−新人事制度を問うA−

基本給レンジと昇降給@

 
  2014年10月より適用されたルネサスの「新人事制度」を問います。
  第2回目は、新旧制度における昇給の比較です。



 ルネサスの新人事制度では、主任以下の「基本給レンジ」を、A1〜A3、B,C,Dの6段階に分けました。等級ごとに賃金の幅を設定する基本給レンジと言う概念は、ルネサスでは2012年の人事制度一元化の時に導入されたものです。(それ以前は、区分E(NEC系)のみで運用されていました。)
 今回は、新旧制度における基本給レンジの違いを、昇降給の仕組みに注目して比較してみます。

 まず、旧制度のおさらいです。
 旧制度では、基本給レンジの中が、TゾーンとUゾーンの2つに分かれていました。また、ゾーンの境目をミドルポイントと呼んでいました。(図1)




 TゾーンとUゾーンの違いは昇給額にありました。Tゾーンで昇給を繰り返してミドルポイントを超えUゾーンに達すると、昇給額が1/10程度にまで減ってしまう制度構成になっていましたので、ミドルポイントが実際には(その名称に反して)基本給の上限を決めてしまう構造でした。(図2)




 上図のように、旧制度では、毎年成績上位であれば、より早くミドルポイントに達する一方、成績下位であっても昇給自体はプラス(最低評価のときに昇給0)だったため、時間はかかってもやがてはミドルポイントに達する可能性のある制度となっていました。
 以上から、旧制度では、制度運用が年月を経るにしたがって、同一レンジ内における分布が下図(図3)のように移行する傾向があったと推定できます。




 では次に、新制度では、どこが変わったのでしょうか。
 まず、新制度では、ゾーンを1から4までの四分割にしました。(図4)




 ゾーン間の違いは、ここでも昇給額です。新制度では、ゾーンと成績評価によって、昇給率を決めています。(旧制度では、昇給額を定義していました。)現在の昇給テーブルは以下の通りです。




 上の表のとおり、ゾーンが下(基本給が低い)ほど、また、評価が高いほど、昇給率は高くなっていますが、昇給率は最高でも4%にとどまっており、また、成績が1〜2(全体の3割)は、昇級どころか、賃金が前年よりも下がる制度となっています。

 最後に、新旧制度における昇給曲線をシミュレーションしてみます。(図5)



 上図で、旧制度においては、28歳でS2に、33歳でS1に昇格するものと仮定した。一方、新制度では、成績最高(常に「5」)の場合に26歳でCに、30歳でDに上がるものと仮定し、成績優良(常に「4」)の場合には、27歳でC、32歳でDに上がるものと仮定した。(ただしルネサスグループの8割以上の社員は子会社に属しており、子会社の主任・技師クラスはCのレンジが適用されるため、上記のシミュレーションよりも低いカーブになる。)


 ここでは、大卒の総合職をモデルに選びました。仮に、新人からずっと標準の成績である「3」を取り続けたと仮定すると、新旧の制度で著しい差が出ることが分かります。新制度は、常に標準よりもいい成績を取り続けない限り、まともに賃金が上がっていかない制度であると言う事が出来そうです。
 ルネサスで標準的な仕事をしている技術開発職の方などの生産性が、入社時からほとんど変わらないなどという事はあり得ないのではないかと思います。賃金を生産性だけで決めるべきとは思いませんが、新制度の昇給曲線は、私たちの実感と相当に乖離していると思います。大幅な見直しは必須と考えます。


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