前回に引き続き、基本給レンジと昇降給についてです。今回は、ルネサスに来年入社する学卒の新入社員を想定して、基本給がこれから将来、どのように変わっていくかをシミュレーションしてみたいと思います。
仮に、ルネサスに新人50名が入社したとします。そして、この50名の中で、「1」から「5」までの成績が、下表の割合で振られたと仮定します。
表1.評価と分布割合 (ただし、B等級は、1と2、4と5の合計が、それぞれ30%)
ここでは、新入社員の中で、上位から20番目くらいの人(中位より少し上の人)、25番目くらいの人(ちょうど中位の人)、30番目くらいの人(中位より少し下の人)、40番目くらいの人の4つのパターンを比較してみたいと思います。それぞれの順位に対応する成績のイメージは、下表のようになります。
さて、上記の仮定のもと、学卒の初任給20万9000円、総合職・B等級で出発したとき、基本給は年齢とともに、どのように変わっていくでしょうか。(図1)
上図は、ルネサスグループの8割以上の社員が子会社であることに鑑み、20位(青色)の推移を、子会社の主任・技師クラスであるC等級に留まる(Dへの昇級はしない)ものと仮定している。
上記はあくまで、極端にストレートな仮定にもとづくシミュレーションです。現実には、若い社員に積極的に「4」や「5」の評価が付けられるとも想定されるため、オレンジ色(25位)の曲線よりも上になる人が多数派かも知れません。しかし、その場合、相対評価そのものが年齢間で不平等に行われているという別の問題が生じてきます。
また、下位2割くらいの人が、年齢別最低賃金に張り付いてしまうと言うのは、相当に問題であると考えます。では、なぜこのような事になってしまうのでしょうか。
原因のひとつが、新しい昇給テーブルにあることは明らかです。
昇給率が決して高くないだけでなく、従来よりはるかに高い割合で昇給ゼロや、降給になるようなテーブルに書き換えてしまった事が大きく影響しています。
しかし、それだけではありません。そもそも、現在の初任給20万9000円(学卒)は、従来制度から変わっていません。つまり、ある程度年功的に賃金が上がっていくことを前提にした従来制度の水準であることに注意が必要です。これほど給料を上がらなくした新制度にしては、初任給が低すぎるのだとも言えると思います。
実は、ルネサスの旧制度には、30歳以下の若手社員の給料には、3500円の昇給加算がありました。(ルネサステクノロジ時代には4000円。)これは、若年層は経験とともに業務の質が向上していく傾向があり、年功的要素を反映するのが妥当であるとの思想によるものです。この昇給加算は、新制度で廃止されましたが、むしろもっと金額を増やす形で継続するという方法もあったと思います。
以上見てきたように、新制度には大きな欠陥があり、これからルネサスに入社する若者にとって、実に夢の無いものとなっています。早急に改善をはかるべきでしょう。
(この主張に対するご意見・ご感想は、下記のフォームか、
または電子メール(renesaskon@gmail.com)にてお願いいします。)
|