番外 野球談議(1)
昭和のおじさんには野球の話が好きな人が多く、私も一応その仲間です。そこで番外第3回目は野球談議といたします。
今年のセ・リーグはヤクルトが好調で、交流戦を経てやや失速気味ではあるものの、現時点でも巨人、阪神と首位争いをしています。シーズン前の下馬評では、今年の最下位はヤクルトで決まりと目されていました。無理もありません。昨年は最下位に沈み、しかも大黒柱の村上選手が抜け、小川投手、山田選手、中村選手、オスナ選手、サンタナ選手などの主力は少しずつ衰えが見えていて、昨年のドラフトもぱっとせず、キハダ投手以外は目立った補強もなかったのですから、かなり悲惨なシーズンになってもおかしくないという見方さえありました。
池山新監督が、よくチームを立て直したということなのでしょう。投手の防御率が大幅に改善したのが大きいと思います。若い選手が多いだけに、「バントはしない」等のシンプルな指示も功を奏しているのかも知れません。しかし気になるのが完封負けの多さです。強いチームは基本的に完封負けが少ないので、この点を改善できないと、後半戦で失速を招く要素になるかも知れません。
パ・リーグは西武が強いですね。一昨年は球団初の90敗を記録して最下位に沈みました。自慢だった山賊打線は、中村選手がピークを過ぎ、秋山選手はメジャーを経てカープに、浅村選手と森選手はそれぞれFAで楽天とオリックスに移り、山川選手はソフトバンクへ。外崎選手も腰痛のため2軍にいるなど、当時の中心選手がほぼいなくなりました。今年も前評判は高いとは言えなかったのに、こちらも現在は首位。交流戦も優勝しました。
今年は特に顕著ですが、ちょっとしたことでチームの状態がガラっと変わるので、下馬評はあまりアテになりませんね。
しかし強豪ひしめくパ・リーグにあって、オリックスは今年も手堅く3位につけています。6月19日の首位西武への逆転勝ちは、私もテレビで観ていました。オリックスは、5月までは得失点差で失点の方が多かったにも関わらず、首位につけていました。守備が固く僅差の試合を勝っているのが強さの理由かと思います。このチームは2021年から2023年まで3連覇し、投打の柱の山本由伸投手と吉田選手が抜けたにも関わらず、まだAクラスにいるところは大したものだと思います。この2020年代ではソフトバンクと双璧を成していると思っています。
そのオリックスの本拠地の京セラドーム(大阪ドーム)は、高い外野フェンスが特徴です。外野手がジャンプしても届かないような高いフェンスは、横浜スタジアムがはしりだったように思います。その後、東京ドーム、バンテリンドーム(名古屋ドーム)、みずほPayPayドーム(福岡ドーム)、札幌ドームといった各地のドーム球場でも採用されていきました。しかし横浜スタジアムと東京ドームは外野がやや狭く、外野の広いバンテリンドームとみずほPayPayドームにはホームランテラスができ、北海道日本ハムはエスコンフィールドに移転しましたので、外野面積が広くかつフェンスの高い球場は京セラドームだけとなりました。いまや12球団の本拠地でもっともホームランの出にくい球場です。
しかし、この京セラドームにも、ホームランテラスを造れという声があります。テラスなど無くても強いのだから必要ないだろうと私などは思うのですが。とはいえ、ホームランテラスにも効用があります。外野などで観戦された経験のある方はご存知と思いますが、フェンスが高いほど死角が増えて、フェンス際のプレーが見えなくなるのです。打球を捕ったか捕らないか見えないけれど、拍手と歓声が上がってわかるというのもちょっともどかしい。ホームランテラスはそんな死角を減らすのに役に立ちます。
とはいえ、他球団がもうかなり前から採用しているものを一番遅れて取り入れるというのも、進取の気鋭の関西人としてシャクではないだろうかと思ってしまいます。どうせ造るのなら、他球団がまだ取り入れていない仕様のものにしてはと思います。
そこで提案したいのが、傾斜型のフェンスの採用です。外野フェンスを前後に分けるのは既存のホームランテラスと同じですが、前の低いフェンスと後ろの高いフェンスの間には斜めの屋根を架すようにする点が異なります。以下に模式図を示します。

なぜ斜めにするのかと言えば、ここにライナー性の打球が当たった場合には、そのまま後方に跳ね返っていくようにしたいからです。(現在のフェンスでは、完璧な当たりの強烈な打球がフェンス上部に当たって跳ね返りシングルヒットになってしまうことがあるので、それはちょっともったいなく、何とかしたい。)跳ね返ったボールが後方のフェンスを越えればホームランとします。逆に山なりのフライが当たれば、クッションボールは前面に跳ね返ってくるので、そのままインプレーとなります。高く跳ね上がった打球が落ちてくるまで時間がかかるので、三塁打やランニングホームランが増える可能性があります。これで中距離打者や足の速い選手の活躍機会も増えます。かつ、はね方も難しくなるので、外野手の守備力も問われるようになります。渡部遼人選手のような守備職人の活躍の場面も増えると思います。
野球というスポーツにおいて、もっともバランスを欠いている要素がホームランではないかと私個人は思っています。三塁打よりも四塁打であるホームランの方が圧倒的に出やすいというのはどうなんだろうかと思うのです。
プロスポーツには競技という側面と、興行という側面があります。興行という面からは、確かにホームランは野球の華なのでしょうけれど、それがかえって二塁打や三塁打の価値を減じてしまっているように思えます。イチローのような外野手の守備力や足の速さ、肩の強さも、もっと価値が認められて良いだろうと思います。競技としては、多様な選手が活躍できる機会が増えた方が良いように思います。
今後AIがますます発達してくれば、プレーの解析技術もさらに進歩すると考えられます。おそらくですが、投手の癖や配球パターンの解析、マシンによる球種の再現、打者の配球の読み方の癖やバッティングのパターンと打球方向、弱点の解明などがどんどん進められていくのではないかと思います。つまり投手と打者の対決という部分が、AIによって研ぎ澄まされて、全体の中でより比重が増していくのではないかと想像しています。
もしそうなら、AIによって事前に解析しきれない部分、つまり選手の運動神経や身体能力、とっさの判断などが生きる不確定な要素を、グラウンド内にどれだけ残せるかが、競技としての深みのある面白さを確保していく鍵になるような気がします。傾斜型フェンスというのは、そのための提案のひとつです。
最近はデータをもとに、バント、盗塁、エンドランなどは意味がないとの言説がまことしやかに語られます。そうなってしまうのも、ホームランが出やすいことに原因の一端があると思われます。(一端どころか主原因かも知れない。)私個人は、野球は最高レベルに難しいスポーツだと思うし、それこそが野球の面白さの源泉ではないのかと思っています。多彩な攻守のパターンや小技が生きる余地を増やす方が、より複雑さや難しさを保てるのではないかと思います。だからホームランがこれ以上増えないように外野フェンスは高いままでいいし、さもなければ数年前までの「飛ばないボール」に戻すこともセットで考えてほしいと思います。
2026年6月21日