計と、うまくコラボレー
  ションして行けるでしょうか。

D) 設計も販売も中国なら、当然生産も中国国内でということになりますね。MCU系は中国や東南アジアの
  工場で流していますから、この点は特に問題無さそうです。一昔前までは、日本人出向者が現地の社員
  を指導したり、日本側からの窓口になったりしていましたが、最近は現地のマネージャークラスや技術者
  が、だいぶ力をつけてきました。あと10年くらいすれば、現地社員の力だけで、ほぼ運営可能になるの
  かも知れません。


− A&Pの施策 −

A) 最後にA&Pについてはいかがでしょうか。

C) マイコンとのキット販売などを伸ばして行くとなっています。マイコンとのコラボと言うのは、以前から言わ
  れていたと思うのですが。それと旧ルネサスと旧NECエレの製品が合わさってラインナップが充実したと
  いうことらしいけど、単に製品の間口が広がっただけでは、シェアの拡大にはつながらないのではと言う気
  がします。

B) 注力分野を見ると、IGBTを中心に据えて省エネ関係を狙っているのかなあ。新興国市場の開拓に力
  を入れるのか、省エネ分野に力を入れるのか、いまいちわかりません。新興国を狙うのであれば、MCU
  と同様にコスト競争力が必要なはずです。単価の安いA&P製品は苦しいと思うけど、何か手はあるの
  でしょうか。

D) 私は表示ドライバの話が何も書かれていないのが気になります。NECエレ時代には、表示デバイスを
  扱う事業部を分社化すると言う話がありました。今から2年前のことです。当時年間で約800億円の売
  上のあった表示デバイス事業を分社し、エルピーダメモリとの合弁会社を作ろうとしていました。この話
  は結局、2008年下期の急激な景気後退によってどこかに行ってしまいました。ルネサスと統合して、
  小型は旧ルネサス、大型は旧NECエレと言う棲み分けが出来たと聞きました。それなら何か戦略があっ
  ても良さそうなものです。

A) ご意見ありがとうございました。各BUの施策についても、いずれもう少し具体的に明らかになると思い
  ますから、今日はこの辺にしておきましょう。