番外 コロナ禍における食事
この連載も、めでたく(?)10回目を終えました。しかし、「随筆・エッセイとして、少し気楽に書き連ねていく」と言っておきながら、実際に読み直してみると、ちょっとお堅い内容になりすぎているように感じました。正直、軽いジョークを混ぜながら、もっと肩肘の力を抜いたものを書きたいのですが、扱っているテーマの関係上、まだしばらくはお堅い話が続きそうです。でもそれでは私も煮詰まってしまいそうなので、時々「番外」として、本テーマ「資本の論理に負けない」とは直接関係ない話題で気楽に流す場を作ろうと思い立ちました。今回はその初回で、扱うのはコロナ禍で在宅勤務をしていた平日の食事についてです。
2020年の2月に、コロナの蔓延からステイ・ホームが推奨されて、ルネサスでは在宅勤務が基本となる働き方を余儀なくされる状況となりました。この年の5月連休は、職場によっては普段の2倍の長さになり、しかもどこにも出かけられないので、「実にヒマだった」という声を多く聞きました。ところが人によってはヒマどころか、子供の保育園や学校が休校になってしまってメチャクチャ大変だったという話も聞きました。特に小学校からは、4月からの新学期の授業ができない代わりとして大量の宿題が配布されたと言います。しかしそんなものを新学年の授業を受けていない子供が自力で解けるはずもないので、親が先生になって全教科を子供に教えなくてはならず、仕事のある平日だけでは足りず、土日も5月連休も全部つぶれてしまったと言います。(複数子供がいる家庭はパニックだったらしい。)
この年、外食が減った分、各家庭では在宅での食事の機会が増えました。我が家は、週末に一週間分の食料品を買い込んで、平日はそれらを使って3食作るという生活パターンが確立しました。食材や作ったものをストックしておくための冷蔵庫も、600リットル超の大型のものに買い替えました。
ステイホームが始まった頃、スーパーから小麦を使った商品が無くなったのを思い出します。家庭での日々の消費が増えただけでなく、保存がきくためにストックとして蓄えるための需要もあって、生産が追い付かなくなり、パスタや乾麺、カップ麺や袋麺、小麦粉、ケーキミックスやお好み焼き粉まで、スーパーの棚からごっそり無くなりました。(そういえば、なぜか特定の銘柄の袋麺だけが売れ残っていた。)
それから売り場には激辛の製品も目立つようになりました。ステイホームから来るストレス解消のために、ちょっとした激辛ブームが起きていたのではないかと想像します。平日に自宅で昼食と言っても、普段料理をしない人も多いでしょうから、そのような方のためにインスタント食品が多数出ていました。グリコのカレー「LEE」は、激辛商品のさきがけとして1986年に発売されたものですが、コロナ以前は20倍の辛さのものさえ、特定の店でしか見かけなかったように思います。それが30倍さえ普通のスーパーの棚に並ぶようになりました。他にも蒙古タンメン中本などのコンビニ限定の激辛商品とか、宮崎辛麺の50辛をはじめとする各種の激辛カップ麺とか、爆裂辛麺の袋麺とかが、次々に出てきました。
そんな中でも、一番辛いと思ったのがペヤングのカップ焼きそばです。パッケージに閻魔大王の顔がイラストされたもので、もう本当に地獄のように辛くて、ひと口ふくんだだけで口の中が痛いし、飲み込めば喉もと過ぎても熱さを感じるほどです。仮に胃の中にピロリ菌がいたとしたも、これを食べたら全部死んでしまうのではないかと思えるほどの強烈な辛さです。実際、後日私が胃カメラの検査をしたところ、過去にピロリ菌が居た痕跡はあるが、現在はいないと言われました。ひょっとしてペヤングのせいではないかと疑いました。医者は何かの抗生物質を服用した結果ではないかと言っていましたが。
コロナ以前、私は袋麺もカップ麺もほとんど食べなかったのですが、在宅勤務になってからは平日の昼に麺類を食べることが増えました。袋麺で済ませてしまうこともありましたが、生ラーメンをゆでで、自分でスープを作って食べることもありました。創味シャンタンデラックスをベースにしたスープに鷹の爪とニンニクをたっぷり入れて激辛にして・・・、名付けて「レッドドラゴン・ファイヤーブレス・ラーメン」です。これ以外も、唐辛子たっぷりのうどんとか、ペペロンチーノの激辛版(スパゲティ・スパルタンと名付けました)なども作って食べました。
●レッドドラゴン・ファイヤーブレス・ラーメンの作り方:
①厚底のフライパン等で豚ひき肉(30~50グラム)と刻んだニンニク(1かけら)をごま油で炒める。②肉に火が通ったら、鷹の爪(2~3本、輪切りとうがらしでも可)、酒とみりん各大さじ1杯を加える。③水1カップ半を加え、創味シャンタンデラックス、白だし、こしょうで味付けをする。(量は好みで調整)④刻んだニラ(数本)ともやし(適量)を加える。⑤生めんをゆで、ゆで上がったら④のスープを加える。これで「台湾ラーメン」の完成。⑥ここへおろしニンニクと激辛ラー油をどぼどぼ加えると、台湾ラーメンが「レッドドラゴン・ファイヤーブレス・ラーメン」に進化します。(同居家族のいる方は、口臭に注意)

Copilotさんが提案してくださった「激辛ドラゴン」のイラスト

●スパゲティ・スパルタンの作り方:
①にんにく数かけらをスライスする。②フライパンへ底がひたるくらいのオリーブオイルを注ぎ、にんにくを加えて弱火で加熱する。③にんにくに火が通ったら、ベーコン20グラム(約1枚)を1センチ幅くらに刻んだものを投入する。(もうもうと立ち上るにんにくの蒸気でむせるのが好きな方は、ここでおろしにんにくを追加投入し、少し強火にする。)④火を止めて、半分に折って種を取り出した鷹の爪数本を加える。⑤ゆであがったスパゲティを加えて、塩(小さじ半分程度)で味を付け、さっと絡める。⑥皿に盛りつけてペペロンチーノ(にんにくと唐辛子増し増し)の完成。⑦ここへタバスコ(またはデス・ソース)をがんがん振りかけることで、スパゲティ・スパルタンへと鍛え上げることができます。

ところで、ここ数年の傾向として、シリアル類の売上が伸びているとのデータがあります。人々の健康志向によってグラノーラなどの消費が増えているとも言われますが、私には在宅勤務の影響もあるような気がしています。これらの穀物は、ぶっちゃけ食べるとおならが出ます。だから、通勤していた頃は平日の朝御飯に食べるのを躊躇していた方が少なからずいるのではないかと思っています。在宅勤務になって、周りに気兼ねなくおならが出来るようになったおかげで、遠慮なく食べられるようになったと言うケースが結構あったのではないかと想像しています。うっかりBTOの日の朝に食べてしまったら、大変なことになるかも。

BTOで来年1月からは週3日の出社となります。武蔵事業所の食堂は、以前は日京クリエイトという日立系の会社が運営していましたが、運営会社が代わってからあまり評判が良くないとも言います。利用者が大幅に増える訳ですから、これを機会に改善されると良いですね。
ルネサス懇は、ナンセンスでパープリンでしょうもない話の好きな方を歓迎します。
2025年10月31日