−新人事制度を問うC−

KPIで利益誘導?

 
  2014年10月より適用されたルネサスの「新人事制度」を問います。
  第4回目は、KPIの一時金への反映についてです。


 ルネサスでは、一時金(賞与)の額を決定する過程において、KPIによる部門評価が反映される計画です。KPIとは、Key Performance Indicator( = 重要業績評価指標)の略で、組織の目標を達成するため、その達成状況を定期的に観測することで、組織のパフォーマンス動向を把握することを目的とした指標です。部門評価の反映は、管理職に対しては今年12月から、組合員に対しては来年6月からと言われています。

 しかし、現時点において、不自然と思える要素がいくつか見受けられることに気づきました。ここでは3つほど挙げたいと思います。

@KPIに全社の業績指標が含まれている
 KPIには、全社の業績を上げていくために、定量的な評価のできる効果的な指標を用いるのが通常と言われます。GP率や営業利益率などは、KPIと言うよりも業績指標そのものであって、むしろKPIとは、これらの業績指標を上げていくために、もう少し具体的にブレークダウンされた指標であるのが適当と思います。ルネサスの場合には、部門ごとの指標こそが、本来の意味のKPIであると言えるのではないでしょうか。

A部門間の比較に全社業績が含まれている
 ルネサス本社の5つの部門が、各KPIの達成度を得点化し、比較されます。そのときの得点の計算式に、なぜか全社業績が含まれています。会社提案では、現状次のようになっています。

  (部門の得点)=(全社業績×30%)+(部門業績×40%)+(部門指標×30%)

 全社業績は、5部門すべての計算式に同じ割合(30%)で含まれるため、相対評価をするための計算式に含めても得点に差がつきません。この項目は一体何のために入っているのでしょうか。
 そもそも、全社の業績指標は、一時金の総原資を決める元になっているはずですから、ここでまた持ち出す意味もよくわかりません。

B企画本部の部門KPIが無い
 現時点では、企画本部だけ部門のKPIがありません。全社の業績を上げていくうえで、企画本部には具体的な行動の指標が何もないという事でしょうか。


 以上、不自然と思える要素を3点ほど挙げました。

 実は、上記の3点が合わさった結果として、奇妙なことが起きています。と言うのも、Bにおいて、企画本部の部門KPIが無いために、Aにおける計算式は、企画本部のみ全社業績×100%として計算されているようです。その結果として、8月の中間報告の時点では、企画本部が5つの部門中で最高得点となっています。

 このまま行くと、企画本部の年末一時金は、全社標準の1.1倍になる見込みです。こうした事態は、@〜Bの3つの不自然な要素のどれが欠けても起きません。逆に言えば、人事総務が自らの所属する企画本部の一時金を最大化するために、KPIを利用したと言う見方もできてしまいます。

 部門の利益誘導の手段としてKPIを使うなど、とんでもないことです。そのような疑いを持たれる時点で、運用の仕方に失敗があると言わざるを得ません。これについては、柴田CFO自らの責任で改めるべきと考えます。


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